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映画でしかできない体験をキメよう『ドクターストレンジ』

今作は魔法使いを描いた作品なのですが、ハリーポッターのような西洋風の魔法ではなく、斬新でいてかっこいい魔法使い像を作り上げています。注目すべきは常にCGが使われ、目まぐるしく状況が変化し続けるアクションシーン。『マイティ・ソー』シリーズでは神話のような世界をCGで描いていましたが、今回はそれとは真逆の、私たちが全く想像できなかった世界をCGで作っています。この作品は特に映画でしか体験できないことが詰まっていると感じました。

傲慢な医者が至高の魔術師へ

ドクター・ストレンジことスティーヴン・ストレンジは天才脳外科医でした。調子に乗って手術中に曲名当てクイズもやりますし、実力主義の医者の世界のため同僚にもガンガン意見します。しかしある日不慮の事故(山道でわき見運転)で両腕の自由を失ってしまいます。あらゆる手を尽くしても両手は治らず、結局ネパールの山奥に行ったら奇跡的に歩けるようになったという嘘のような話にすがることになります。

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正直ネパールに行くまでのストレンジの自業自得感はすごいですし、怪我をしても面倒を見ていてくれた恋人にひどいことを言っている姿は応援できたものではありませんでした。

しかし常識をどんどん覆されていくことに狼狽えたり、医者として相手を傷付けることにショックを受けたり、すぐに感情を表に出すのはある意味すごく主人公らしく、だんだんストレンジのことが好きになっていきます。

意外にも王道な作品

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傲慢な性格ではありますが本当は能力のある人物なところ、口が立ち皮肉を込めたジョークを言うところはかつてのトニー・スタークを思わせました。頂点から一気にどん底へ落ちる点も『アイアンマン』のスタークそっくり。どちらも調子に乗っているからこそ落差が際立っています。

修行するまでの境遇こそ違いますが、自分の視野を広げられて力に目覚め、戦士となり師匠の意思を継ぐという流れは『スターウォーズ』のルーク・スカイウォーカーを思わせます。そういった意味ではMCUの中でも特に伝統的な流れに沿ったヒーロー作品と言えるかもしれません。

まるで見る麻薬

まず冒頭から繰り広げられる、空間を操って戦うアクションに度肝を抜かれます。上下左右天地が万華鏡のように入れ替わり続ける世界は『インセプション』(2010)の街が反り立って迫ってくるワンシーンや、『トレインスポッティング』(1996)や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)で麻薬をキメたときのような、物理法則がねじ曲がった世界のようです。日常生活を送っているだけでは体験できない、CGでしか表現できない世界には興奮します。

精神的な攻撃を仕掛けるという表現ではなく、それが物理的に作用してアクションとして表現されているのが視覚的に面白く、癖になりそうです。

他にもドクター・ストレンジは幽体になって戦ったりと、アベンジャーズたちのような通常の世界での戦闘力とは別ベクトルの力を持っているのでクロスオーバーするのも楽しみになりました。

まとめ

ネパールの山奥の寺院と魔術のミスマッチングさや、魔法で負った傷を先進医療で治療させるといったアンバランスさはMCUらしい大胆な発想だと思いました。魔術を使うときの印を結ぶような動きもスタイリッシュで、マネしたくなる動きはヒーロー映画としてもポイントが高い。

監督のスコット・デリクソンが監督を務めた作品は他にホラーやサスペンス映画ばかりですが『ドクター・ストレンジ』はとてもヒーロー映画然としているのが面白いなと思いました。

マッツ・ミケルセン演じるカエシリウスの、一目見ただけで悪役だとわかるビジュアルも秀逸。この作品だけで失うには惜しいキャストです。

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