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2021年上半期BEST20発表会

こんにちわ、3LAの水谷です。2021年も早くも半分が終了しています...時が経つのは早すぎる。ちょっと待ってくれよ...!しかしカイジの利根川先生が言うように「おまえらは生まれてから何度そのセリフを吐いた?」を心に刻まなければならない。何が言いたいのか!?

というわけで、2021年上半期BEST20発表会をやれるのは今しかない。既にお判りの3LAヘヴィーユーザーの方もいらっしゃいますかと思いますが改めて説明すると、このランキングはどこまでいっても主観的にならざるをえない音楽的評価ランキングではなく3LAという世間から外れてしまったレコ屋による上半期の売上ランキングです。そう、売れれば売れた分だけ上位にランクインする単純な仕組みだ。だが、それが世の中のいわゆるヒットチャートではなく音楽市場の番外地にあるこのシーンのランキングであり記録であるということに意味はあるはずなのだ(その意味は後から考えよう)

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No.20 Burning Skyline / GUEVNNA (CASSETTE: Ltd50)
2020年の終わりに世に出たGUEVNNAの主戦場は2021年だったかもしれません。時を経てカセット版がウクライナのRobustFellowe Recordsよりリリースされました。バンドは今ライブとかやっていないのですが、相変わらず海外受けは良いですね。



No.19 春と修羅 / 春ねむり (Haru Nemuri) (LP)
2021年リリースではないんだけど2021年にリイシューされた前作アルバムが入荷され、そして売れました。EmoでもScreamoでもないんですがフランスのSpecific Recordingsと謎の関係が続いております。



No.18 Lovetheism / 春ねむり (Haru Nemuri) (LP)
2020年のランキングにも入っていたじゃないかと言われそうですが、売れてるんだから仕方ない。レコードというのを1年単位で語ろうとするのが無謀なのです。入ってしまえば2010年代を2000-2009年、のように10年単位で語ろうとするのもまた無謀。僕的には2020年は2018年から始まっている。そういうわけで、2021年も彼女の表現はまだ有効ということです。2021年ツアーのNY公演はソールドアウトらしいですよ。



No.17 呼吸 / sassya- (CD)
2021年作がようやくランクイン。音楽性として演奏が云々、楽曲が云々、グルーヴが云々の話はメディア的な軸としてはあるんだけど、結局は同じ世界、同じ世界をくれよっていうルーザー感覚で歌われるエモーション、それは喪失。喪失なのです。sassya-はかっこつけながらも人の弱さ、明るみに出ない感情の発露、諦めきれない情けなさ、昼と夜の間、子供と大人の間、いろいろな隙間にある影を歌うのであり喪失なのです。2020年という巨大な喪失の年を誰しもが体験してしまった今、やはりこの情けなさすらリアルと言えるのかもしれない。



No.16 Burning Skyline / GUEVNNA (CD)
GUEVNNAも2020年作品なんですよね〜〜。毎度思うことなんですが年末にリリースするとその年のベストに入りにくい説っていうのはあるかもしれない。12月リリースだとメディアはすでにベスト選出してる後だし。となるとベスト記事って嘘じゃんと思うんですよ。その年のベストをその年に発表してるやつらはみんな嘘つきですよ。



No.15 サラバ未来世紀 / PSP Social (CD+ZINE)
また2020年作だ...。普通に考えてアウトプットしているものがおかしいんだけど本人たちがメチャ真面目というかピュアなのと、今の時代のオタク的視点、そしてアニメリファレンスという点においてかなり深い気づきがあるような気がしてしまう。その「気がしてしまう」のが重要。最後は受け手にかかっているのだから。



No.14 split / lasik + Crows Caw Loudly (CD)
キーワードになるのは「90年代」ってところになるだろうし、彼ら自身のバックボーンもまた、そういった現行の音楽とは違う混沌とした時代やカルチャーにあるように思える。だがそれ以上に今僕が感じている「今のトレンドが全く肌に合いません」という合わせる気もない開き直り要素に一番共鳴した。ロウで荒々しくグルーヴしていくミッドテンポのビート、ディストーション、ギターリフ。インタビューもあるのでnote検索してみてね。



