【J1第2節】vs川崎戦 2022鹿島アントラーズ 3歩目

負け。0-2。悔しいね。


鹿島がここ数年「あの頃の姿を取り戻そう」と過去にベクトルを向けて試行錯誤していた間に、その間リーグのトップを走り続けてたチームとの差はこんなにも広がっていたんだな、というのが素直な感想。



川崎はマリノス相手に4失点を喫し負けてからわずか中2日での今日。ジェジエウ,車屋とCBに負傷者が続いており、日程面等々の考慮もあってかレアンドロダミアンなどはベンチスタート。

一方鹿島は6年ぶりの開幕戦勝利を収めてからの中6日。主力に離脱者はおらず、新しいサッカーを形にし結果を残したことで勢いもあった。
新生鹿島として、ホームで2万5000人越えの観客の前で王者川崎を倒し、スタートダッシュを決めるためのシチュエーションとしては申し分なかった。

これだけ状況が整っていても、0-2。
レフェリング等々の外的要因が大きく絡むことなくこのスコアで負けてしまえば、それは「差」という言葉以外で表現しようがない。

本当に悔しいけど、これが現状。


とはいえこのチームは生まれ変わったばかり。1ヵ月で差を埋められなかったというだけであって、必要以上に悲観する必要はない。

また前を向き、やれる事,やれない事,やりたい事の整理をして、1歩ずつ、自分達を信じて前へ進んでいく。
これを繰り返してその差を少しづつ埋めていく。
そして我々はそれを信じて応援していく。

近道なんてなくて、だからこそ挑んで堪えて立ち上がってを繰り返し、強くなって掴む「1番」にそれだけの価値があるわけだから。


 っていう結論を先に出しておきます。いつも疲れて最後の総括めちゃくちゃ適当だから。


試合の話

スターティングメンバーは以下の通り。

画像1

川崎はいつもの4-1-2-3。
日程面もありCFに知念を、左WGに小林を起用。ただ左SBに佐々木を起用してきた要因は登里の疲労を考慮してのものなのか、それとも前節守備で後手を踏むシーンが多かったパフォーマンス面を踏まえての鹿島に合わせての起用なのかはわからない。まぁ少なからずどちらも作用はしてると思う。

対して鹿島は前節の前半に上手く機能していた4-4-2ではなく、優磨を左SHに、荒木をトップ下に持ってくる4-2-3-1でスタート。

これに関しては予想通りで、守備局面での相手のアンカー(橘田)監視という重要な役割や荒木のトップ下適正、そして優磨vs相手SBの構図の作りやすさを考えるとやはりかという感じ。


前半

鹿島のざっくりとした狙いとしては、まず守備局面においては、川崎のアンカーからの全方位展開をトップ下配置で消し、サイドを限定させたうえで狭く守ること。
そして前から追い過ぎた結果ターンや細かいパスでそれを外され一気にスピードアップされるという状況を避けるため、単騎で無謀に追いかけ回すことはせず我慢してブロック形成を優先させること。

そして攻撃面。
川崎はIHの位置で守備時の重心が決まってくるが、鹿島としてはそれに応じて繋ぎとロングボールを使い分けられるのが理想。
川崎はWGが背中で攻撃側SBを消しながら内側に追い込み、中でIHが絡めとるというプレスを採用しているが、IHはこの際高い位置まで出てくる必要があり背後を広く開ける形になるため、鹿島としては空いたその場所をロングボール(→落とし)で使いたい。

画像2


 

そしてこれを嫌がりIHが高い位置まで出て来なくなれば、しっかりと繋いで、CHを経由し空いている外のSBに叩き、安全に着実に前進できるようになる。

画像3

この2つが使い分けられれば、川崎は自陣に人数を揃える事を優先させるため前からのプレスを止めて守備ラインを下げ、鹿島が押し込んで試合のペースを握ることができる。


 守備では相手のアンカーを潰し、攻撃では繋ぎとロングボールを使い分けて相手を押し下げる。ここが鹿島が主導権を握るための肝となっていた。


キック

鹿島ボールでキックオフ。
川崎はさっそくIHであるチャナティップと脇坂が高い位置をとり鹿島の繋ぎを潰しに来るが、それを見て関川が最前線の優磨宛てにロングボールを蹴り出す。
そして脇坂の空けた背後のスペースでその落としを受けるため、トップ下の荒木とSBの安西がそこにすかさずポジショニング。
結果前を向いて安西が回収し、押し込むことに成功。

極めてスムーズだった。
相手を見て、それに応じて組織としてどうするかが整理されてる。やれるぞ。今日は今までの鹿島とは違う。開始30秒で期待がふくらむ。

そう思った矢先、前半1分で関川が自陣深くで知念にボールを奪われ、川崎先制。


これをチームとしてどう扱うか?は、凄く難しい。


 ただ個人的には、これを「設計」としての欠陥と捉えるのは状況的にだいぶ無理があると思う。

自陣の最深部で、後ろに空いているGKが居て、真横にも空いているミンテが居て。パスの出し手である樋口はそのミンテへのパスを指示していて、最悪外にも出せる状況。
トラップをする余裕もありながら、選んだのが知念の足が届き得る樋口へのリターンパスというチョイスだったのは、正直個人単位のミスと捉えるのが自然だ。


