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〇〇と僕『や』~野菜と僕~

僕は野菜を食べる。
積極的に食べる。
その積極性は年々増している。
健康診断の問診で『痛風』という恐ろしい現実を突き付けられてからは、特に積極的に食べている。

健康になりたい。
その一心で野菜を食べる。
死なたくない。
そう願いながら野菜を食べる。
とは言っても、嫌いな物を無理やり食べている訳ではない。
むしろ好きだ。
痛風宣告以前から、野菜は好んで食べていた。

好き嫌いなく、どんな野菜も食べる。
もちろん美味しいと思う。
むしろ「肉!米!肉!」みたいな食べ方はもう無理で、食事の中には必ず野菜が入っていて欲しい。
しかし、僕が野菜を美味しいと思うようになったのは、実は大人になってから。
子どもの頃は、ほとんどの野菜が大嫌いだった。


キャベツとレタスは何の味もしなかったので、食べられるが美味しいと思ったことはなかった。
味がしないのだから、どっちがどっちかなど分かるはずもない。
高校生の時、母ちゃんに「これはキャベツかレタスか」と聞かれ、答えられず、物凄く怒られたこともあった。
ピーマンは、小学生の頃お泊まり会の朝食で泣き叫びながら10分間格闘した後、最終的に友だちのタツヤ君に食べてもらった。
アスパラとキュウリは腹の底から湧き上がる嗚咽を抑えるため、すっかり見えなくなるまでマヨネーズを纏わせて食べていた。
ナス、セロリ、大根。
カブ、ネギ、にんじん。
濃い味がついていれば食べられないことはないが、美味しいとは思えなかった。
そして、出来る限り避けてきた。
野菜に加え、きのこも嫌いだった。
えりんぎ、しめじ、えのきは、不味いというよりは、何が美味いのか分からなかった。
しいたけは匂いを嗅ぐと吐きそうになった。
らくようは地球外の生命体だと思っていた。


そんで、時は流れて大学生。
初めての一人暮らし。
ビールを飲み、お菓子を食べ、油を摂取しまくった。
実家にいた頃母ちゃんからダメだと言われていたことをすべてやった。
その結果、中高6年間バスケで絞った身体はあっという間にダブつき、体調は音を立てて崩壊した。
このままじゃヤバい。
普通であれば、まだ折り返してすらいないはずの人生。
でも、このままでは日に日に弱り、「人生の折り返し地点は15歳でした。とっぴんぱらりのぷぅ。」なんてことになりかねない。
生きたい。
果たして自分の命にどれほどの価値があるかはわからないが、可能な限り生きたい。
好き嫌いを克服することで、わずかでも未来に光が差すのであれば、よし、盛大に食べようではないか。
さぁ、来い、野菜!
うりゃー!


そして、僕は野菜を食べた。
不味いと思いながらも食べた。
半べそをかきながらも食べた。
あと一品が欲しい時は、きゅうりの浅漬けを食べた。
アスパラは何も付けずに、本来の味を味わった。
味噌汁の具には積極的にきのこを入れた。
それまで、肉とモヤシしか入れなかった焼きそばには、にんじんとピーマンとキャベツを入れた。
もしかしたら最初の数回かはキャベツではなく、レタスだったかもしれない。
そうして月日は流れ、ふと気づいた時、僕は野菜を美味しいと思いながら食べるようになっていた。


今日も僕は野菜を食べる。
積極的に食べる。
今と未来を繋ぐために食べる。
いつの日か、小さな庭で好きな野菜を育てたい。
それを七輪で焼きながら、キリッと冷えたビールを飲みたい。
そんな日まで生き続けるために、今日も僕は野菜を食べる。

『バイタルサイン / clammbon』を聞きながら
FJALLRAVEN by 3NITY TOKYO  池守


『〇〇と僕』←過去の記事はこちらからお読みいただけます!是非!


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