岩政監督代行が指揮をとった6試合を見て感じた事

3/13に新監督レネ・ヴァイラーがいよいよ鹿島アントラーズに合流。

これをもって岩政コーチは監督代行としての役目を終える形になります。


実際に指揮をとったのは、リーグ戦を4試合、プレシーズンマッチとルヴァンカップをそれぞれ1試合の計6試合。

毎試合後にその都度感想を形に残してきたので、これを機に繋ぎ合わせて自分なりにまとめておきます。



1試合目:2/13 【PSM】 vs水戸戦

2/17に書いたのがこちら。

読んでもらえればわかるが、主に余白について書いてる。

なぜこの試合を見て余白について考えさせられたか。


俺がサッカーをガッツリ見始めたのは、DAZNが来航した2017年から。
ちゃんと見始めてからは「なにをもって良いサッカーとするのかの基準をまず設定しない事にはなにも始まらん」ってことでそれを考えて。
1年くらいが経過したあたりで

・選手を迷わせないこと
・選手を縛りすぎないこと

この2点の共存がうまくなされているか否か

っていう所に落ち着いた。今でもそれは変わってない。

そしてこの共存を成立させるためには、「適切な余白」が必要となる。


選手達が迷わないようにするため、チームが表現したいモノの整理・提示をコーチングスタッフ側で行う。
そのうえで手段の部分は、臨機応変にその場の状況に対応できる柔軟性を失わないために、縛らずに選手達に任せる。

この示す領域と任せる領域のバランス、つまり選手達自信が考えてプレーするために残しておく「余白の最適なバランス」が重要であり、それを探るためにチャレンジとフィードバックを繰り返していく事が強いチームになっていくための道筋だと個人的には考えてる。


実際の水戸戦のピッチ上では、この短期間で手段の部分を選手達主導で上手く形にしてまとめあげるには至らず、まだまだ手探りな色が強く、結果として試合に負けた。
まだまだ未熟なこのチームにとっては、選手達が考えて埋めるために空けておいた余白の領域が広すぎた。


ただそれでも、ポジティブな気持ちが強かった。

このチームは今、余白の最適なバランスを探るためのチャレンジに取り組んでいるんだと感じたから。なのでレビューでは余白について主に書いた。



昨季最終戦で、健斗や荒木や綺世から自分達が変わっていかないと優勝するチームになれないという旨のコメントが出て。
実際に体制が変わり期待が高まった2022シーズンの幕開けで、キャンプを経て岩政監督代行が選手達に提示したモノを表現するために、選手達が迷うのではなく「余白のうえで考える」姿を感じれたのは嬉しかった。

前へ進んでいる事を実感できた。光が見えた。そんな試合だった。


2試合目:2/19 【J1第1節】 vsG大阪戦

続いて2/20に書いたのがこちら

6年ぶりの開幕戦白星を挙げられた要因について書いてる。

プレシーズンマッチ水戸戦で、現時点での選手達の考える力に対して余白の領域が広すぎたのに対し、それまでの1週間で修正。

表現したいモノ(主に攻撃における深さと広さの獲得)のための手段の部分について、下書きをより選手に細かく提示し、その余白を埋めた。

とはいえ手段への迷いを排除するためにパターンを作りそこに選手をあてこんで縛るわけではなく、主に優磨やジエゴ,樋口の両CHは状況に応じて自由に判断し機能しており、結果選手達が迷わずかつ縛られず、考えながら自信を持ってプレーする状況を作れた。

相手に退場者が出るなどの要素が絡んでいたものの、リードした状態でのハーフタイムでの布陣変更など細かい修正もあり各選手が躍動し、試合を支配することに成功。文句ナシの開幕戦となった。

個人的にはプレシーズンマッチを踏まえて、開幕してからももう少し下書きが足らずにピッチ上が迷う状態が続くと覚悟していた。
なのでプロの指導自体が初なうえに、それも監督代行という難しい立場で、水戸戦からの1週間でここまでチームを良い形に整え仕上げてきた岩政監督代行のその能力の高さに驚かされた。


3試合目:2/26 【J1第2節】 vs川崎戦

快勝を見せた開幕戦に続き、お次は王者川崎をホームで迎えたのがこの試合

結果から言うと、完敗。

開幕戦の勢いやホーム開幕戦という雰囲気、そして日程面の差という好条件が揃っていたものの、結果90分通して「新生と王者」の差をまじまじと見せつけられた。

表現しようとしているモノも相手に対応されて出せず、早々に先制されてから前半のうちに2失点。
ハーフタイムの布陣変更で息を吹き返すも、結局ゴールを奪う事はできずず。
試合運びという面でもより完成度としての違いを見せつけられた


ただ冷静に考えて、このチームは生まれ変わってまだ1ヵ月。

鹿島がここ数年「あの頃の姿を取り戻そう」と過去にベクトルを向けて試行錯誤していたその間、リーグのトップを走り続けてたチームとの完成度の差が、1ヵ月程度では埋まらないというのはある意味当然ではある。

