『海をあげる』:上間さんでも「ざらり」とするのかぁ。

上間陽子さん著(2020年)『海をあげる』筑摩書房 を読みました。
目の前の人、事実と向き合う誠実な言葉の一つ一つがまっすぐに届いてくる本です。自分の能天気さを突き付けられる気持ちになります。

本筋とはやや関係ないかもしれないのですが、私は「優しいひと」のエピソードが心に残りました。
この章では筆者である上間陽子さんと、元山仁士郎さんとのエピソードが紹介されています。上間さんが「私の時間を奪うことに無自覚なひとへの苛立ちを、私はその夏出会った、私の言葉を聞こうとした一番優しいひと(=元山さん)にぶつけた」ことについて率直に反省するというくだりがあります。

この本や上間さんの『裸足で逃げる』を読むと分かることですが、上間さんの調査対象者に寄り添う姿勢はいつも誠実なものです。
それは、別の章で、調査対象者が医師との対話に際して上間さんの同席を希望するという様子を読んでもよく伝わってきます。

そんな上間さんのような人ですら、「自分に対するざらりとした苦い思い」(p.127)を抱くことがあるんだと思うと、少し不謹慎ですが、なんだか妙に安心してしまいました。
私も他人に対する自分の言動を後悔し、しょっちゅうざらりとしているので。「ざらり」「ざらり」の連続の日々です。
大人でもざらりとしていいのか、と思いました。
もちろんその後、率直に反省し、それを書けることが上間さんなのだろうな・・・とも思いますが。

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