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高校生の恋愛なんて多分大したことない

中学生の頃、大好きな人がいた。
本気で恋をしていた。

あの人は国語の先生であった。

同性の、先生──────────

叶うはずもない、結末が分かりきった恋だった。

今、付き合っている人がいる。
ちゃんと、大切に想っている。

彼は1つ歳上の男の子である。

僕にとって、対照的とも言えるような2人だと思った。

今の付き合っている彼とは、インターネット上で出逢った。
大人たちは皆、声を揃えて「危ないからやめなさい」と言うような出逢い方だと思う。
でも、言ってしまえば今はもうこんなの当たり前の時代だ。
周りにもたくさんいる。

ある配信アプリで彼の声を耳にし、惚れた。
そこから何故か自分が抱えている色んなことを吐露してしまい、それを受け止めて支えてくれた彼を好きだと思った。
自分の気持ちに名前がついてからは早かった。
すぐに告白をしてOKの返事を貰い、今に至る。
もうすぐ1年と半年の付き合いになる。

中学時代に大好きだったあの人は、先述した通り国語の先生だった。
中学2年生の時に1年間だけ国語を教わった。
3年生の時は教科担当の先生が変わってしまったが、委員会や何かの実行委員などで理由を取り付け、関わりを絶たないように努めていた。
身長は僕より少し高くて、ショートヘアが良く似合う、ボーイッシュな先生だった。
何より、趣味が一緒だったことが嬉しかった。
僕とあの人はお互いに「邦楽ロック」を聴くのが好きだった。ライブにも頻繁に行っているという話をよく聞かせてもらった。
好きなバンドを教えて貰っては、MVを探したりCDを探したりした。
あの人と同じ世界を見ている感覚がどうしようもなく心地よかった。
僕の学校では、邦楽ロックを好んで聴いている人はあまりいなかったから、それもまた優越感を生んで、ますますのめり込んでいった。
そういえば、3年生の時は交換ノートをしていた。
断られるかな、とビクビクしながら提案してみたら案外あっさりOKが出たから驚いたが嬉しかった。
教師という職業が本当に忙しいのは分かっていたけど、それでも催促してしまいたくなるほどに先生がノートを書いてくれるペースはめちゃくちゃ遅かった(笑)
それでも、部活のことなどで悩んでいることを話すといろいろアドバイスを書いてくれたり、とある弁論大会に出てなんの結果も残せず悔しくて泣いた時には慰めるための言葉を沢山くれたりした。
半分も埋まらなかったスポンジボブの表紙のノートは、それでも大切な大切な宝物だ。

……と、まあこんな具合に今でもいろいろな事がひとつひとつ鮮明に思い出せるくらい、本気で恋をしていた。大好きだった。
あれから言うほど年月は経っていないけど、それでも子供だなぁ、と思えるくらい幼いながらも、拙くも、全力の恋だった。

……それで終わっていたら、
美しい、ずっと胸の奥にしまっておきたいお守りのような思い出でよかったのだ。

残念ながらその恋を未だに引き摺っていることを最近になって、文字通り痛感している。

今の彼のことは大切に思っている。
本当に、彼がいないと生きていけないな、と思うことが今までに何度もあったし、今もそう思っている。

でも、突然怖くなる瞬間がある。

「本当に彼でなくてはいけないのか?」

そんな最低な声が自分の中のどこかから発せられて頭を揺らすのだ。

僕は「彼自身」ではなく、「恋人」という存在に依存しているだけじゃないのか?
そんなことを考えてしまうと、もう息ができなくなって、とにかく苦しい。

そして追い打ちをかけるように

「あの日なんで答え聞かなかったの?」

なんて問いが降ってくる。

そう。
僕はあの人に想いを伝えていた。
離任式の日だった。
もうほとんど会うことは無いから、と手紙に想いを認めて、渡した。
でも、返事を貰わなかった。
一方的に想いを伝えて、逃げるように中学校を卒業した。
怖かったのだ。
逃げるように、ではなく逃げたのだ。

中学を卒業しても連絡を取りたいと言ったら、あの人はメールアドレスをくれた。
机の上にあった付箋にさささっと書いて渡してくれた(今でも大事にとってある)。

でも、僕はあの人に連絡先を教えていなかった。
だから、返事を貰う術はなかった。
それをわかった上で想いを伝えた。
狡いな、と自分でも思う。

あの日、あの人はどう思ったんだろうか

今でも連絡は取っているし、たまに中学校に会いに行くこともある。

でも、あの日の告白のことは無かったことになっている。

今、何を思っているんだろう。

ただ、嫌われてはいないとは思う。
メールを送れば、遅くなっても必ず返してくれたし、中学校に会いに行けば、満面の笑みで迎えてくれた。
そしてもうひとつ、あの人は僕のInstagramをたまに見ている。
アカウントを教えた訳では無いのだけど、メールアドレスで登録しているためわかったのだろう。
フォローしてくるわけではなくて、たまにストーリーの閲覧者リストに出てくる。
その度にその事実がまた僕の頭を揺らす。

あの人は、
今、何を思っているんだろう。

もうあの日の告白のことは忘れてしまっているだろうか。

きっと、僕のInstagramを見ているから今付き合っている人がいることもわかっている。

それを見て何を思ったんだろうか。
はたまた、何も思わなかったんだろうか。

あの日、答えをきちんと聞いていたら
逃げていなかったら
この気持ちにケジメを付けることができたのだろうか。

わからない。

今は、何もわからない。

自分の気持ちもわからなくなっている。

こんなのは付き合っている彼に対して不誠実だと思う。
本当に申しわけないと思っている。
でも、自分でも自分の気持ちがわからない。
どうしていいかわからない。

今の僕は、何も言わない彼の優しさに甘えて、何も言わず、考えることを放棄して、かと言って忘れられる訳もなく、ただ毎日毎日悶々としているだけだ。

最低だ。

どうしようもない思いを、どこに向けたらいいのか、はたまた、捨てたらいいのかわからない想いを、なんのまとまりもないこの文章にして吐き出している。

夜は更けていく。

今夜も眠れないでいる。

電話の向こうから気持ち良さそうな彼の寝息が聞こえてくる。

そして、罪悪感に苛まれる。

同時に、何も言わずに眠ってしまった彼にちょっとイライラしている。

最近、彼との関係もすこしギクシャクしてしまっている気がする。

彼は今大学受験に向けて大変な時期だ。

お互いに心に余裕が無いから歪みが生まれてしまっているのかもしれない。

本当は僕が支えてあげなければならないのに。

そんなことを毎日ぐるぐる考えている。
心は脳内は忙しない。

何も変われず、ただ悶々としている間にも夜は更けていく。
朝はやってくる。
明日は皆に平等に与えられる。

────早く寝なきゃ。

イヤホンから流れている曲は
The 1975の「Sex」。
アコースティックバージョンだ。

P.S.カタカナ表記のタイトルはいつ見てもダサい。
Google翻訳はたまにヘンテコで面白い。