岸政彦『リリアン』
岸政彦さん著(2021)『リリアン』新潮社 を読みました。
主人公とその恋人・美沙さんの2人の会話の雰囲気が好きでした。
2人の会話は、鍵カッコで括られるでもなく、地の文と同じように書かれています。
話しぶりも、相手の言葉をそのまま繰り返したり、説明があまり論理的でなかったり、記憶違いをそのまましゃべって、話しながら誤りに気付いて訂正したり。
実際の会話って、文章としては不完全なものだよなあ、でもその感じが良いんだよなあと思って読んでいました。
著者の岸先生は生活史研究をされる社会学者です。
調査の手法を書いた本では、語りの文字起こしについて、こんな風に解説しています。
この小説を読んでいて、この部分を思い出しました。
私はなんでか、インタビュー調査の生データ(分析する前の、文字起こしをしたまんまの状態のもの)を読むのが好きなのですが、それを読んでいるときの気持ちに似ていたかなぁ。
ところで、映画『花束みたいな恋をした』にこんなセリフがありました。
この主人公はリリアンを見かけるたびに、美沙さんのことを思い出しちゃうのかな。
まあリリアンってそんなに見かけるものでもない気もしますが。
※リリアンは花の名前ではない。
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