しかしトレーニングの様子等々を見ておらず、情報のない我々にとって、前節前半で負傷交代していた関川のコンディションがこの時点でどれほど戻っていたのかはわからない。

そうなれば個人単位の話ではなくなる。コンディションの見極めという監督(代行)の判断の部分が要素として絡んでくることになる。
加えて、今季のこれまでの3試合、いずれもCBのコンビは関川とミンテの2人だったが、左右の関係は
【水戸戦】ミンテ-関川
【G大阪戦】関川-ミンテ
【川崎戦】ミンテ-関川
と毎試合入れ替わっている。
この采配も選手が判断に迷った理由の1つとして作用しているかもしれない。

さらに話を広げれば、関川のコンディションが万全ではないという前提条件のうえで、それでも関川を使わざるを得ない状況だったとも言えるわけで。
もし仮に、全幅の信頼を寄せられる控えCBの存在があれば、リスクを承知で関川を起用することを選ばなかったかもしれない。
そうなれば今度は、今季のCBの構成を関川,ミンテ,林,ブエノの4人で編成したフロントの判断の話も関わってくる。




 確かにこの試合は、長いリーグ戦のなかの1試合であり、さらにそのなかの1プレーでしかない。

ただ、状況的に色々な物が乗っていた。多く乗り過ぎていた。

鹿島しか成し得ていないリーグ3連覇を今年狙う川崎が相手。
優勝を狙う以上絶対に落とせない王者との6ptゲーム。
新しい鹿島として生まれ変わった事を証明するために真価が問われる機会。
コロナによる観客数制限がなくなって1発目の試合で、クラブも大々的に無料招待を仕掛け、普段スタジアムに来ない層も数多く集まった大事な試合。


個人的にはこれを「授業料」と評して安易に処理するには高すぎる。
色んな要素を含んでいたこのゲームのその後を難しくさせる、重い失点だったと思う。


 と同時に、それと同じくらい、いやそれ以上に思うのは、「1人のミスをこんなにも重くさせない強さが欲しい」ということ。
試合が終わった時に勝ってればそれで良いんだから。
結局は勝てない弱さがチームとしてあって、そこで初めてなぜ勝てなかったのか?という思考になるわけで。


犬飼と町田が居なくなって、急に新加入の選手とCBコンビ組むことになって。
DFリーダー任されて、コンディション万全じゃない状態でも出場して。
そんな21歳の1ミスをこんなに重いモノにさせないためにも、強くなりたいなと。チームとして負けない強さがあれば。

鹿島アントラーズに居てくれる選手は誰も責めたくないし、責められて欲しくないからさ。だから鹿島アントラーズが強くなるのを応援するしかないのよ結局は。



0-1で試合再開。
あくまで開始早々なわけで、逆にいえば前半2分の失点は、88分逆転のために点を取り返すための猶予があるとも言える。

しかしこの試合の肝は前述の通り、繋ぎとロングボールの使い分け。どちらか一方だけではIHが高さの設定に迷わないので、あくまで使い分ける必要があった。

しかし失点の形が形だっただけにこれ以降、少なくとも前半の間は最後方からの繋ぎに関しては弱気な印象を隠し切れなかった。
相手の間で受けてのターンや、強くて速いパス、その他諸々に積極性が出せない。安定した、悪く言えば逃げの選択肢が続く。
こうなれば悪循環。鹿島が勇気を失くすのと反比例して川崎は自分達のプレスに自信が出てくる。

それが勢いとなり、ペースとなり、主導権となる。


機能的なところでいえば、鹿島の前半のビルドアップはSBを完全に消されてしまったのがなによりも苦しかった。
ビルドアップ時の構図は本来鹿島の6人(4DF+2CH)vs川崎の5人(3FW+2IH)のはずだが、右WG家長が安西を背中で消しながら追い、左WGの小林は逆にあえてそこまで追わずに「常本ならボールが入ってから寄せればそれで良い」というスタンスを取ってきた。

画像4

これが前半の土居の機能不全に繋がり、鹿島の前進が滞った原因となった。

画像5


常本を多少空けておいてもそこから攻撃を作られる怖さがない、という判断により小林悠はプレス位置を高くとる必要がなく、それにより本来は降りてハーフスペースで浮くはずの土居へのパスコースを消すことに成功。

もしかしたら実状は「常本がなぜか意識的に高めの位置を取ってるからそうなった」のかもしれないが、それでも結果的に土居と近付きすぎて小林が2人分見るのを助けるだけになってしまっており、そこも含めて応用力に欠けていた。


前半の鹿島の攻撃は、左を家長の外切りプレスによって断たれ、右は小林の低い立ち位置によって常本も土居も活きず。
結果的に左サイドの奥にいる優磨へのロングボール一択となってしまった。

