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アイデンティティがない

着たい洋服が定まらない。
ファッションには疎いけれど、なるべくカッコよくいたい。できれば安く。服装オシャレだよね、どこで買ってるの?とか質問されたい。
あわよくば、
「あ、これ?パンツはユニクロ。これは●▲□ってブランド。だけど古着だよ〜」とか、こなれた感じで言いたい。人からよく見られたい欲望が強い。痛い。

とは思いつつも、自分のなかに絶対にコレを着たい!って信念がない。
基本的には冷やかし半分でお店を覗いて、なんとなく気になったものをその場のノリとテンションで決める。だから柄もブランドもバラバラだ。唯一統一されているのはハイブランドは持っていないというポイントのみ。
そのため、服装の雰囲気がすごくブレている。

過去には、チャイハネやチチカカとかのエスニックな雰囲気にハマって、タイパンツやチャイナシャツばかり履いていた時期があった。周りからの評判はすこぶる悪い。「そんなの着てるのお前だけだよ」って言われたこともあったけれど、B型の僕はその言葉が嫌いじゃない。むしろ好きだ。人とは違う服装でいたい。
そういう時期を経て、今度はレディースものの服ばかり着ている時期もあった。BUMPの藤くんぐらい細い上に、背の順で並ぶと1人だけ腰に手を当てているタイプの人間なので、メンズのSよりもレディースの方がサイズ感がピッタリ合う。パーカーやシャツはレディースのものも多い。この時にレディースのシャツはメンズとは逆にボタンがついていることを知った。持っているスキニーパンツは全部レディース。女装癖ではなく、あくまでメンズの普段着という立ち位置でブラウスやスカートが欲しい時もあった。レディースの服が持つあの柔らかい雰囲気が好きなのだ。

その後はバンドのSUPER BEAVERに傾倒。ボーカルの澁谷さんのカッコよさにシビれ、憧れて、持っていたレディースのスキニーを更に細い64に変えた。
下北で買ったウォレットチェーンを腰につけ、これまた細いライダースジャケットを着て街を闊歩した過去もある。ビーバーは今でもめちゃくちゃ好きだけど、「隣を歩きたくない」と彼女に言われて次第に酔いが覚め、ウォレットチェーンはセカストに持っていった。ゴテゴテした男くさいウォレットチェーンはものの10分で駄菓子になった。

少し前まではヒップホップにハマっていた。舐達磨に「たかだか大麻 ガタガタ抜かすな」のパンチラインに胸をつかまれ、KOHHの「タトゥー入れたい」を聴いて、ダークな陰りを持つ人格に憧れた。タトゥーに差別はない。けれど銭湯に入れないことがネックだった。スーパー銭湯は天国だし、あそこで飲む瓶のコーヒー牛乳(フルーツ牛乳でも可)は合法でトべる代物だ。それだけは手放したくないという庶民的過ぎる執着心がある。悩みに悩んだ結果、一旦タトゥーシールを入れて落ち着いた。
ちょうどアニメのBEASTARSにハマっていたこともあり、左腕にはウルフが描かれているもの、腰周りにライオンを入れた。そう、アニメ最終回のオマージュである。強くなった気がして最高だった。全く筋肉はないけれどお絵かきの施されている自分の裸体にうっとりする。
嫁には内緒で入れ、さり気なく服を脱いだ時に驚かれた。この時に人に驚かれることが結構好きなんだろうなと自覚した。アウトサイダーであり、サプライザーでもある。
夫のダサいメンタルに気がついてしまった嫁は、ご両親に年始のご挨拶をする時に、このことをほのめかした。モゴモゴ言いながら、嫁のご両親に腰のライオンを見せる僕。この時の恥ずかしさたるや。学生の頃、クラスメイトにノートの落書きを覗き見されて「何の絵を書いてるの?」と尋ねられた時の屈辱感を思い出した。ちなみ嫁のお父様は笑ってたけれど、お母様はドン引いてた。お母様、目ん玉落っこちるんじゃないかと思った。

そして今、何を着たら良いのかさっぱり分からない。
気温的な問題もあるけど、自分が何を着たいかという精神的な問題である。
25歳にもなって、自分らしさが分からなくなってきた。アパレルショップを覗いても自分がどんな雰囲気の服を着たいのか迷子で、買うに買えない。そうこうしてるうちに気温はどんどん上昇していく。お正月の福袋に入ってたニットとショートダウンを着倒す日々も、もう限界なのかもしれない。

オシャレと言われなくもいい。ハイブランドを着れなくてもいい。自分らしいと言われたい。
そういう意味ではここまでの服装は間違えていないのかもしれない。(ファッションセンスの方は間違えていたのかもしれないけど)
真面目過ぎない服を着たい。パッと見はきちんとしてそうだけど、チラリと見える靴下にはお相撲さんの刺繍が施されているような。そういうユーモアを取り入れた服装でいたい。人間で例えると高田純次みたいな雰囲気を纏ったファッション。
そしてあわよくば、ファッションから自分らしさを見出したい。トレンドにも他人の意見にも左右されず、着たい服を着る。でも服装がダサいとは思われたくない。(この発想が既にダサい、とか言わないで)
果たして、自分らしさってやつに朝はくるのだろか。

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