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経営陣が日本最大の一枚岩で一枚岩になってきた話

弊社キュービックでは、ゼネラルマネージャー以上を経営陣(ボードメンバー)と定め、僕(世一)を含め8人で重要な意思決定を行う体制になっています。ちょっと多いんですが、既存事業の他、新規事業・人事・財務・デザインなどの各事業領域・機能領域(と支社機能)の統括メンバーがトップレベルのマネジメントに参加する体制です。

キュービックは現在14期めに入っているのですが、世一ワンマンで来た歴史が長く、現体制になったのは1年半ほど前から。ボードの社歴は最も長い木村でようやく丸5年ほど。社歴浅めのメンバーが多いためか、この8人はどこかちぐはぐで、社内のメンバーからも「ちゃんと言いたいことを言い合えてるように思えない」「一枚岩に見えません」などと言われてしまうこともしばしばでした。

ボードの関係値と連動しているかにも見える形で、2018年半ばからは全社の組織状態がどんどん悪化していきました。リンクアンドモチベーションさんのモチベーションクラウドサーベイ(MCS)では、全体のスコアは過去最悪。個別項目では「階層間の意思疎通」はだいぶ酷い点数となってしまいましたし、ずっと強いスコアが出ていた「経営陣への信頼」までガクッと落ち込みました。

↑過去最悪のスコア

サーベイのスコアはさておきにしても、社内の空気は重たいものでした。

300人を超えると、状態を正確に把握するだけでもひと苦労です。メンバーにヒアリングをしても、会社で何が起きているのかがさっぱり見えてこないのです。

ベンチャー経営なんて解決すべき課題の連打なので、それ自体は別になれっこではあるのですが、「原因が見えず、打ち手が打てない」というのは割と初めてで、本当に怖い体験でした。離職もチラホラ。

業績は当時まだ順調でしたが、ほおっておけば確実に業績にもダメージを及ぼすレベルの組織状態になっていました。

様々な打ち手を考えて実行するも、どれもこれも有効打につながらず。相談した方にいただくアドバイスも「それはもう何度もやったんだよな。。」というものばかり。

この頃は僕も経営の自信を失い、満足に眠れない日が続いていました。

「一枚岩行きますか」

転機となったのは2019年6月11日。半期で最も大きなイベントである「総会」を月末に控えていた僕らは、そのコンテンツ作りのための企画会議を飲みながらやっていました(本当は篠原の歓迎会のはずだったのが、篠原の話はほぼしませんでした)。

お酒も入っていい感じにできあがった状態で、「100km走る」「会社の聖地を巡礼する」などいくつかアイディアを出していたのですが、「一枚岩」でググった小森の「和歌山に一枚岩あるよ」で空気が変わりました。

古座川の一枚岩(こざがわのいちまいいわ)とは、和歌山県東牟婁郡古座川町の古座川左岸にある、高さ約150m・幅約800mの一枚の巨岩。国指定の天然記念物である(wikipediaより)

とりあえず総会の前の週の土日は空けておくようにとの指示が出て、この日は散会。

そして数日後、総会PLの松本から「6/22土の13時半に名古屋駅集合、運動できる格好を持ってくるように」とだけ指示が飛び、僕らは本当に一枚岩に向かうことになりました。

詳細を知らされぬままだったので、メンバーは家族に満足に事情を説明できず、怪しまれながらの出発となりました(笑)。

財布と携帯は没収、資金は1人1万円

名古屋に着くや否や、まずはご覧の衣装が配られました。

そして財布と携帯は松本により没収。レンタカーはあるけどカーナビは使っちゃダメ。資金は1人1万円だけ渡され、これで1泊2日を乗り切ることになりました。(駐車場から出る瞬間にまず駐車料金でいきなり2,000円飛びました汗)

旅の様子を時系列にお伝えするのがこのnoteの目的ではないので、ダイジェストだけ写真で並べます。合宿の様子は撮影班が帯同してくれて20分ほどのムービーになったのですが、2日で30時間以上、撮れ高アゲアゲでした。

1.昼飯代を浮かすため、ランチはガリガリ君1本(75円)だけ。当たりました笑

2.キムラルク。

3.想像の10倍ぐらいキツかった一枚岩のぼり(裏側の山から登っていく)。人間が歩く道はほぼなく、獣道でした。

4.たぶん落ちたら死ぬ崖。

5.危ぶまれた天気もなんとか持ちました。頂上気持ちよかった。

6.深夜のBBQ。

7.明け方まで語り。

8.僕はうっかり先に寝ちゃいました。不覚。

行き帰りの車内での楽しい道中や真面目な仕事の話、買い出しからBBQまでの工程、夜の部屋飲み、そして岩登りなど。クルト・レヴィンのUnfreeze-Change-Refreezeのモデルで言うところの、Unfreeze(解凍)を合宿で徹底的に行った感じになりました。

通常の研修であればこの後Change(変革)とRefreeze(再凍結)が必要で、アクションプランに落とすところまでやるもの。が、今回僕らは特にこの2つのステップを踏まず、解凍だけに1泊2日を費やして終わりました。

とにかく語りまくった(僕は写真の通り結構寝ましたが)ところ、これまで互いに踏み込むことができていなかった深いところにタッチしあうことができました。自分も本当はそう感じていた、そんなとこに苦しんでたのね、あの時は本当に助けられた、などなど。グッと距離が近づいた瞬間が何度もあり、設計せずともChangeは自然と引き起こされていきました。たぶん。

