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何十年ぶりかに出会った、映画「ウェストサイド物語」の記憶

出会いはある雨の日、突然に

まさか「ウエスト・サイド・ストーリー」を劇場で見るとは思わなかった。映画を見るモチベーションの1つだと思うが、きっかけは、すごく暇を持て余したこと。

人と会うまでの時間がつぶせず、久々の外出で足も疲れていた。何かないか?と考えていたところ、その時いた店舗に「ウエスト・サイド・ストーリー」の曲が流れた。これが私の灰色の脳細胞を刺激し、久々に映画館で何か見るか?の発想となった。

検索した所、その場所に最も近い劇場で、開演が一番近い作品がなんと「ウエスト・サイド・ストーリー」だった。その店舗と映画館が連携している気はしなかったので本当に偶然と思うが、とにかくそれで決まりとなった。3月の、雨が降り始めた夕方だった。

映画館で見るなんて何年ぶりだろう。長らく映画館に行く気持ちが起こらなかった日々の後、やっと行けるのがうれしかった。

こういう状況で、「ウエスト・サイド・ストーリー」に関する事前情報は一切持っていなかった。私の頭にあるのは下の作品の記憶だけ。何しろ昔の映画ファンなので昔の記憶の方が優先される。

「ウエスト・サイド物語」のチラシ

監督の名前を知って驚く

ウエスト・サイド物語」(※)のリメークか程度しか浮かばない。両作の違いを一つあげると、日本公開タイトルが「ウエスト・サイド物語」と「ウエスト・サイド・ストーリー」であること。私的には重要で、両者は別物であるべきという考え。

「ウエスト・サイド物語」は往年のミュージカルの名作、最近出来たリメーク品に同じ名前をつけるなんてあり得ない。だから、タイトルが違うのには好感を持った(原語では同じだけど)。

ただ監督の名前を知った時、なに、すぴるばーぐ?!と思った。

スピルバーグ(※)と言えばB級アクションの名手、恐怖売りでデビュー。例えば「激突!カージャック」(※)や「ジョーズ」(※)。後にはSF、A級冒険アクションもの。例えば「未知との遭遇」(※)や「レイダーズ失われたアーク」(※)「ジュラシック・パーク」(※)。

映画「ジョーズ」のチラシ

個人的にはやっぱりこれ(↓)が好き。

好きな監督、SFや冒険ものが好きなのだが、ミュージカル?え嘘でしょ、一体どうした?という感じで正直かなり驚いた。どんな出来なんだろう?

「ウエスト・サイド・ストーリー」を見終わって

昨今の状況もあってか集客状況は30%~40%程度。もっと少なかったかもしれない。当日の雨も客足に影響したはず。それでも、知らない人大勢と同じ環境に集まり、大画面で映画を見る楽しさを久々に実感した。誰が何と言おうと集合やLiveが良い。私は引きこもりの方が好きだが、集合をやめたら人間でなくなる気がする。

一方、アマプラで好き勝手に寝転んで、止めたり再開して見ていた時と違い、長時間姿勢を正して座り続けるのがいかに重労働かも分かった。腰や首の疲労感もかなり。齢だ。それでも反射光は良かった。直射光は目に毒だし。

肝心の中身だが、オリジナル作ほぼ丸パクリ。変な改変なし。逆に言えばめざましい工夫はない。時代はオリジナル作と同じ設定。曲はそのまま。振付は違った。映像はオールデジタルでビビッド。スピード感は流石スピルバーグ。キャストにより移民の描写が鮮明化。血生臭さと無謀さ・理不尽さは増加。といったところ。体がこわばる感が強かった。これも疲労の原因か。

注:細かい事を言えばかなり違いはある。イントロ、歌の場面設定とか。登場人物とか背景とか。驚くような改変は無いという意味。

肝心の曲・演奏・歌は?

