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本棚02  中野正貴「TOKYO NOBODY」



2000年、リトルモア社刊行。

たしか購入時の帯には「誰も写っていないんです」と書かれていた。内容は都内各所で撮影された、誰も写っていない写真を集めた作品集。非常に有名な作品なのだが、私が購入したのはつい昨年。理由は、発売当時は「長時間露光+NDフィルターで撮影したんだろうな」などと勝手な認識をして買いそびれていた。しかしある時、何かのインタビューで全てその瞬間を狙って撮影した、ということを知り自分を恥じた、、

発売後20年の今見ると、とにかく非常に写真的な作品だと思う。何しろ特別「決定的な一瞬」を撮っているのだ。写真のメディアとしての独立性がどんどん弱体化している昨今、改めて写真は「決定的瞬間を切り取った、緊張感を保ち屹立した1枚」なのだと思わされる。また、撮影された1990年〜2000年当時の東京の街並みの記録、という側面もある。感情を入れて撮影された形跡はないのだが、郷愁のような気持ちが湧く。


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