しっかり切り替えて次の試合へ持っていく事が求められた。


4試合目:3/2 【LC第1節】 vsC大阪戦

続いてがこちら

ルヴァンカップのグループリーグ初戦。
この試合は前節から中3日、さらにまた中3日で次のリーグ戦があることを踏まえて大幅なメンバー変更があった。

これが主な原因となり、プレシーズンマッチ水戸戦と似た状況が起きる。

これまで出場していなかった選手達主導で、手段の部分を上手く形にまとめあげられなかった。
相手の迷いのないプレスに対し柔軟に対応することができず、その場の状況に応じて考えるために空けておいた余白が、迷いへと変貌し再びピッチに表れる。

それが、表現したいモノが明確にありエネルギッシュに戦うセレッソによってより顕著に色濃く浮かび上がってしまっていた。

こうなってしまえば、選手達は自信を失ってしまう。
さらに迷う。余白がより広く感じられるようになる。

水戸戦からガンバ戦にかけてあれだけの仕上げを見せ、川崎戦でもハーフタイムに修正を施した岩政監督代行が前半開始当初から続くこの状況を試合終盤まで続けてしまった点からは、来る新監督にスムーズにバトンタッチする事の難しさの作用等々の要素を改めて考えさせられる機会となった。


5試合目:3/6 【J1第3節】 vs柏戦

2試合連続のホームでの完敗を経て、続くホームでの3連戦の締めとなったのがこの試合。

この日は直近2試合と打って変わって、フォーメーションも大幅に変更。

攻撃面だけでなく、今まで大きく変更する事の無かった守り方の面でも新しいチャレンジを序盤から見せてきた。

ホーム2連敗によって生まれた迷いと自信の欠落を考慮しての戦略として、ロングボールのターゲット固定化とそれを活かすための人員配置に始まり、これまで受け身の色が強かった守備でも明確に表現したいモノを提示して、ピッチ上から迷いを消した。

今のチーム状況や選手達の考える力を見極め、その状況での最適な余白のバランスを求めて、より下書きの色を強める調整を施した。

結果的に選手達が迷うことなく躍動する。
そうなれば自信を持って、状況に応じたプレーを考えて臆せず実行できるようになる。
再びピッチ上にエネルギーが戻って来る。

試合にも勝利し、なかには涙を流す選手も居た。


岩政監督代行はガンバ戦に引き続き、前の試合での余白の広さを踏まえたうえでの整理で、チームを再び勢いあるものに仕上げてきた。
前の試合からわずか中3日で、選手が表現したいモノに迷わず、失った自信を取り戻すための戦略を準備したきたのは素晴らしかった。
試合終盤には相手のやり方に応じた冷静なベンチワークも見せて対応。マネジメント力の面でも高い能力を見せた。


6試合目:3/11 【J1第4節】 vs神戸戦

チームが自信を取り戻し、最終的に岩政監督代行ラストマッチとなったのがこの試合


この試合ではまたも前節からフォーメーションを変更。

パスを繋いで主導権を握りにいくという相手のやり方に対し、設計された前からのプレスで乱れを誘い、それによって相手の呼吸が整うまでの間に先制点を奪い切る。理想的な立ち上がりを見せた。

これまでのチャレンジは自分達が上手く機能するための色が強かったものの、この試合ではより相手に合わせる要素の強い準備が窺えた。

年間を通して様々な相手と戦い勝っていく必要があるリーグ戦において、試合ごとによって戦い方を変える対応力や引き出しの多さは、優勝する上で必要不可欠になってくる。

そういった面でもチームとしての成長を見せてきた。
チームは更なる勢いを以って、新監督の指揮へ移れる形となった


まとめ

細かい話はそれぞれの試合ごとに書いてあるとして、超ざっくり繋げると

水戸戦で余白に対する現状の完成度とそれによる迷いを確認し、
ガンバ戦でそれを踏まえて提示する領域を広げて仕上げに成功。
川崎戦で王者との完成度の差を見せつけられ自信を失い、
セレッソ戦で大幅にメンバーが変わったことで再び迷いが生まれるも、
柏戦でそれらを踏まえた修正で余白を調整しエネルギーを取り戻し、
神戸戦で相手に合わせた設計を見せチームとしての前進を示す。

こんな感じ。


結果でいえば、リーグ戦は3勝1敗。
4試合で積み上げた勝ち点は9で、失った勝ち点は3。

新しい鹿島としてチームを生まれ変わらせ、
負傷者やコロナに悩まされつつ、
新監督にスムーズにバトンタッチするために様々な戦い方を試しながらのこの結果。素晴らしい働きを見せてくれた。


今日新監督が合流した。凄く良い雰囲気だった。
これが現在〇連敗中だったとしたら、どうだったろう。
本当に大きな仕事をしてくれたと思う。



ありがとう岩政監督代行。
よろしく岩政コーチ。

ヴァイラーの理想と選手のリアルのその間を、ロジックで繋ぎ合わせてくれるのを期待してます。

感謝。