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ヒーローの責任の所在とは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』

監督は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のルッソ兄弟。相変わらずダークな世界観とアクションシーンのメリハリが素晴らしかったです。


先送りにしてきた問題

MCUは現代にヒーローが存在することをリアルに描いてきましたが、その責任の所在という問題に関しては先送りにしてきました。ことのはじまりは『アイアンマン』(2008)のラストでスタークが「私はアイアンマンだ」といったことでしょうか。これによってヒーローが表立って非難されたり、責任を負うというストーリーにつながりました。

『アイアンマン2』(2010)では個人が軍事レベルの武力を持つことに対して聴聞会が開かれました。スタークはアイアンマンスーツの権利を国に渡せと言われても「他国に製造技術がないため国に権利を渡す必要はない」と主張しました。(結果的に国に技術は渡りウォーマシンという形になりますが)

しかしすぐに国家間の問題ではなくなり、『アベンジャーズ』(2012)ではシールド(S.H.I.E.L.D.戦略国土調停補強配備局)が国際平和維持組織として登場し、超人的な能力を持つものを集めてアベンジャーズを結成。組織が武力行使の責任を担うことになります。ただそれも『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(2014)でシールド内部にヒドラという秘密結社が巣食っていたことが露見し事実上内部から瓦解。アベンジャーズのみが自警団に近い形で独立しました。

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『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)ではもはやアベンジャーズがきっかけで地球が滅亡寸前になっています。『アントマン』(2015)内にもソコヴィアの戦い(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』)を糾弾するような新聞記事やセリフがありました。「アベンジャーズが争いを呼んでいる」と批判されてもおかしくない状況で、ついに作品内で本格的に責任の所在について取り上げられました。

具体的には、アベンジャーズに対して「ソコヴィア協定」が提案されました。アベンジャーズは国連委員会の監視下に置かれ、認められた時だけ出動するというものです。これに対して賛成派(協定に署名する)がアイアンマン、ウォーマシン、ヴィジョン、ブラックウィドウ。反対派はキャプテン、ファルコン、ワンダ。

これにウィンターソルジャーをめぐる争いが絡み、戦いに発展しました。

どちらの言い分もわかる

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スタークは、無秩序に活動を行うのは悪党に等しいと主張します。『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』で平和維持のためにウルトロンを作ろうとして失敗し、むしろ世界を破滅寸前に追い込んだことで責任感を大いに感じているのでしょう。『アイアンマン3』で見せた精神的な弱さもあります。

対してキャプテンは、むしろ協定は責任転嫁であり、自分たちの意思で行動すべきだと主張しました。「国連の命令があれば行くべきでないところへ行けと命じられるかもしれない」と、誠実な性格がゆえに自分の望まない戦いを恐れています。

スタークは現実主義的、キャプテンは理想主義的ですが、これまで作品を通してそれぞれを見てきただけにどちらの言い分も納得できます。最終的に二人が仲違いしてしまうのも人間としての芯があってのことで、それぞれキャラクターとしてとても大事にされていることがわかります。

存在感が半端なかったスパイダーマン&ブラックパンサー

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今回スパイダーマンとブラックパンサーがそれぞれ初登場しました。スパイダーマンはシナリオの本筋には関係なく出演時間も短かったもののインパクトはすさまじかったです。オタク口調で戦闘中でも早口で喋ったり、MCUにもそれまでのスパイダーマン作品にもないキャラクター。ピーターのことが一気に好きになったと同時に、スタークやキャプテンたちが指導者としての側に移行しつつあることも感じました。

ブラックパンサーは少し前の作品から名前だけ登場していたワカンダという架空の国の王として登場。ただ復讐だけに囚われるのではなく、最後は犯人を殺さず逮捕するという思慮深い王としての存在感も感じました。

まとめ

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結果的に作品としての結論を出すことはなく、ヒーロー同士の対立がメインになっていましたが、逆にキャラクターの人間性が大事にされていることも感じました。情勢に流されがちなソーや、内紛のために簡単に利用されがちなハルクを出演させなかったのはとてもいい判断だと思いました。

アントマンが巨大化してからは「これ仮面ライダーのお正月映画の展開だ!」とも思ってしまいましたが、さすがMCUだけに盛り上がりの作り方や緩急のつけ方が見事でした。

スパイダーマン&ブラックパンサーの登場も含め、今後の作品がさらに楽しみになりました。


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