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陰翳礼讃

谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を読んだ。

実は今回が初めてではない。
大学生のころ、設計か何かの講義のとき先生がおすすめしていたので、買って一度読んだことがある。

そのときの感想としてははっきりとは覚えていないが、日本贔屓の西洋批判が鼻につく文章だなと思ったことは記憶は残っている。

まあ今回読んでみてもそれは少し思ったが、内容的としては、陰が生活の中に深く関わっていた頃の日本の生活の面白みなどは確かに想像できた。
影の中で映えるように日本の昔の食器などがデザインされたのではないか という考えは結構面白かった。
昔は頭ごなしに敬遠してしまっていた感があったが、今回は内容を読み込んだうえで考えることができた気がする。
前読んだのはもう5、6年ほど前になるかと思うが、精神が多少大人になったのだなぁと感じた。

内容的には、西洋人は肉などの脂っこいものを食べるため(エネルギーを消費するため)老齢でも運動して、東洋人はカロリーが低いものを食べていてあまり運動をしない というような話は興味深かった。
ただこの本は1975年の本なので50年近くまえの本である。しかも筆者も過去に思いを馳せながら書いている感じがあるから相当に昔な話である。
昔は実際そうだったかもしれないが、今となっては食も西洋化しているから日本人にも結局適度な運動というものが不可欠なのだろう。

恋愛及び色情の章は西洋人と日本人で肌の表面の色だけでなく肌の奥の透け感が違うような話があって、着眼点が面白いなと思った。
あとは、恥じらいが大事だ みたいな分からんではないが筆者の趣味が書かれているような感じだった。
客ぎらいの章はほぼ筆者が客ぎらいになった言い訳が書かれていただけだった。

旅のいろいろの章は、寝台列車や海辺の田舎の静かな旅館など良さげだなと思ったが、今の時代にはどちらもほぼ絶滅しているんだろうなと、少し切ない気持ちで読んでいた。

最後の方の厠の話では薄暗くて風が抜けるような汲み取り式の厠の匂いがいい みたいなこと書いていたが、今の人間の感覚ではトイレは清潔無臭がいいと思ってしまう。
確かにトイレは落ち着くように少し離れた位置に設ける方が良い気はしたし、芳香剤で甘い香りが漂っているトイレも気持ち悪いが、なかなか昔ながらの価値観で逆に新鮮だった。

かなり久しぶりに読んだがなかなか面白く読めた。
少なくとも大学生の頃よりは内容を噛みしめることができた気がする。

日本的な良さに対して、全てを残すことはできないがたまに振り返りつつ生活の中に溶け合わせていきたい。

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