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短編小説「情動の月」①(全3話)

第1話

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君は死んだ。

君との友情は、
儚く残酷なものだったが、

今になって、
案外そうでもない気がしている。

君は、確かに生きていた。

僕たちは一度も話をすることも
なかったが、

友達だった。

確かに君は生きていたんだ。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
君を初めて見かけたのは、
父さんに連れられて、

山に行った時だ。

君は遠くから、
ただこちらを見ていた。

お互いの存在を
確認しながらも、

僕たちは
そこから動かなかった。

しばらくして、
君は姿を消してしまったけど、

君の残像がいつまでも
目に焼きついた。

数秒の出会いだったが、

凛としたその佇まいの裏に
どこか寂しさが
見て取れた。

その姿は
僕を虜にしてしまった。

この後の結末は、
そのことをますます
際立たせ、美しさを増した。

それは、

「結末は決められない」

だけど、

君は今生きている、
その美しさだったんだと思う。

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
君との出会いを
父さんに語らずには
いられなかった。

興奮した僕を前に

父さんは
真剣な顔をした。

目の奥にある決意を見た。

そして父さんは、

舌なめずりをするように、
こう言った。

「金になるぞ」

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君は、
自分を認識する
名前を持たない。

君は、
自分の感情を表現する
言葉を持たない。

君は、
家族もいなければ、
友達もいない。

きっと生きる意味も持たない。

しかし、
君が生きていたことを
僕は見たんだ。

その美しさを見たんだ。

君は
最後の狼。

(第二話に続く)

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 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(あとがき)

この短編は
僕にとって、
初めての創作となる

「情動の月」短編第一話です。

生きるということ、

本当に大切なことは
何だろうか、

ということを
テーマに、

僕自身の人生観を
照らし合わせ、
書いたものです。

狼(ニホンオオカミ)は100年以上前に、
奈良の吉野で捕獲されたのを最後に
絶滅されたとなっています。

結末は決められない、
だけど生きていたことが美しい。

正直、
やりたいことをやる、
というのは怖い。

それでも
今やりたいことに
挑戦したい。

結末は決められない、
だけど今を生きるんだ、

書くということ。

コメント、いいね、
もらえると、

嬉しくて続きを書きます。

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