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新規事業開発がうまくいかなかった理由を振り返る

弊社キュービックでは、他の多くの会社と同様「新規事業開発室」を設置し、新規事業開発にも力を入れてきました。

ただ色々あってうまくいかず、新規事業開発室そのものはいったん解散。ここから出てきちんと立ち上がったものはまだありません。

新規事業開発じたいは続けていかないといけないので、社長室的な部門でメンバーを吸収して継続しています。(モモウメは事業化が決まりましたが、社内の別部門から生まれたものです。)

仕切り直しとなったこのタイミングで振り返っておいた方が良いかと思い、共有もかねてnoteにまとめてみました。
※事業がうまくいかなかったという「結果の失敗」ではなく、事業を立ち上げるに至らなかったという「プロセスの失敗」についてまとめたnoteです。

大前提:経営陣・メンバーとも経験不足

まず、(1)「事業開発をやって軌道に乗せたことのある人」が、社内にほとんどいません。

そもそも事業を作って軌道に乗せて一定の成功を収めるまでに3-5年かかるわけで、それを連続でそれなりの勝率で当ててきた人が日本にそんなにたくさんいるわけでもないのですが。

創業事業も、既に存在していた・参入障壁の低いデジタルメディアのビジネスを、組織開発力と戦略力で伸ばしてきたというもの。振り返れば現在の規模まで伸ばせたのは様々な奇跡があったわけで(マーケットが思った以上に大きかった・伸び続けた、強いプレイヤーがいなかったなど)、事業開発的にやろうとしたEC事業や他社とのアライアンスなども、あまりうまくいった経験はありません。

事業開発経験だけでなく、(2)ものづくりの経験も不十分。ここを補う体制を作り切れませんでした。

このため、リサーチ・プロトタイピング・議論・意思決定など、様々なプロセスに非効率を生み続けてしまった自覚があります。

とはいえ、誰でも最初は初めてですし、裸一貫のスタートアップと違い一定のヒトモノカネはあった。また、多くのベンチャーでケイパビリティは似たようなものかと。

ということで、やりようはあったはずだと思っています。

1.判断基準を十分に示しきれなかった

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ある程度作り込んだ企画が、あらかじめ示された判断基準以外の理由で却下される、ということが続くとメンバーのやる気を大きく削ぎます。ですから、最初からなるべく「やるやらの判断基準」を明確に示すに越したことはありません。

・うちがやる意味・意義がないもの、社会性の低いものはやらない
・マーケットはこれぐらいの規模あるといいね
・うちの強みが生きる領域だと判断しやすい・苦手な領域だと見送る可能性が高い

これぐらいのものは示してあったのですが、実際に上がってくるアイディアは予想以上に様々。その都度行き当たりばったりで議論する形になってしまいました。

「あらゆるパターンを想定して基準を示す」はほぼ無理なのですが、とは言えもう少し具体的に線を引いてあげればよかった。もしくは、アイディアが散りすぎないように「タネ」の部分だけでも渡した状態でスタートすればよかったのかもと、振り返って思います。

2.最初から複数本立ち上げようとした

社員5人+起業家+フリーランス数名という布陣で、アイディエーションを繰り返しながら複数の仮説を同時に追っていました。成功確率の高い勝負ではないので、企画の数がある程度必要だと考えたためです。

「1本やって、ダメなら次!」を繰り返す方法もあった。資源を分散しすぎたのかもしれません。

3.経営陣が普段のテンションでフィードバック

出てくるアイディアや報告資料に関しては、僕だけでなく経営陣がそれぞれ質問やフィードバックをどんどんします。生まれる全ての疑問について、説明を求めました。提案者は蜂の巣になることもありました。

メンバーの経験値が浅いこと・手探りで前進するしかなかったことを考えれば、
△「提案する側」と「ジャッジする側」に分かれてやり合う
◯「一緒に作るための役割分担」をうまく組むべきだった

例えば、提案された内容が不十分だった際にも、経営サイドが自分たちでも入念に調査・インプットをしてそれを補い、建設的な議論の場を作るとか。そもそもセットプレーの会議の場だけでなく、普段の業務の中でアドバイスしたり一緒に汗かくとか。

現在はこの反省を生かし、会話の機会を増やす工夫を増やしています。

4.既存事業部門との分断

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せっかく既存事業がある状態での立ち上げです。300名いますから、情報やノウハウの流通、人脈の交換、工数の融通など、うまくやれたことはあったはずでした。

「深化」が進んだ結果として「探索」がうまくいかなくなるのは、どの会社もぶつかる壁らしい。ヒトモノカネの融通や互いの応援・協力は、同じ会社の中なので自然に行われるやりとりかと思っていましたが、やはりそれが生まれるような仕掛けや経営のコミットは必要なようです。

「両利きの経営」読んでたはずだったのですが。。改めて読み直すと、現場のリアル感含め理解が不足していました。


現在は、積極的に既存事業メンバーと絡ませるよう声をかけています。

5.既存事業の成功体験に縛られた?

既存事業はデジタルメディア運営なので、コンテンツ制作やグロースハック、デジタル広告運用などのマーケターが大半という組織です。逆に、提案される新規事業は、営業やCS、コンサルタントなど、うちが得意としていない領域のケイパビリティの開発が必要なものも多くありました。

普段やっていることなら、成功のイメージも持ちやすいし判断もしやすい。そうでない場合にはそれが難しくなるので、ここで少しディフェンシブになったかもしれません。

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成功体験から解放された状態で、フラットに事業案を判断することができていたか?自問自答しています。

これも、一緒に入り込んで検討することで改善できるはずだと考え、現在はセットプレーの会議の場だけでなく、普段から彼らの仮説を深く理解することを心がけています。

6.製作・開発のリソース支援が不足した

とにかくユーザーに当てて、その反応を定量・定性でしっかり収集して判断に生かす、ということが十分できていませんでした。MVP検証よりも机上の思考や調査の時間が長くなりすぎ、検証本数が少なく終わってしまいました。

製作・開発のリソースをもっと強めにハることができれば違ったかもしれません。既存事業の領域で手一杯な中難しい部分もあるのですが、ここを少し甘く見たところもあったかも。

まとめ:小さな会社で新規事業を成功させるためには

まず、事業開発・プロダクト開発の経験・力量ともに十分なメンバーを当てることができれば、それに越したことはありません。

ただ、事業作り・ものづくり・社内調整など、様々なスキルが求められる総合格闘技なので、かなりの力量が求められます。したがって、

・だいたいそんなスーパーマンは社内にいない
・採用難度MAX
・奇跡的に採用できても、能力を100%発揮することができるかはまた別

つまり、僕らはそもそもこういう人材がいない前提、経験・力量ともに不足している前提で、新規事業開発を考える必要があります。

結局のところ、実際に手を動かしているメンバーと経営陣が一緒に汗をかくことが最重要かと。

・アイディア出しやその磨き込みに当事者として入る
・社内外から協力者を獲得する
・既存事業との相互支援を促す
・精神的に支援する
・ヒトモノカネを柔軟にあてがう
・開発チームの目線を引き上げ、事業リーダーとして育成する

「新規事業は経営がコミットしないとムリ」とはどこでも言われることですが、わかっていたつもりでわかっていなかったかもしれません。人材のスキルの問題ではないんですよね。

ということで、関与度を思い切り高めて改めて頑張っていきます。次は成功を振り返ってnote書きたい!

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