ただでさえ大人になるとかっこつけるものですし、弱音を吐ける場は減っていきますし、失敗も怖くなります。経営者ともなれば立場もあるしなおさらです。ガードが上がり、ディフェンシブになります。アクションプランに落とすRefreezeのプロセスを入れてしまうとここにダメージが行く可能性があるため、今回はこれで良かったと思っています。

この合宿で、互いが心から信頼しあい、支援し合える関係になるため、大きな一歩を踏み出すことができました。本当に良かった。


ということで・・・

この投稿を読んで「うちのチームも一枚岩合宿やってみたい!」と思われた方のために、成功のために必要だったと思われる要素をいくつか書いてみたので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

ポイント1.業務外のミッションを持つ

ミッションがいつものような経営イシューへの取り組みではこのような成果は得られなかったと思います。「岩に登れ」「宿は自分で探せ」「携帯と財布は没収」「資金は1人1万円」など、非日常で業務外のミッションを持ったからこその成果。

また、ミッションはやはり身体的に多少ハードな方がいい。山登りぐらいはちょうどいいですね。

上司と部下が一緒に取り組むような合宿では、通常業務といかに切り離したミッションを渡せるかというのは大きなポイントになると思います。間違ってもここで経営課題の議論などはするべきではないと思います。

ポイント2.篠原の存在

弊社キュービックにはCDO(チーフデザインオフィサー)として3月から篠原がジョインしています。

彼はボードの中でも最も新しいメンバーに入るのですが、彼の参加なくしてここまでの成果は得られなかったと思います。

篠原は明るさ・オープンな姿勢・高いコミットメント・ヒトに向かう力などどれも素晴らしく、自然と他のメンバーも巻き込まれて「開いて」いきました。受け身の参加者だけでなく、企画をリードするコミットメントの高い人間が必ず必要です。

ポイント3.ボード朝会で物理的な接触頻度をあげていた

一枚岩合宿そのものも破壊力のある機会でしたが、振り返ってみると、合宿前に少しあったまっていたことが機能したかもしれません。

1つは「ボード朝会」。6月に入り、期中に捌きたいアジェンダが山積していたこともあり、週4回の朝会(1時間)を開催していました。

・単純に会話の総量が増えたこと
・ガチの経営会議ではない場で「少し柔らかいうちに」共有し合う場を持てたこと
・ブラックボックスになりがちな1on1ではなく、みんなで課題を共有しあったこと
・各々の課題を支援しあいながら議論し、一緒に思考したこと

距離が近づいていったことを感じました。

ポイント4.共通の敵もいた

もう1つは上述の6/11の篠原歓迎会。ここでは臨時収入の入っていた木村が男気で全ておごってくれました。お世話になったピザ屋さん「PIZZA MAFIA TOKYO」の過去最高売上をマーク。臨時収入をかなり消しとばしました。

(人生で食べた中で最も美味しいピザでした。また行きたい。)

複数あった企画案の中には、10/24の設立記念日にちなんで「102.4km走る」という地獄のような企画もありました。これを阻止するために全員が自然と一枚岩になっていったように思います。「共通の敵」って大事。

ポイント5.総会プロジェクトリーダー松本の想い

代表の招集や経営企画室の企画などによる「課題解決」のための合宿では、ここまでの成果は得られなかったでしょう。事実、過去に何度も近いテーマで取り組もうとしましたが、表面的なところを何度も撫でるだけで一枚岩問題の核心にはどうしても届きませんでした。日程調整すらままならないということも。

今回は、総会プロジェクトリーダーの松本が、想いを持って企画してくれたもの。日程も、通期の最後の土日というおそらく1年で一番あり得ないタイミングでの実施。20代女性にオジサンたちが転がされた構図です。

彼女はどんどん悪化する全社の組織状態や、経営陣のギクシャクした人間関係に心を痛めていたはず。総会のこの企画を持って自分がなんとかしなきゃと、強い気持ちを持っていたに違いありません。実際、一緒に一枚岩に登ってくれました。

「松本頑張ってるし、僕らも頑張りますか!」という我々の開き直りは、企画を全力で楽しむこと=合宿の成果につながりました。誰も一言も文句言いませんでしたし。

空気を読まない若手に企画の一切を委ねることをお勧めします(うちの松本は空気読みまくっていますが、その上でBrave Heartでやりきってくれました)。


MCSのスコアも無事回復

4月時点で上向いてはいたのですが、7月のスコアは回答者数193名から261名に増えての上昇。また、上司満足度は3.6から4.0へ(逆に過去最高)。

編集中の動画をチラっと見たときは、「こんなオッサンがわちゃわちゃやってる動画の何が面白いんだろう(汗)」と心配になりましたが、リリースした総会当日は大成功。会場は爆笑の渦に何度も巻き込まれ、「皆さん本当に仲がいいんですね」「めちゃくちゃ面白かったです」「安心しました、ついていきます」などとポジティブなコメントをたくさんもらうことができました。嬉しかった。

トップマネジメントが一番楽しくイキイキ働いていること、互いに信頼しあっていること。ただそれだけで、会社は本当によくなるということを実感しています。そしてそのためには互いがガードを下ろして「開く」こと。一枚岩合宿、とてもオススメです。

※お金は財務大臣小森の管理のおかげで、2万円近く残りました

福岡統括の橘だけ参加できず残念。大分にも一枚岩あるらしいので、次は一緒に!てか100億いったらエアーズロックいきましょう。

世一英仁
twitter:https://twitter.com/41hide
facebook:https://www.facebook.com/hidehito.yoichi

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