「!」の効用。
先日行きつけの美容院に行ってカットをお願いしたとき、髪をクリップで留めていた美容師のお姉さんから言われた。
「おでこ、狭いですね!」
生まれてこのかた全く気にしてこなかった。
しかし美容師さんの語尾は強かった。
「言われないですか?だいたい普通の人の3分の2くらいですかね!!」
そこまで言われると気になってくる。語尾を強くした理由。
連れられたシャンプー台に寝そべり、白木綿を顔に被せられている間に考えていた。
…
語源、根拠、ことば選び。
「ことば選びは慎重に。」
ふと、戒めのように時たま唱えるこのフレーズが脳裏に浮かんだ。
今はnoteに落とし込むことば選びに慎重になっているが、
20代の頃はとにかく言葉遣いに四苦八苦していた。
それまでアルバイト経験はあったものの、対面のない夜間警備。
交代時の「お疲れさまです」くらいしか使わない。
楽な仕事だったので、毎月の預金額が増えるだけで何か身になった気配がまるでなかった。
その後新卒で入った会社を数日でトンズラし、
禄に研修も受けずに社会に放り出されてしまった。
なので敬語の使い方は滅茶苦茶。
取次の電話に、
「〇〇さんはちょっと外出先から戻られていない感じです。」
恥ずかしながら、そんな言葉遣いを平気で放っていたように記憶している。
無意識な一言で相手を傷つけてしまったことも、
ずっと合っていると思いこんでいた文章の誤植も経験した。
当時の取引先へのメールに「!」を平気で用いたり、
こちらの不手際でトラブルを起こした相手への謝罪メールで「貴殿」とすべきところを「貴様」と送ってしまい更に炎上したのは今でも反省している。(うん、まったく若いな自分。)
30近くになって今の会社のセミナーでようやく初歩的なマナーを整えた。
ビジネスメールやサイトへの案内表記は今でも慎重にチェックしている。
「ことば選びは慎重に。」
こんな過去の記憶を思い巡らせているうちに、白木綿を外され仏頂面のご尊顔がお目見えした。
「さっぱりされましたね!」
ずっと瞼を閉じていたためか、美容師さんの笑顔が眩しい。
このときは語尾を強くされると不思議に元気が出た。
…
先日、元ちとせさんの14年ぶりのオリジナルアルバムが発表された。
アルバムを購入し、現在は執筆用BGMとして取り憑かれたように流している。
この曲は奄美シマ唄「ヨイスラ節」を、アンビエントやエレクトロニカを得意とする冥丁氏がリミックスしている。
古来のシマ唄の言葉と編曲で異世界にトリップしたような感覚になる。
楽曲紹介のページに歌の意味が気になったので最後に引用したい。
今年デビューして20年を迎えられたそう。
衝撃的だった「ワダツミの木」。
その後ヒット曲に恵まれなかった時期もあっただろうが、彼女も紆余曲折を経て今があると思う。
日々目にする言葉の海。
目を背けたくなるような辛辣な言葉も、勇気づけられる優しい言葉も入り混じって浴びている。
一喜一憂をすることもある。
その中で、どうか皆様もたくさんの素晴らしい言葉との出会いに恵まれますように!
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