ミュージカル映画なので最も大きな主張は曲。違いは、「ウエスト・サイド物語」では、メインキャストの歌は吹き替え(別の人が歌う)だった。

「ウエスト・サイド・ストーリー」は、プロモーション映像で確認した限り出演者が歌っている。下は<曲名:America>のレコーディングの様子。このようなメーキング映像が20世紀スタジオから多数公開されている。

昔の映画、有名なミュージカルでも出演者が歌うとは限らなかった。例えば「マイフェアレディー」のオードリー・ヘップバーンの歌はマーニ・ニクソンという人が吹き替えている。歌を歌える事が必ずしも出演の条件ではなかった。総合芸術なので全体の質が整っている方が良い。

「ウエスト・サイド・ストーリー」は、歌えて踊れる人をオーディションで集める所からスタートしたらしい。だからといって「ウエスト・サイド物語」の音楽性が下がる訳ではなく演出では勝っているかもしれない。

いずれの作品も同じ曲がほぼ同じアレンジで演奏されており、ここはやはりバーンスタインのスコアは変えようがなかったんだろうなと思ってしまう。素晴らしい曲のオンパレードで次が有名どころ。一度はどこかで聞いた事があるのではないだろうか。

Maria
Tonight
America
I feel pretty

オープニングに流れるプロローグ曲は、ちょっとガーシュインっぽいなと感じた。ニューヨーク下町の混沌が聞こえてくる。ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」にはオフィス街の雑踏のイメージもある。

今はどうか分からないが、以前のユナイテッド航空機内で流れていたテーマ曲が「ラプソディ・イン・ブルー」だった。そのおかげで私にとっては米国へのテーマ曲となってしまっていて、類似性を感じやすかったのかもしれない。

バーンスタイン指揮、NYフィル演奏「ラプソディーインブルー」が入っているCD

失われた時を求めたくなり・・

「ウエスト・サイド物語」を見た(公開当初ではない)のは高校生の時だったので、下町のヤンキーな暴力沙汰にも無謀さにも耐性や共感があったかもしれない。この時の記憶と比較しても、「ウエスト・サイド・ストーリー」の方が無謀さが上のような気がする。

印象的にはオリジナル作の「ウエスト・サイド物語」が持っていた、「ロメオとジュリエット」的空気感や、ミュージカル舞台劇を映画化した気配が薄い気がする。「ウエスト・サイド物語」に出演していたリタ・モレノ(※)からは昔の空気を感じた。再出演はサプライズ!だった。

最初に「ウエスト・サイド・ストーリー」を見れば違和感はないかもしれないし、比較さえしなければ出来は悪くない。しかし、私から見ると「ウエスト・サイド物語」の方が総合芸術的、エンタメ的に見えた。ダンス、ミュージカルは「ウエスト・サイド物語」の方が濃い。記憶の誤りかもしれない。なにしろ遙か昔の記憶だ。

こんな経緯で、「ウエスト・サイド・ストーリー」を見た事により、オリジナル作「ウエスト・サイド物語」を振り返ってみたくなってしまった。早速アマプラで検索したのだが。

なぜなんだ、Why?

2022年5月時点アマプラで見られない。復活の日を待ちたい。。

オリジナル作の振り返り

映画「ウエスト・サイド物語」ってどんな映画

制作:1961年
分野:ミュージカル
撮影:カラー
時間:2時間33分

物語をひとことで言うと
ニューヨークの下町。移民間のいさかいが多い町。禁断の愛を進めようとする女性を巡り波乱がおこる青春ミュージカル。

キャスト、監督、スタッフ、制作会社など
キャスト
出演:ジョージ・チャキリス、リチャード・ベイマ-、リタ・モレノ、ナタリー・ウッド

監督、スタッフ
監督:ロバート・ワイズ(「サウンド・オブ・ミュージック」の)
音楽:レナード・バーンスタイン
振付:ジェローム・ロビンズ(※)

制作会社、配給会社
制作:ユナイテッド・アーティスツ

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