こうなれば川崎は守りやすい。山根と山村が最低限優磨にやられ続けずに踏ん張るという条件付きだが、そこさえ達成できれば鹿島の攻撃は機能しない。
荒木や優磨が焦れて降りて行けば確かに人数が余るので多少ボールは循環するが、それは当然、最前線から荒木や優磨が居なくなることを意味する。攻撃に深さが出せず、タメが作れないためボールを持てない時間が続く。


そしてボール保持局面でペースを握られ、さらにスコアもビハインドともなれば、徐々にボール非保持局面でも呼吸が乱れ始める。
本来、全体が連動してない状態でのプレスは我慢のはずだが、焦りから単独でのボール奪取を狙うシーンが増える。

そうなれば川崎の土俵。適切な距離感と高い技術で丁寧に鹿島の寄せを一人ずつ外していき、空いた所から前を向いてスピードアップされ、手がつけられなくなる。

加えて撤退後の守備でも不完全な所を川崎に付かれてしまった。
守備の狙いとして、「サイドを限定して狭く守る」というテーマがあったものの、ボールサイドとは逆のSHが中央の蓋として機能するための絞りが甘く、中央を経由して広々とした逆サイドに展開されるシーンが数多く見られた。
これでは狭さは創出できない。ここも細かい詰めの甘さが現れていた。


前半のうちにCKからも失点しスコアは0-2となったが、その本質は決して単なる事故として扱うべきものではないだろう。
あれだけ押し込み、試行回数を重ねたうえでの得点であれば、脈略として考えてしかるべき。たまたま形となったのがセットプレーだったというだけの話だ。


反比例していく自信と、それに伴った機能不全。
そしてその状況に対する焦りとディティールの甘さが出てしまった前半は、完全にワンサイドゲーム。

明白な「差」をしっかり提示される形となった。



後半

ハーフタイムのタイミングで、鹿島は2人の選手を交代。
関川に代えて健斗を、土居に代えて中村を投入した。

これにより鹿島は布陣を変更。中盤を菱形にする以下の形をとった。

画像6



言わずもがな、こうなれば川崎のミッションは「残りの45分で2点のリードを守り切ること」になっているわけで、こと主導権の奪い合いについては無理をせず撤退の色を強めた点は間違いなく作用はしていた。がしかし、それでも鹿島は布陣変更により機能的な改善を見せた。


最大のポイントは繋ぎの部分。
ビルドアップの時点で川崎の両WGがSBを消す事でサイドの呼吸が止まり、酸素が行き渡っていなかったSHというポジションを撤廃。
左サイドの奥を取るしかなかった優磨を最初からFWとし、上手く前を向けていなかったCBとCHの間に中村が入る。


ピッチ上には11人居るはずなのに11人分が機能せず、握れなかったボールが配置の修正でようやく握れるようになった。
繋ぎでは中村というプラスワンが、ロングボールでは優磨一択から優磨or上田という2FWへの選択肢の増加が効きはじめ、「前半通りのプレスでは同じようにハマらない」と判断した川崎は守備ラインを下げ、ようやく鹿島のペースに。


2点というビハインドと、45分という時間を費やし、この日初めて鹿島は川崎を押し込んだ。思い描いていた状況を体現した。


この変更により一気に勢いをつけ、後半開始5分、樋口がゴールポストを叩く。


正直、3点を奪い返して逆転するためのこの試合唯一の勝ち筋はここだったように感じる。
システム変更により川崎が慌てたこの後半頭数分。

逆にうえばここしか勝ち筋を見いだせなかった。
見出させてもらえなかった。そういう試合だった。


この後鹿島は広瀬、エヴェラウド、染野を投入。
特に広瀬に関してはピッチに投入されてから「SBから始まる攻撃」を創り出したという点で、この試合における大きな意味を持たせる活躍を見せていたと個人的には感じる。


ただ1点が遠く。最後まで川崎に「強い側」のサッカーをされて試合終了。


最後まで川崎の持つ条件的なマージンを脅かす事はできなかった。


まとめ

過密日程、2点、45分、ハマるシステム変更、これらの条件が揃って初めて思い描いてた展開に。

90分、その差をまじまじと提示されたような感覚でした。
悔しい。めちゃくちゃ悔しい。

勝てたら本当に大きかった。


ただ我々新生鹿島はまだ生後1ヵ月、いやなんならヴァイラー鹿島に関してはまだ生後0日なわけで。
優磨,健斗,安西らの1996年生まれ組が中心で、DFリーダーは関川。30歳以上なのはGKスンテのみという極めて若いチーム。

まだまだ悲観する状況ではない。

開幕戦から話に上がっていたSBとSHの機能の所も、明確に課題として出せた。
これを修正すればまた一つ良いサッカーになる。


また強い気持ちで立ち上がって、考えて、挑んで、強くなっていく。
今回見せつけられた差を埋めるためにも、そして誰かの1つのミスも支えられるようになるためにも、少しづつ強くなっていく。

そしてそれを応援する。これに尽きる。


以上