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綺譚 水の精

雨の日は水の精であっても、いささか憂鬱だ。

雨を司っているのは龍神である。
他方、水の精は地表の沼地や河川の気脈を整えているのである。

雨も沼地も河川も同じ水。
なので、水の精も、雨とは無関係ではない。
ただ、どちらかと言えば、気まぐれな雨に悩まされるというのが、水の精の立場である。
雨の降りすぎで、沼地や河川が荒れないよう配慮することが多い。
龍神がいつもおだやかに務めを果たすのを、心から願っている。

今日の龍神は、鳴き声を上げながら雨をさらに強めた。

どうやら風の精に求愛したものの、断られた様子である。

やるせない気持ちが入り交じった強い雨。

水の精は一斉に、辺りの花を咲かせることにした。
天空をひたすら歩く龍神の気持ちが、少しでも晴れればいいのだが。

雨の滴は花びらの上に多彩な文様を作りだしている。

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■おまけ:トップ画像について

小さい頃よりも雨の風情が感じられなくなってきたのですが、それは感性が鈍ったからでしょうか。普段はノンフィクション分野に身を置いている私ですが、感性を磨くために、「綺譚」と題して、幻想世界の小話を描くことにチャレンジしています。

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