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親の七光りは財産なのか? 出世の足枷なのか?・・・・・・・【読書】トヨタの子 を読んで

Youtubeの宣伝を見て一目散にイオンモールの大きな書店へダッシュ! !「トヨタの子」は空想小説なのだけど果たしてビジネス書のコーナーなのか?伝記?それとも文芸なのか?新刊書のコーナーには平積みされていないから数冊程度の在庫かな??と思いつつ、うまい具合に目線の高さに置かれていたのが本作品=「トヨタの子」(お値段ちょっとお高め、でも最初から買うと決めていたので目次も見ずにレジ直行・・・・・)

最初のパートはあの有名な豊田佐吉の息子にして工場内にこっそり自動車部を設立し、のちのトヨタ自動車を作ってしまった御曹司=豊田喜一郎の伝記。

実はこの小説、実在の人物(存命中も含め)をモデルにしながら、もしも二世代あとの現トヨタ会長=豊田章男がタイム・スリップして喜一郎初代社長と対面したら・・・・・・という仕立てになっている。物語のスタートは喜一郎の幼少期にまで遡っていき・・・・・・

当初、伝記小説として執筆のオファーがもたらされたのはペーパー・ドライバー歴19年の著者=吉川英梨さん。警察小説を得意とする彼女には喜一郎も章男もほとんど未知の存在。それが取材を進めるうち、熱狂的な喜一郎ファンになってゆくあたりは、物語の序盤で登場する若き女性、キャサリンの目線を通じても反映されている。

タイム・トラベルの掟として未来を変えてはいけないのは鉄則。しかし、これを怠ってしまうと、ひょっとして今頃はトヨタがToToに匹敵する自動トイレット洗浄会社、トヨタ・トイレットに発展する未来が待ち受けていたのかも?

実在人物をモデルにした伝記部分のパート1に比べて、章男会長が自在にタイムトラベルを繰り返すパート2は俄然空想小説っぽくなってくる。加えて章男氏の経歴や生い立ちに大幅なアレンジを加え、架空の人物も登場させて喜一郎おじいちゃんとの対比が一冊にまとめられているのだからコスパも悪くはないと思う。(一人当たりだと1500円見当だ)

章男会長と私はほぼ同年代で、名古屋市内八事周辺で過ごした時間も近く、いろいろ共感できるエピソードや地名もふんだんにあって、遠い昔の名大キャンパスあたりの光景が目に浮かんでくる・・・・・もう手放せない一冊と化している。

大学院生の頃トヨタの文字から離れたくてアメリカでアイスホッケーに打ち込む時代の章男選手。それでも出自は隠しがたく、近寄る人間は皆打算や下心に溢れているように見えてしまう、という御曹司ならではの悩みもこの一冊の大きなテーマ。

創業者の息子と言う避けられない立場からどう這い上がっていくのか?
巨大な組織の中で、決して順風満帆ではなかったキャリアアップをどう実行したのか?
世代を超えた二代の豊田家の御曹司の対面を描くと言うアイデアは若い世代に刺さるのか?

帯に載った章男会長の言葉
「読んで二度泣いた」のはどの場面だったのか?
フィクションらしくドラマチックな着地点が用意されたラストシーンは思わず泣かされそうだったから、もう一ヶ所、泣かせどころがあるはずだ

実際の社史を知っていても知らなくても、女性でも若者でも楽しめるエンタメな一冊にまとめ上げている。
この夏トヨタ博物館に見学に赴くなら、是非一読をお勧めしたい!

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