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真夏のアート散策。~松岡美術館・東京都現代美術館~

「ごきげんよう。」

一昔前の市井のあいさつは、こんな暑さでも上品なものだったのだろうか。小津安二郎作品に出てくる日傘を差したお嬢さんはもう何処にもいないのか…。

連日の酷暑で30度でも涼しいと感じてしまう肌感覚が異常だとだんだん気付かなくなる。

ある朝。
窓を開けると既に夏蝉が満を持してシーシーと鳴いている。
銀行に行く以外に特に予定のなかった1日。

温度計を見ると既に32度。

「このままでは脳が暑さで思考停止してしまう…!」と危機感を感じた私は、うだるような暑さから逃れたいの一心で久々に都内の美術館巡りをした。

前職時代に仕事でお世話になった東京・白金台にある松岡美術館で行われている「印象派の光~モネからルノアールまで~」を朝早くから鑑賞。

創設者である松岡氏が丹念に収集してきた美術品コレクションは、質がとても高く、そのジャンルも西洋絵画から日本茶室、古代エジプト文明の装飾、さらには現代ブロンズ作品まで幅広い内容となっている。

白金の一等地に佇む美術館。なぜかこの辺りは蝉の鳴く音が聞こえなかった。

入場料を支払い、ホワイエから大理石の階段を上がり2階へ。

点描はご覧の通り細かい工程があり、完成まで気の遠くなりそうな時間をかける。
溜息が出るほど見事な花びらの輪郭の描写である。
中庭には水が張られた甕があり、観るものを涼しくさせている。
周りにはイトトンボが水を求めて盛んに飛び回っていた。

松岡美術館 (matsuoka-museum.jp)

都心の一等地にあるためか、いつも人はまばら。
ゆっくり観られるお勧めの美術館である。

続いてやってきたのは、清澄白河にある東京都現代美術館。
待ちに待ったデイヴィッド・ホックニー展。

2018年の現代絵画オークションで、日本円にして100億円を超える落札価格を記録した第一線で活躍するアーティストである。

長らく改装工事をしていた現代美術館。リニューアル後は初めて行く。

86歳をこえてipadを駆使した作品を制作するなど、未だ新しい技術を取り入れて世に送り出している。

公開わずか数日ながら老若男女問わずで多くの人が訪れていた。
これがipad で制作してプリントアウトできるとは、時代の進歩を感じずにはいられない。
周辺の四季の移り変わりをこれほどまで色彩豊かに表現できる作家は類を見ない。

27年ぶりの大回顧展というので、待ちに待ったファンも多い。
お近くの人はぜひとも観てみてほしい。

また、同じ美術館の別企画展にてアメリカの現代作家サム・フランシスの作品を観ることができる。

海外での評価が高く、コンテンポラリーアートの美術相場も未だ高水準で推移している。
その圧倒的なペインティングを広々とした空間で楽しめるのはうれしい。

別フロアに飾っていた宮島達男は、LEDのデジタル時計を駆使した作品で知られる日本の現代作家だ。

はじめは油絵を学んでいたが、表現に限界を感じデジタルアートに転換。
時間は有限であること、また変化は永遠に続くことを我々に教えてくれる。

東京都現代美術館|MUSEUM OF CONTEMPORARY ART TOKYO (mot-art-museum.jp)

普段、芸術に馴染みのない人も是非アートハウスに足を運んで、何を思うか、感情が湧く瞬間を楽しめたら楽しいと思う。

残暑の行楽にも一考してみてはいかがだろうか。

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