『マクベス』を読んで人間について考える。

今回私が読んだ本は『マクベス』です。

私は、大学で英語と教育を学んでいます。そのため、教養として、英文学などを学ぶ機会がありました。『マクベス』は、シェイクスピアの作品ということもあり知っていました。しかし、普段、この類の本を読まないので、このような機会があって新鮮でした。自分の知らない分野のことだけではなく、自分からだと読まないであろう本を読む機会はそうそうないので、この活動は非常にいいなと再度思いました。

では、本題に入ろうと思います。

まず、この本は、シェイクスピアが書いたものです。彼の作品には、歴史劇や喜劇、悲劇、問題劇、ロマンス劇といった様々な作品群があります。今回の『マクベス』は四大悲劇の1つとして有名な作品です。四大悲劇の特徴は、卑近な話題から物語が起動し、それがやがて壮大な悲劇へと昇華していくというものです。喜劇からなぜ、悲劇へと移行したのかはイギリスの歴史を見るとわかってきます。彼は、歴史劇からはじまり、喜劇で生計を立てるようになっていました。そうしてさらなる円熟期に入っていき、世紀も変わっていきます。エリザベス女王が亡くなるのです。次に即位したのは、ジェームズ1世でした。彼は、スコットランドの王でもありました。そんなこともあって、議会や国民の権利を無視したりして、暗い雰囲気になっていきます。この世相を反映して、徐々に悲劇になっていきます。

次に、この本を読んで思ったことについて書いていこうと思います。

①言われたことが当たると、その後はその人のいうことを信じるようになる。

マクベスは3人の魔女から予言をされます。その直後使者がやってきて、予言の一つが現実となります。もしかしたら他の予言も当たるのではないか?と思い始めます。マクベスの友人は魔女は闇からの使いだと言い、本当のことを少し話すことで人を騙し、恐ろしいことをさせると忠告しました。しかし、マクベスは聞く耳を持ちません。それからずぶずぶと予言に支配された生き方になっていきます。このようなことは、詐欺師などでよく見る手法だと思いました。少しもうけさせることで信じさせきってから、その人から巻き上げていきます。もし、自分の友人や愛する人がそのような状況に陥っていたらどうするべきなのか考えました。マクベスの友人のように理屈を説明したところでおそらく、マクベスのように聞く耳を持たないでしょう。本気でぶつかっていっても、それによって支配から解放されるかは怪しいので非常に難しいなと思いました。

②自分の行動選択によって現実は作り出される。

「呪いによる死」というものを知っていますか?ユカタン半島やカリブ海に浮かぶ島々に見られる宗教としてヴ―ドゥ―教というものがあります。この宗教では、「呪われた人は必ず死ぬ」「死んだ人の魂は水の国から再生してくる」ということを信じています。この地域では「呪いによる死」を診断したカルテが蓄積されるようになったため、原因を解明しようということになりました。しかし、病因は見つからず、わかったのは「全員が衰弱して脱水症状を起こし、最後に口から泡を吹いて死ぬ」ということだけでした。生理的な原因が見つからないなら、別の方法で探してみればいいじゃないということで、解明されたものを紹介しようと思います。

自己定義 ー 状況の定義
1.ある人に小さな不幸が起こる。
2.小さな不幸の原因を、「呪われた結果」なのでは?と当人は考える。
3.「呪われた」かどうかを確認するために、最近「不幸なことはないか」を振り返る。
4.ほかにも「小さな不幸」が見つかる。
5.「小さな不幸」が続いているのは「呪われた結果」ではないかと不安が大きくなる。

定義の共有 ー 他者による定義の肯定
6.「呪われた人は必ず死ぬ」ので呪われたかどうかが不安で眠れなくなり、食欲が落ちる。
7.「不眠と食欲不振」から、目が充血して顔つきや体つきが変わってくる。
8.周囲の人が急激な身体の変化に気づいて、「あなたは呪われた」と宣言する。
9.自他ともに「呪われた人」という現実認識が成立して安定する。

状況の定義に基づく行動選択 ー 正しい行動の実践
10.「呪われた人は必ず死ぬ」以上、一刻早い魂の再生を願うのが当然正しい希望となる。
11.「魂は水の国から再生する」から、魂が迷わず水の国に直行できるように、死ぬことが決まった人は水を飲まない/周囲は与えないことが正しい。水を与えるのは間違っているし、再生を願わない意味で断固として水を与える行為は阻止しなければならない。
12.患者は水を飲むことを拒否し、周囲の人間も水を断固として与えない。

最初に定義た通りの結果 ー 思っていた通りの現実の目撃
13.衰弱した人は、やがて脱水症状をおこして口から泡を吹いて干からびて死ぬ。
14.異常な死に方をした人を見て、人々はこんな死に方をしたのは「呪いによって死んだ」からだと確信し、「呪いの力」が確実に人を殺す力を持っていることを確信する。

このような過程がマクベスに見られるなとおもいました。一回この視点でマクベスを読んでみると面白いかもしれません。

では、話を一般化していきます。「予期しなかったこと」が起きた時、私たちはどのような反応をするでしょうか。「まじか!」といったように「信じられない」という意味を含んだ言葉を発するまたは思い浮かべるのではないでしょうか。ということはつまり、私たちが「信じている」ということを意味しています。予期した通りのことが実現する状態を、現実だと信じているのです。何が起こるかを知識で予期し、その予期した通りにお互いが行動するように統制し合い、当然の結果をお互いの選択で作り出しています。しかし、その統制は、重力のようなものなので気づくのが非常に難しいです。

予言の支配から途中でもいいから解放されれば、もしかしたらマクベスは死ぬことはなかったのかもしれません。立派な領主であり、武勇の誉も高く王の勝利に貢献した人物でしたから。自分が殺されるという自身の定義が死という現実を固定してしまったのでしょう。皆さんも、これを参考に自身を振り返ってみると発見があるかもしれません。



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