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めまい

スーパーにお菓子を買いに行く。
このところ、スーパーに入ると私はめまいに襲われる。
陳列棚の価格表の数字が踊り出し私に迫って来る。
数字が私の心臓を鷲摑みにして天高く舞い上がり、一気に地上に放り投げられる感覚に陥る。
毎回スーパーに来るたびに値上げされているようで、価格を見るとめまいがする。
前方の展示台に女性のベテランスタッフが商品を陳列をしている。
小心者の私は相手に聞こえないように、小声で値段下げて下げてと怒鳴る。
もちろん相手は聞こえないので知らんぷりだ。

家族で食べる毎日の食卓にも輸入品が増えた。
産地でアメリカ、カナダ、オーストラリアは知っているがモロッコ、モーリタニア、ベトナム、セネガル、チリ、ノルウェー、インドネシア、インド。
海外旅行など行ったことが無いのに、食卓はパスポートなしで海外旅行だ。

スーパーに入る度に恐怖心にかられ、めまい予防に深呼吸をする。
立ち止まって、恐る恐る価格表を確認し、ため息をつく。
「お客様大丈夫ですか」とベテランスタッフが声を掛けてくれた。
私は絞り出すように小声で「価格が~」と答える。
ベテランスタッフは「救急車呼びますか」と聞いて来る。
私はもう慣れましたので大丈夫ですと答える。

数日して妻に頼まれ散歩の途中でスーパーに寄る。
入口付近の目につきやすい所に、ベテランスタッフと男性店長が、外国産の新商品を並べている。
店長は商品取り換えに不服そうなベテランスタッフに、高圧的な支持を出し、その場から離れて行った。
その後、ベテランスタッフは一瞬めまいに襲われふらついた。
「大丈夫ですか」と私は声を掛けた。
「大丈夫です。ありがとうございます」と気弱な声が返って来た。
見知らぬ果物が並べられているので、どう食べるのか聞いてみる。
お客さんが知らない商品を店頭に並べても売れないですよねと嘆いている。

店長は電話の相手に恐縮しながら、展示商品に近づいて来る。
携帯電話を切るなり、「又、別の外国産新製品を置けだと」と言うなり、 めまいを起こし、疲れて床に座り込んだ。
このスーパーのめまいの原因は、値上げ旋風で業績しか見えない社長にあるのかも知れない?
最近スーパーでめまいを起こしている人が増えているらしい。


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