見出し画像

【近況報告】イキウメ『天の敵』観劇してきました!

こんにちわ。初めまして。
Twitterとココナラを中心にイラストレーターをしております。菓子蔵かると申します。

先週は『神々の山嶺』を鑑賞。
そして同じ曜日の今週『天の敵』を観劇してきました。

最近息をするように名作を見ているような気がします。
もうすぐ死ぬんか。

下北沢『本多劇場』周辺

いつもの映画とは違って上映が夕方でしたので、いつものような、早起きはしなくてよかったです。

劇場は下北沢の「本多劇場」

下北沢の町自体は、リニューアルが進み、もう私の知っている街ではありませんが。
本多劇場は今もなおその佇まいでした。安心感…

本多劇場

開場の18:00まで暇だったので、古着の都と言われる(言われとらんが?)下北沢を散策しました。

早く本題に入りたいので、この辺はざっとね。

こちらが特に気に入った雑貨屋さんです(古着屋じゃないんかい)

店の中でも一段輝いていたハンドメイドアクセサリは高くて買えませんでしたが、アップリケのような質感の栞を3つ購入。
友人へのプレゼントのストックに加えます。

ペッシュで購入した栞(一枚350円)

お昼も下北沢で食べました。

店内は天井の高い2段構造になっています。
靴を脱いでハンモックでくつろいだら疲れも吹っ飛ぶのでおすすめです。

一日3食限定のオムライスを注文。
トマトやキノコなど、そのまま食べているかのようなイキイキとした料理で美味しかったです。
またいきたいくらい。

さて、辺りも暗くなり、お時間もよろしくなってきましたので、劇場に向かいましょう。

『天の敵』あらすじ

2017年、ジャーナリストの寺泊満は、菜食の人気料理家。橋本和夫に取材を申し込む。
きっかけは妻の優子だった。
寺泊は難病を抱えており、裕子は彼の為に橋本の提唱する食餌療法を学んでいた。
当の寺泊は健康志向とは真逆な人間だったが、薬学や健康食品詐欺。偽医療の取材経験も多く興味があった。
優子がのめり込む橋本を調べていくうちに、戦前に独自の食餌療法を確立した長谷川卯太郎という医師を知る。
寺泊はこの長谷川と橋本の容姿がよく似ていたことに興味を持ち、ある仮説を立てて取材に望んだ。
寺泊は、プロフィールに謎の多い橋本は長谷川卯太郎の孫で、菜食のルーツはそこにあると考えた。
橋本はそれを聞いて否定した。
実は橋本は偽名で、自分は長谷川卯太郎本人だと言う。
本当なら122歳になる。
信じない寺泊に、橋本は19世紀から始まる、自分の数奇な人生を語り始める。
橋本の長寿の秘密は食事にあった。
不労の健康法は寺泊の病をも治す可能性がある。
しかしのその食餌療法は、明らかに人の道を外れていた。

『天の敵』会場パンフレットより

実は、私が今引用したこのあらすじは、ウェブ上からコピーペーストしたのではないのです。
ウェブを漁れば『天の敵』のあらすじは読めるのですが、私がなぜパンフレットの全文を打ち込んでまで引用したのか。

この演劇で感動した人ならこの感動がわかるでしょう。

全ては、引用最後の「人の道を外れて」のところです。

ウェブではこの表現はされていない。

考察・感想

考察を始めていきますが、まず初めに。
私は役者でもなければ、それ関連の知識が一切ないただのしがないイラストレーターです。

作品を作ると言うこと以外にこの演劇に対して胸を張れることがありませんが。
上から目線の考察をお許しくださいませ。

(よし、詫び入れた!これで思う存分考察するぞ!)

