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共通テスト受験の「ステルス強制」が目にあまる、という話①

このところ、noteの執筆が進まない。

いや、書きたいことが無い訳ではない。むしろ書きたいこと書くべきことは山ほどあるのだが「あること」が頭から離れず、そればかり調べているためである。

その「あること」とは、2025年の「大学入試共通テスト」のことである。

1.「私大マーク模試」が無くなった!?


実は、甥っ子の一人が来年大学受験なので、週末などにオンライン講義をしている。彼自身は私大志望で、いわゆる3大予備校の1つにも通っているのだが、その甥から衝撃的なことを聞いたのである。

1)予備校で受験できる私大受験型の「マーク式模試」として、現在では  
 「共通テスト対策マーク模試」しかない
2)予備校のチューターからは私大しか受けない受験生も必ず「共通テスト対策模試」を受けろと言われている。
3)高校(都内私立高校)でも、国公立・私立志望のいかんを問わず、  
  共通テストは当然受験するよね、という雰囲気になっている。

私は耳を疑った。ここ2年ほど、大学受験生の指導をしなかったので、「共通テスト」についてはデータとしては確認していたが「身内の人間の進路」に直接関わりがなかったので、さまで真剣に調べなかったのである。(共通テスト初年度に担当した大学受験生は、第一志望校に推薦で合格していたので、やはり調べなかった。まったく迂闊な話である。)

センター試験の時代には、予備校で受験できる「マーク式模試」としてセンター模試のほかに私大マーク模試が用意されていた。それが当然の事と考えていたので、共通テストが始まれば「共通テスト模試」と「私大マーク模試」が別々に実施されるものとばかり考えていたのである。

共通テストの模試しかないとすると、私大専願の受験生はやむなく共通テスト用マーク模試を受験せざるを得なくなる。これがセンター試験の時代であれば、まあ、出題形式は少し違うがそれほど大きな違いは無いだろう、と目をつぶることもできたかもしれない。しかし、共通テストと私大のマーク式試験は内容がてんで違うのである。(しかも、後述のとおり共通テストの内容には多くの専門家から厳しい批判が向けられている。)

だから、甥っ子からその話を最初に聞いた時には、「いや、そんなハズは無いから、もう一度調べてみなさい」と言ったが、何度聞いても同じだという。私の方でも調べてみると、実際、3大予備校すべてのマーク模試が「共通テスト対策マーク模試」に一本化されているではないか!

(実はもう一つ、3大予備校には「記述模試」というタイプの模試もあるが、これは国立大学2次対策用の記述問題が中心であって、やはり私大のマーク式には必ずしも対応していない。強いてあげれば、直前期に受けられる各私立大学の「冠(かんむり)模試」=例えば早稲田なら「第〇回早大模試」のようなものを受けるしかない、ということだろう。)

しかも、こともあろうに予備校のチューターは、私大受験生も必ず「共通テスト模試」を受けろと言う。一体どういうことだ!?オジサンが文句言ってやる!!と一時は息巻いたが、考えてみれば、少子化に伴う受験生・浪人生の大幅減少の中で、従来どおりの「私大マーク模試」を作成・実施するのは予備校にとっては運営コスト的にペイしない、ということなのかもしれない。
共通テストの実施を機に、模試の種類を削減できればビジネス的には万々歳なのだろう。予備校は生徒の便宜よりも経営上の利益を優先したということか。

2.高校まで、共通テスト受験を事実上義務化しているのか!?


予備校は営利事業体であるから仕方ないとしても、私が異様に感じたのは、高校の教師までもが、生徒の国公立・私立の志望いかんにかかわらず共通テストを受験することを当然視(あるいは義務化?)していることである。
これは、センター試験時代には、少なくとも東京の高校では寡聞にして聞いたことが無い対応である

気になってネットで調べてみると、地方の高校では

(私大専願の受験生でも)共通テストは高校学習の集大成、いわば卒業試験のようなものだからと言う理由で受けさせられている。

という趣旨の書き込みが複数見られた。このリサーチをしたわずかの間に、複数の書き込みサイトで似たようなフレーズが異なる時期・年度に(したがって、恐らくは別の受験生によって)書き込まれているのを発見したのである。

あたかも、行政機関が通達文をそのまま下級官署に流しているかのような一致ぶりである。

これ以外にも、私大専願や推薦入試に合格した受験生から「共通テストを受験しなければならないのか?」という掲示板上の質問に対し、執拗に受験を勧めるコメントが見られた。「受験は団体戦」なる珍妙な理由付けもあった笑。

確かに、高校教師も予備校も、表立っては共通テストの受験を強制してはいないのかもしれない。しかし、学校も予備校も、受験生が共通テストを受けざるを得ない状況に受験生を追い込んでいるという状況は事実上の共通テスト受験強制、いわばステルス強制と言えないか。

それにしても、予備校や高校単位で生徒に対して共通テスト受験を半ば強制する目的とは一体何なのか?

1月中旬の、私大対策直前期の一番重要な、かつ風邪やコロナやインフルに感染するリスクが最も高い時期に、共通テスト受験を受験生にステルス強制することができる主体とはいったい誰なのか

まず考えられる答えは、「その学校の進学実績を上げたいと考える高校の方針」である。しかし、いやしくも受験業界に長年席を置いたものであれば、そのようなマヤカシの回答に騙されることは無い。なぜなら、共通テスト(あるいは旧センター試験)を受験するだけでは、具体的な大学の合格には第一次的に直結しないからだ。要するに進学実績を上げるには間遠いやり方なのである。

進学実績を本気で上げたい高校であれば(平成初年からの実施で出題内容がこなれていたセンター試験ならばいざ知らず)合格点の予測可能性も極めて低い共通テストなどを受験させるのではなく、本命大学の別学部や滑り止め校を山ほど受けさせることに専念するはずなのである。

しかし、このようなマヤカシであれ、ネットのコメントの内容が「進学実績をあげるためだ我慢してくれ、と担任に言われた。。」などであれば、そういう高校だから進学実績があがらないのだと呆れながらスルーしたかもしれない。

だが、現実はそうではない。

共通テストは高校学習の集大成だから

というのである!

このようなお題目を高校教師に唱えさせることができる権力主体を、私は複数上げることができないのである。

(つづく)

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