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ノンアル・ビアハンター #Bravus Brewing Co.

アメリカのノンアルコールビール専門ブルワリー、Bravus Brewing Co. の IPA と Oatmeal Stout を飲みました。単なるアルコール有の代替品でなく、新しい味覚世界になっていて、美味。という話。

先日 Twitter上で、クラフトビールの価格設定に関するツイートが拡散され、ビールファンの間で話題を呼んだ。曰く、一部の国産クラフトブルワリーのパイント一杯1,000円を超える価格設定は割高感があり、新しいクラフトビールファン層の開拓において障壁になるのではないか、そのような主旨だ。

個人的な意見だが、ファンの裾野を広げるのに大事なのは、価格が安いことではなく、価格相応に品質が良いものが広く出回ることだと思う。理想を言えば、安価で品質がよいもの、高価で品質が大変によいもの...というように。そして、それぞれのレンジの中で、消費者個々のニーズに合った多様性を楽しめること。コスパという言葉は好きではないが、ワインにおけるニューワールド、最近の人気回転寿司各社のような、アクセスしやすくその中で品質と多様性を楽しめる状況があることは、確かに重要と思う。

その中で、国産クラフトビールは悪い状況にあるだろうか? 酒店だけでなくデパ地下、そしてスーパーやコンビニでもそれなりに国産クラフトの複数スタイル(大手銘柄の僭称≒クラフティ、ではなくて。しかも、多くは一本500円以下だ)を見かける昨今。まだまだ発展の余地はあるだろうが、必ずしも今の状況が不足しているとは思わない。問題提起のためとはいえ、1,000円以上の銘柄を出す一部ブルワリーを論う方法は的はずれに思えた。

さて、経済も大事だが健康も大事だ

一概には言えないものの、一本1,000円のビールといえば低価格帯と比べて度数の高い銘柄が多い。一本1,000円のビールを買うことが財布にどれだけ痛いかは、その人の所得による相対的な話だ。しかし、一本10%前後のハイアルコール銘柄を一日に何本も飲むこと、それが身体にとって悪影響であることは、個人差はあるにせよ概ね科学的なファクトといえる。ハイアルコールのビールは、度数だけで言えば、しばしば槍玉に上がる大手飲料メーカのストロング系チューハイと大差ないか、それ以上なのだ。

厚労省のガイドラインによると、通常のアルコール代謝能を有する日本人にとって「節度ある適度な飲酒」量として設定されるのは、一日平均純アルコールで 20g 程度。これはアルコール摂取量と死亡率に関する疫学調査を基に算出された数値だ。お酒に含まれる純アルコール量は、[お酒の量(ml)] × [度数(%)/100] × 0.8 により算出される。つまり、5%のビールなら500ml、10%のビールなら250mlが一日の適正量といえる。

繰り返すように個人差はある。が、さすがに「適量」の数倍を日常的に摂取するのは、自身を使った中々危険な人体実験に思える。酒場での楽しい一夜は人生に欠かせないが、その代わり日頃の酒量は抑え、休肝日もきちんと作ったほうがいい。ほぼ、というか全面的に、自分に言い聞かせてます。

先程述べたストロング銘柄を発売する大手飲料メーカー各社が、一方でノンアル・低アルコール商品の開発に乗り出している昨今。国産クラフトブルワリーの活動にも、適正飲酒に関する意識と行動が求められる時代は、遠くないと思う。

さて、Bravus Brewing Company はアメリカ・南カリフォルニアにて、'15年に創始されたノンアルコールビール専門ブルワリーだ。同国最大のビールアワード Great American Beer Festival におけるノンアルコールビール部門での受賞歴もあり、近年注目を集める。

ともすれば飲み過ぎてしまう夜もある自分のようなビールファンにとって、適正飲酒を進める上で休肝日の設定は欠かせない。そんな日に、ノンアルコールビールは心強い御供だ。同社のホームページを見ると、IPA、アンバーエール、フルーツエール、そして濃色系など、広範なスタイルが揃っている。ノンアルコールビールを造るクラフトブルワリーも増えてきた近年、それでも、多種多様なスタイルをベースにした銘柄が楽しめるのは貴重だと思う。

今回はその中から、IPA と Oatmeal Stout をいただいた。

IPA

Abv. 0.5% 未満 "IPA".

IPA的な特長を形成するのは、Simcoe, Cascade, Columbus, Centennial の四種ホップが形成する風味。IPA系にお馴染みのシトラス感もあるが、それ以上にベジタブル感ともいうべき青々とした植物香が印象的だ。「トマトジュース」に例える評価も拝見したが、大変同感。心地よいレベルの酸味があり、後味はクリーン。

一方で、甘味は感じるが繊細なレベルで、ビタネスも大人しい。このあたりは一般的な IPA とは結構異なるところだ。Bravus社のホームページにはアルコール有のビールと違わないノンアルコールビールを造る旨の記載もある。しかし実際にのところ、このノンアルコール IPA は、単なるアルコール有に似通った代替品ではない、独自の価値を持ったドリンクになっていると感じた。IPA のノンアルコール版ではなく、ノンアルコールビール世界の IPA とでも言うような。そんな印象を持った。

Abv. 0.5% 未満

アロマ :★★★☆☆
→ 瓜、シトラス、松
フレーバー :★★★★☆
→ 瓜、シトラス、小松菜、トマト
テイスト
→ 苦味 :★★☆☆☆
→ 甘味 :★★☆☆☆
→ 他 :酸味
炭酸 :★★☆☆☆
ボディ :★★☆☆☆

Oatmeal Stout

こちらも Abv.0.5% 未満のオートミール・スタウト

アロマは大人しいが、焦がした穀物、トーストのような香りが漂う。フレーバーでは、よりロースティな香ばしさ、ほろ苦さ、カカオ、コーヒー豆を感じさせる酸味も。口あたりはマロやかだが、甘味は比較的抑制が利いている。

ベタだが、牛乳と一緒に飲むと引き立てあって美味だと思う。一本しか買っていなかったので割りはしなかったが、交互に飲んでみた。黒いビールに乳製品が合うというのは、ノンアルコールでも当たりそうだ。

濃色系のノンアルはそもそも珍しい中で、経験上、正直いままでに飲んだ銘柄でピンとくるものに出会えていなかった。ボディが求められる濃色ビールにおいて、アルコール無しで独特の焦げ味を浮かないようにバランスよく仕上げるのは、難しいのではないだろうか。しかし、この Oatmeal Stout は相当にバランスもよく、スタウトのエッセンスが出ている。美味しいと思った。

Abv. 0.5% 未満

アロマ :★★☆☆☆
→ 焙焦モルト、トースト
フレーバー :★★★★☆
→ 焙焦モルト、カカオ、コーヒー
テイスト
→ 苦味 :★★☆☆☆
→ 甘味 :★★★☆☆
→ 他 :酸味、焙焦味
炭酸 :★★☆☆☆
ボディ :★★★☆☆

Bravus社はアメリカのブルワリーだが、国内でも通販チャネル、そして一部店舗を通じて飲めるようになった(前から知ってたような口ぶりだが、そのおかげせ自分も今回存在を知り、入手できた)。普段のビールだけでは物足りなくなった人がクラフトビールを飲むようになるのと同様、普段のノンアルコールビールでは物足りなくない人には、是非試してみる価値があると思う。

あんまり関係ない話。

機会があり、余所様のホームパーティで 5歳の男児ふたりと遊ぶ。無限のエネルギー、誰にでも平然と切り返すメンタル。もう、明日から俺の代わりに会社で働いてくれ...。

以上。

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