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良客ムーブ

私は大学生の頃、色々なアルバイトを経験した。コンビニから飲食店、アパレルまで売るものは色々だがベースは同じ接客業。お客様の希望を聞き取り、満足のいく商品をお買い求めいただくためのサポートをするのだ。


アルバイトを始めて気づいたことがある。「今まで生きてきた私は無意識にお店で働く店員たちのことをNPCだと思っていた」ということ。店員さんはお店の一部、サービスを提供してくれるモジュールだと幼い私は考えていた。もっと正確に言えば考えてすらいなかったわけだが。とにかく、自ら労働者側に回ってみて初めて「あの店員さんだって私と同じプレイヤーキャラなんだ」とはっと目が覚めたように気づいたのである。当たり前のことなのだが、これこそまさに「体感した」と言えるのではなかろうか。


さて、店員さんがNPCではないとするとどういうことが起こるかというと「嫌な客は普通に嫌」というまたもや至極当たり前なことが言える。客と店員という問題ではなく、人と人の問題であるから、嫌な人は店員だろうが何だろうが誰からも嫌がられるのは至極当然である。さすらいのアルバイターだった私から今現在アルバイト先を探しているどこかの誰かにアドバイスするとすれば、こういうクソ客は客単価が安い店だと遭遇する可能性が上がるので注意してほしい。ただ、客単価が安い店はそれだけ求められるサービスの質も高くはないので気楽に小銭だけ稼げればいいやという考え方ならば全然アリである。それぞれ自分に合った職場を見つけてほしい。


嫌な話ばかりしたがもちろん逆もある。つまり、良客だっているのである。「このお客様の求める商品をこの店内からなんとしても見つけ出して差し上げたい。気持ちよくお買い物をして、ホクホクの気持ちで帰路についていただきたい」と思わせてくれるようなお客様の存在。まあここまでの良客は稀だが「またお越しくださいませ」と心の底から笑顔で言える良客様はちゃんといて、ありがたいなあと思いながら接客をするのだ。そしてそのあとバックヤードで「先ほどのお客様、良客でした」「素晴らしい推せる」などと同僚とにこにこするのである。


そして、今。
私はお店を利用するとき必ず「良客に思われたい」と必死になってしまう。長くてだるい労働時間、笑顔で接客してくれる彼・彼女らを少しでもねぎらいたい。ありがとう、お疲れさまの気持ちを良客であることでお返ししたい。人間と人間のやりとりなのだから、互いに気持ちよくやりとりできたほうがよいに決まっている。聞かれたらちゃんと聞き取れる声量で「袋は結構です」と言う。ポイントカードは決済を切る前に出す。目を見て「ありがとうございます」と明るく言う。些細で当たり前のことだが、店員相手だとなぜか当たり前のことができないクソ客の皆さんを私の良客オーラで駆逐するのだ。そんな気概だ。


私のまわりには同じく「自分が店員のとき、良客にあたると嬉しいから」という理由で良客ムーブをする友人がたくさんいる。というか、それしかいない。なのでクソ客の皆さんはどこから生えてきているのか甚だ疑問ではあるが、いつか我々の良客ムーブでこの世界を包み込み「これがスタンダード」という空気を作っていきたい所存である。それに、こちらが良客でいれば店員さんも良接客をしてくれることがかなり高確率である。つまり、ポジティブ連鎖する(by.つんく♂)のだ。良客が良接客を生み、良接客が良客を生む。そうやって生きていきたいものですね。


ちなみに私は接客中、おばちゃまから「親切にしてくれたから、これあげるわ~」とランチパックをもらったことがある。美味しくいただきました、おばあちゃま。是非、あなたも心と体力に余裕があるときにでも良客ムーブを試してみてほしい。ランチパックが貰えるかどうかは保証はできないがオススメである。

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