No.13 Laisser Vivre Les Squelettes / Daitro (LP: Gatefold)
Baton Rougeをリリースした時代からずっと繋がっていたからこそDaitroの編集盤CDをリリースすることが実現できたのだなぁと思う。この1stも度々リイシューされていますがゲートフォールド仕様での再発はなかなかゴージャスでした。レビューにも書いていますが、今や益々失われつつある「バンド」という形態とは何なのかという核を改めて提示しているかのようにも見える作品。人間同士の繋がりは不思議なものを時に生み出してしまう。それはソロアーティストの時代のスピード感にはまるで及ばない、時間とエネルギーの消耗の激しい活動形態ではあるんだけど、人との摩擦が生み出した削りカスこそがバンドの本質。Daitroにはそれがある。



No.12 ni'in / Saton (CD: Japan Edition)
まっったく無名だったんで売れないんじゃないかと思っていたら結構売れてしまったメキシコのSatonです。ここまで書いていて自分でも思うんですが、2021年が思った以上に2020年の続きなんです。たぶん後から歴史を振り返る人がいたら、コロナ期としてまとめられるんじゃないだろうか。ただ2020年、2021年と新譜リリースの作品数は落ちていて、リスナー視点では作品の1つ1つと向き合う時間は増えているのだと思うし、こうやって去年よかった作品が売れ続けているのは嬉しいです。



No.11 殺しの呪文(The Conjuring) / killie (Download code + 8cmCD size sleeve case)
ようやくMVが解禁か!?と思ったら謎にカラオケバージョンだった。徹底的に先読みを回避してきますわな。踏み込んでいくバンド側と着いていき切れないリスナー側。いやいやこれこそ表現ってものかもしれません。しかしほんと2020年リリース多いな。



No.10 anders leben!? / YAGE (LP)
Yageの300枚限定再発、2021年に聴くYageは効きますね。まさかのリイシューでしたがあっという間にソールド、それでもしっかり枚数を確保した僕を褒めてください。レコードは待ってくれないし、レーベルも待ってはくれないのは本当で一瞬の判断ミスで新譜が入荷できないのはよくある話。



No.9 Discography / ...AND ITS NAME WAS EPYON (10inch)
人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀。地球の周りには巨大なスペース・コロニーが数百基浮かび、人々はその円筒の内壁を人口の大地とした。その人類の第二の故郷で、人々は子を産み、育て、そして死んでいった。宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。この一ヶ月あまりの戦いで、ジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。人々は自らの行為に恐怖した。



No.8 robota / xonto (CD)
2021年リリース作品の中でも国内リリースの中でも流石!と思ったのがこのxonto。多くのリアクションが生み出されていく中でめちゃ売れた。でもソールドしてしまっているのがもったいないですね。国内の狭いシーンの中で発展していったScreamoがねじれてねじれて独自進化、これは海外勢も追いつけないなーっと思いましたね。こういうことなんです。



No.7 Split:Gensenkan/zeami (CDR)
これもかっこいい。CDRだけど歌詞カードやジャケットなど、制限された条件の中で十分表現を伝えようとする姿勢もいい。Gensenkan、zeamiもどちらも歌詞がいい。いま激情を聴くならやっぱり若い世代のバンドのほうがかっこいいかもしれない。そういう音ですよね。




No.6 Territorios / Tenue (LP: Splater / Yellow)
スペインのTenueの2021年のいくつかのバンドと共同リリースしました。もはやスペインのEmo,Screamoを意識して聞いている人なんて身の回りにはほとんどいないのですが、Tenueはコアなマニアックスリスナーには届いたしその周りにいるリスナーにも届いているんじゃないかという実感はあります。CD盤もあるんならそちらも関わりたかった。海外のプロジェクトの進め方なぞすぎて情報が共有されなくて動きをミスることが何度かあった2021年だった。




No.5 Azabache / Svdestada (CD/LP)
個人的にはめちゃくちゃ好きになった。前作よりも圧倒的に良い。というか、「なぜ良いか」そう感じたのかを自問してみると彼らが自身のアイデンティティにより自覚的になったことが大きいのだと思う。2021年にもなって「ネオクラスト」なんて言葉を肯定的に発信するリスナーはどんどん減っていったけれど、彼らはまるで逆だ。これがスペインのハードコアなんだと言わんばかりの自信があり、楽器もメロディも演奏もすべてが彼らならでは、という領域。それでいて誰かにそれを主張しているというわけでもないという湯加減。