以下ネタバレがあります。

開演

三秒クッキングのための調理器具の配置が始まりました。
小道具が音もなく、滑るように移動します。

乾いた、しかし滑らかな、演者の美しい動きに釘付けです。

そこから、新しく登場した女性の、甲高い声で会場のテンションがグインっと上がります。
炒め物をご飯に混ぜるころには、会場がごぼうと土の香りに満たされます(多分、いいごぼうを使っています)

開場直前に読んだあらすじから、相当重いものをイメージして身構えていたので、このテンションの上がりようには気が緩みましたね。

身構えていたのが溶けて、話に入っていきやすくなりました。

吐き気がするほどの臨場感

うっぷ…

これは、長谷川が初め飲血をするシーン。
思わず席を立ちたくなりました。

血液のドロドロした口当たり、生臭く、鼻から抜ける鉄の香り。

それに合わせて、吐き気を誘う”何か”が伝染してきました。
それは、長谷川の、非人道的なことをしたことへの罪悪感だったかもしれません。

また、血を吐くシーンから人間の神秘のようなものも感じました。

血を吐き、急速に老化し、死ぬ妻。
魔法のない世界で、こんな魔法みたいなことが起こっている。
人間の世界の、体の、神秘を感じました。

大迫力の演技でした!

終わり方

寺泊(ジャーナリスト)の妻が「大丈夫、大丈夫…」と夫の頭を撫でて終わります。

私はここに違和感を覚えました。
物語として面白いのは、この後寺泊が長谷川に教えてもらった療法で飲血を行い、長谷川の二の舞になることです。

しかしこれでは、まるでハッピーエンドではないですか!!

そんなの面白くない!

寺泊が冷蔵庫を開けるシーンで終わらせて、観客に、その後寺泊が飲血をしたのか、委ねるのでもよかったのに、この終わり方は何かあるのでは?とおもった。
(回想シーンで医者からもらっていた血液が、ラスト、冷蔵庫にまだ入っていたと言う伏線回収素晴らしかったです)

だからと言うわけではないのですが、私はこの妻の「大丈夫、大丈夫…」と言うセリフをこう言うふうに解釈しました。

おそらく妻も助手から全て聞いていて、寺泊(夫)に血の提供を始めるつもりでいる。

妻は長谷川にならい、ベジタリアンになりましたよね。
それも”夫を太陽を克服した不老不死にするため”と言う本当の理由があったように思えます。

この考察は我ながら好きです。
『天の敵』のラストの「大丈夫」と言う言葉には、強い言霊が込められています。こらから禁忌を犯すような、強い感情です。
静かな独り言ですが、それは強く重たい言霊なのです。

飲血をして、どうなるのかを知っていても、寺泊は生きることを選ぶかもしれません。人間は、ずっと向こうの大金より、手元にある風船を愛おしく思うものです。
(例えがちょっと変ですが)

『天の敵』とは

これは自分で考察する前にいろんな方の考察を読みました。

結論から言うと、私は天の敵は長谷川のことだと思います。
不老不死になった長谷川ではありません、自死を選んだ長谷川です。

確かに、不老不死になった長谷川は、食物連鎖から外され、太陽からも嫌われるまさに『天の敵』です。
しかし、太陽を克服したじゃないですか。天は、長谷川を許したんですよ。

でも長谷川は自死を選んだ。他人の不老不死も連れて。そして、寺泊に自分と同じ道を歩ませようとしている。
そこで本当に『天の敵』と言う立場が確立したのではないでしょうか?

自死を罪と捉えるなら、誰に申し訳ないのでしょう?
母でも父でもなく、天だとすれば。そしてそれは、天にはどうしようもできないことなのです。

込められたメッセージ

他の方の考察を読んで、多くの方が「人は生まれながらに自由、でも鎖に繋がれている」と言う台本に物語の核心を感じていました。

「人は生まれながらに自由、でも鎖に繋がれている」

『天の敵』

私もこのセリフがこの物語の核心かと思います。
他にもこんなセリフがありました。

「食うのは生き物の仕事、でも食われるのも生き物の仕事です」

『天の敵』

食物連鎖に繋がれている上での暮らしを人間は”自由”と読んでいるのです。
しかし本当の自由の意味でいくと、不老不死こそ”自由”なのではないでしょうか。

まとめ

イキウメに出会ったのは、私がまだ大学生の時。
美術大学生ですが、バイトに通学に…忙しくて。大好きなインテリアへの興味もそれどころじゃなくなっていた時です。

深夜にふとテレビをつけたら、イキウメ『聖地x』が放送されていたのです。
その劇団の世界観に数分で魅了され、途中からですが録画をしました。
何度も何度も、序盤のないビデオを再生しました。

今でも覚えています。

それから数年。

私はまだイキウメに魅了されています。

イキウメに出会えたことを、感謝します。

今日も1日何でもない日が素敵でありますように。

マキマさんと写真を撮る菓子蔵


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?