吉川徹(2018)『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』

吉川徹(2018)『日本の分断 切り離される非大卒若者たち』光文社を読んだメモ。

団塊退出後の日本社会の主力メンバーを2世代に分け(「宮台世代:1955~74生年」と「古市世代:1975~94生年」)、さらに「男女のジェンダー」「学歴」の区分を加えることで現役世代を8分割し、各層の置かれた状況や意識の分断の実態を鋭く読み解いていく。
なかでも現代日本の特徴である大卒層と非大卒層の分断の深刻さに注目。同世代の5割を占め、日本社会の底堅さを支える非大卒若者(レッグス)を社会の宝と捉え、配慮と共生を図ることの重要性を訴える。

光文社ウェブサイトより

「レッグス(LEGs=Lightly Educated Guys)」というのは筆者が提示した言葉で、若年非大卒男性の呼び名。学費と教育年数のかかる大学教育を受けずに社会に出た、彼らの軽やかな人生選択を、「それもありだ」と前向きに考えようという点にポイントがある、とする(p.223)。
この「レッグス(=脚)」という言葉には、日本社会を下支えしている人、という含みもある(p.224)。

最近、国の政策として大学学費の私費負担軽減に力が入れられている。

でも、全ての人が大学進学を望んでいるわけではない。
非大卒の人生を、確信を持って進んでいる人たちが一定数いる。結果として「大学全入」には至らず、20歳までに社会に出るレッグスは労働市場に供給され続ける、というのが近未来の日本のありうべきシナリオ(pp.237-238)。

筆者は、社会の不均等を是正するためには、勝ち過ぎている壮年大卒層から得た所得税によって、社会のボトムを支えてくれているレッグスや非大卒女子をサポートする政策を進めるべき!と主張する。(p.241)

8分割した現役世代の各セグメントを、1つの「チーム」にたとえ、セグメントを越えた理解と交流をするべし(pp.251-252)、という点が印象に残った。

なお、この記事に筆者の主張が圧縮されている。

「大卒層を勝ち組と考える人がいるかもしれませんが、考え違いをしてはいけない。果たす社会的な役割は異なっても、上下関係はありません。非大卒層を社会を支えるもう一人の自分と考え、互いに尊重し、共生していく必要があるでしょう。」

本書はコロナ前に出版された本だけど、筆者はどこかの記事で、コロナ禍を経て、日々の生活を支えるなくてはならない職業(ゴミ収集など)が以前よりも注目されたことに触れ、これが相互理解や感謝の増進に資するかもしれない、みたいなことを言っていたような記憶がある(ソースを忘れてしまった)。

ところで、吉川先生、語り口に関西の雰囲気を感じる(ご出身は島根のようだけど…)。この語り口、吉川先生の社会に対するどこか温かいまなざしに通じる感じがして、いいなと思う。笑

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