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特別展示「少女たち」を見に福島県立美術館へ

先日、福島県立美術館にて開催中の特別展示「少女たち」を見てきました。
※開催期間(2023.9.23〜11.12)

そのレポートです。



「少女たち」展とは?

1973年、京都に誕生した星野画廊コレクションから名品121点を集めた展示です。
「夢と希望、そのはざまで」と副題が添えられているのですが、これは描かれている女性たちのことなのか、それとも描いている画家なのか、想像が膨らみます。

この星野画廊、「絵がよければ展示する。作家が有名か無名かは関係ない。」という判断の元、数々の名作を発掘してきたのだとか。


さっそく福島県立美術館へ

福島県立美術館正面

何度も訪れているのですが、山を背にした佇まいが気に入っています。
秋の風が心地よかったです。


ちょっとぼやけましたが、隣には県立図書館があります。


中に入ると大きなパネルが出迎えてくれます。フォトスポットにピッタリ。


展示に合わせて柱に作品が掲げられていました。


気になった作品のレビュー

この展示は、写真撮影一切禁止でしたので、ここからは私が個人的に気に入った作品たちを選んで、レビューをしたいと思います。

島成園 《きぬた》

言わずと知れた女性画家。
彼女の描く女性は、凛としていて、女性だけが持つ美しさをそのまま描いている感じがして好きです。

作者不詳(数馬) 《窓辺御簾美人》

この作品を見たときに驚いたのですが、掛け軸の本紙部分からはみ出て絵が描かれていました。着物を着た女性が暖簾を持ち上げているところを描写した作品です。
どうやら、『描き表装』という手法で描かれているんだとか。
漫画のコマからはみ出るような書き方が昔から行われていたのかと驚きました。

小西長廣 《太夫之図》

ろうそくの光の元にいる太夫と禿の絵で、サイズが大きく、それだけでインパクトがありました。
ですが、それよりも印象的だったのが、薄暗い空間で不気味に光っているように見える太夫の肌や白目部分。
きらりというよりも、ぎらりという表現がぴったりな光り方で、そのなんとも言えない不気味さが目を惹く作品でした。

奏テルヲ 《淵に佇めば》

全体的に暗いトーンで、左向きの女性の背中にもう一人の女性がピッタリくっついている様子が描かれています。左側には、赤色の何かが。
解説には、娼婦が血の池地獄の淵に立っているというようなことが書いてありました。
作者の奏テルヲは、淪落の女性に惹かれて作品を描き続けた作家だという解説のパネルもありました。
他にも《妊みし女の喘ぎ》や、《恵まれし者》など、この展示で多数の作品を見ることができます。

岡本神草 《拳の舞妓》

こちらの作品も、一度見たら強烈に印象が残りそうな作品です。
下から照らされている舞妓さんの笑った顔がなんとも不気味。
解説に、元々は三人の舞妓が描かれていて、この絵はその真ん中部分らしく、切り取ってできた作品なんだとか。

甲斐荘楠音 《サイダーを飲む女》

和服の女性がこちらを見て、グラスに入ったサイダーを飲むためのストローを口にくわえている絵です。
くっきりとした線でストローが描かれていないのですが、儚さや色合いなどがとても魅力的な作品でした。

甲斐荘楠音 《畜生塚の女》

こちらも甲斐荘楠音の作品。
畜生塚とは、豊臣秀吉が養子秀次を自害させ、妻、妾、子供を処刑して三条河原に埋めた事件のことだとか。
白装束らしきものを纏った女性が右向きの状態で正座をしている絵で、処刑される前の姿のようです。
背景が赤黒いせいで、白い着物がかなり映えて見えました。女性の目にどんな感情が潜んでいるのか、想像が膨らむ作品です。

霜鳥之彦 《琉球のおどり子》

とても鮮やかな色彩で、躍動感がある絵でした。
解説に、作者が88歳で描いた作品とあったのですが、年齢を感じさせない色使いに驚きました。

下村良之介 《たこ焼き》

見た瞬間、クセがある! と思いました。
これは実際に見てもらいたいので詳細は省きますが、たこ焼きを食べている絵です。

ロジェ・ビジェール 《薔薇を持つ婦人像》

作者にはかなり失礼かもしれないのですが、この作品の……額縁が印象に残っています。
角が丸い金属? のようなもので、お盆のようにも見えました。

鶴田吾郎 《フィンランドの娘》

こちらの作品は最後の方に見た作品なのですが、ざっくり展示室の中を見ている際、バッチリと目が合いました。
完全にこちら側を見ている目でしたね。

その他気になったことのメモ

順番通りに作品を見ていったのですが、作者不詳という作品が何点も続いたので、あれ? と思いました。一応、絵に残された名前はわかっているようだったのですが、それ以外は不明。
そんな作品がこうして大切に保管されて、いろんな人の目につくって、素敵だなぁと思いました。
「絵がよければ展示する」という星野画廊さんのポリシーがしっかりと反映されているんですね。

途中途中で、文字だけのパネルが設置されていたのですが、絵と合わせて見て欲しいです。
それと、作品の一つひとつに解説のコメントがついているのですが、それを読むのがとても楽しかったです。
作品の見方、何をモチーフにしているか、絵の中にある物がこんな状況を表しているんじゃないかなど、とにかく詳しい。
どうやって鑑賞したらいいのか分からない人にも優しい解説でしたので、さらに作品を楽しめると思います。

常設展示も見てきました

県立美術館に行った際は常設展示も見るのですが、今回は地元の学生たちが展示作品をテーマにして短歌、詩、俳句を作ったものが添えてありました。
人気の作品にはいくつも作品が添えてあったのですが、私が気に入った短歌に名前が入っていなかったので、誰が作ったのか分からず残念でした。
すごくいい短歌だね! と伝えたかったです。

おわりに

実はこの「少女たち」展、行くかどうか迷っていた展示でした。
ですがやっぱり、行って良かった! と思います。
星野画廊さんが、作品が有名というだけで判断せず、いい作品なら紹介するという心構えもとても素敵だなと思いました。
やっぱり芸術はいいですね……。

深まる芸術の秋に、ぜひ行ってみてはいかがでしょうか。



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