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統計的因果探索手法LiNGAMで「生活における心配事」の関係を考えてみた

「新宿区民意識調査」というアンケートデータを使って何か新しいことをしてみたい!ということでnoteの記事で見つけた統計的因果探索手法LiNGAMという手法で探索的な因果探索をしてみます。

テーマは「医療・介護費用の負担」、「信頼できる友人がいないことへの不安」・・といった生活にまつわる不安が相互にどのように関係を及ぼし合っているのかで最終的に関係性を図解することをめざします。

統計的因果探索手法LiNGAMとは

こちらのnoteを参考にさせていただいております。手法の中身についてはこちらの記事をご参照ください。

データから全体の因果構造の推定ができる手法です。データ探索の段階で仮説を立てる前にざっとデータの構造を把握する目的にも使えそうです。

分析の概要

利用データは令和元年度新宿区民意識調査です。新宿区在住の18歳以上の男女が対象で1,176人から回答が得られています。

このデータはローデータのアンケートデータとしてもオススメです。

今回は調査の中から3つの設問を利用しています。

問3 あなたは、以下①~⑫のことについて、心配だと思うことがありますか。①~⑫のそれぞれについて1~4のあてはまるものに○をつけてください。
1. 今は心配ではないが、いつか(4~5年以降)は心配になると思う
2. 2~3年で心配になると思う
3. 今、心配である
4. 自分は心配ない
〔家計〕
① 暮らしに十分な収入が確保できないこと
② 医療費や介護にかかる費用が大きな負担となること
③ 住宅ローンやクレジットカードの返済などが大きな負担となること
〔仕事〕
④ 就職先が見つからないこと
⑤ リストラなどで解雇される、または廃業すること
〔健康〕
⑥ 自分が心身の健康を損なうこと 
⑦ 自分が介護の必要な状態になること
〔家族〕
⑧ 子育てが負担になること
⑨ 家族の介護が負担になること
⑩ 家族が心身の健康を損なうこと
〔地域・社会〕
⑪ 信頼できる友人がいないこと
⑫ 近所づきあいの中で、いざという時に相談できる人がいないこと
F4 あなたの年齢(満年齢)を次の中からお選びください。(○は1つ)
1 18~19歳, 2 20~24歳, 3 25~29歳, 4 30~34歳, 5 35~39歳, 6 40~44歳, 7 45~49歳, 8 50~54歳, 9 55~59歳, 10 60~64歳, 11 65~69歳, 12 70~74歳, 13 75~79歳, 14 80歳以上, 14 80歳以上, 14 80歳以上
F9 あなたの世帯の一年間の収入の合計額(税込み)をお選びください。土地・家屋・株券などの資産売却による収入は除きます。(○は1つ)
1 200万円未満
2 200万円~300万円未満
3 300万円~500万円未満
4 500万円~700万円未満
5 700万円~1,000万円未満
6 1,000万円~1,500万円未満
7 1,500万円以上
8 わからない

今回順序尺度とするため、3設問いずれかが未回答の行を削除し、さらに問3は今不安かどうかの尺度へ置き換え(1=今は不安ではない(回答1,2,4) , 2=今、不安(回答3))、F9は8 わからないを除いています。

データに関する詳細はこちらをご参照ください。

注意点

今回の分析では変数の選定や順序尺度を用いることが適切かという点について十分な検討ができていません。ツッコミどころもあるかと思いますので参考例程度にみていただけるとありがたいです。

結果についての解釈も内部のロジックからの検討ではなく、元データと出力結果を見比べた所感です。

結果

図のような結果がプロットできました。各項目の命名は上記問3の内容をもとに筆者が独自に実施しています。矢印についてはわかりやすくするため0.2を閾値にしています。

元の設問(問3)のグルーピング間の繋がりが強いようにみえるので探索的に因果関係を探す役割は期待できそうだと感じました。


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プロットから言えそうなこと

・「信頼できる友達がいない」「近所に相談できる人がいない」という悩みは他の悩みから独立している

・「収入の確保」に関する悩みは実際の世帯収入の低さと関連している、一方「家族の介護」や「家族の健康」に関する悩みは世帯収入の高さと関連している

・子育てやローン等返済の悩みは年代が若さと関連しており、一方で自身の介護に関する悩みは逆である

気になる点としては悩みから【属性】への矢印が伸びているが、因果からいうと逆ではないかという点です。「自身の年齢が高い」→「今自身の介護について不安」というのが本来の向きではないのかなと思います。

おわりに

ここまで統計的因果探索手法LiNGAMについて試した結果をご紹介してきました。冒頭にご紹介したnoteをご覧いただくとすぐに試すことができますのでぜひみなさまも試してみてください!

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