No.4 cahier / lang (12inch: Blue Ltd200/White Ltd200)
CDの仕様を再現する形でLPジャケットを作ってくれたDogKnightsに感謝〜。2020年の作品ですが、その人の手に渡ったときがその時なんで海外リスナーにとっては2021年作品として認識してもらえるのかなと思います。ジャパニーズフォークがScreamoと混ぜ合わさった表現、というのは海外のScreamoには有りえなかった文脈。いまのJ-POPも全部がオタクっぽいしゲームミュージックっぽいかもしれないけど、彼らの表現はそういったジャパンカルチャーとは距離を置いたところにあるので、また違う感じに受け取ってもらえたのかなと思えます。日本ではlangガチ勢がCD持ってるのに購入してくれている模様。サンクス...



No.3 懊悩の魍魎 / blue sketch. (BOOK+ダウンロードコード)
自分で書いたテキストの「90年代ハードコアの進化系として"有り得たかもしれないもう一つの可能性"を突き詰めていく彼らのハードコアは、全てが軽薄化していく現代にとってあまりにも重い。」が結構気に入っているんだけど、langが"日本独自のScreamoの更新"だとしたら、blue sketch.のほうは"かつて欧州が持っていたが捨て去ってしまった可能性のその先"って感じだと思う。重苦しいほどの思考の痕跡、というのが彼らの歌詞にも音にも表れていて、それはインスタントな現代のSNSとの相性は悪いように思えていたのに、蓋をあけてみたらすぐにソールドしてしまいました。



No.2 Complete Discography / Daitro (BOX: 3xCD+BOOKLET,Ltd300)
Daitroをリリースだせたのはよかった。STATEMENTのテキストがすべてです。たくさん売れました。

RaeinやAmpere、Funeral Diner、日本でいうならkillie、heaven in her arms。2000年代のDIYパンクシーンの隅で息づいていたネットワーク、コミュニティ。2000年代のあの当時、僕は彼らに魅せられ、彼らの音楽に夢中になっていた。あの時代は一体なんだったのだろう。あの当時の熱量は。この気持ちはただのノスタルジーなのだろうか。僕は過ぎ去った2000年代という時代を、空白の時代のようにも感じていたことがある。歴史にしっかり記録されている1990年代に比べ、紙媒体が衰退しメディアも消えていった2000年代とは、紙媒体にも、そしてインターネット上にも記録が乏しい、誰かが語らなければなかったことになってしまいそうに感じていた。このままゆっくりと記憶から消えていってしまうのだろうかと。だが、時が巡りアナログのレコードがムーブメントとして復活し、そして全く予想だにしていなかったことだが、2010年代の終わり頃から2000年代の激情の名盤達が次々とレコードで復活し再評価される時代へと変わっていった。Daitroもまたその渦中にある。僕はその流れをただのハイプだとは思わない。2000年代の激情バンドたちは、音楽シーンのみならず、パンクシーンの中でも決して表舞台に目立つことはなかったと感じているし、ずっと端のほうで、数々のムーブメントを横目に、それでも自分を見つめてきた人達のように思っている。実際に僕の好きなバンドたち、特別だと感じるバンド達はそうだった。「自分とは何なのか?」その答えは自分の中にしかない。正解のない数々の問いと向き合ってきた彼らの表現には、試行錯誤があり、それぞれがそれぞれの答えを持ち、そしてお互いにそれらを尊重していたようにみえる。コレクトネス、正しいということに捉われ過ぎた現代とは異なるストラグルの中で編み出された表現が、いまの時代に再評価を迎えることに僕はある意味で当然のように納得してしまうのだ。
(http://longlegslongarms.jp/3la_releases/33/daitro_complete_discography.html)

2ndプレスもしますが、これで欲しい人には行き渡るといいなと思います。



No.1 - ゆめをみたの / SWARRRM (CD)
当然といえば当然、SWARRRMの最新作が当店では上半期1位となりました〜!後々、「こわれはじめる」とこの「ゆめをみたの」って対照的だけど地続きだし、そしてこの時代のハードコアの象徴的な作品として記録されるような気がします。本人たちはただただ良い音楽を作り出す、という活動"のみ"に集中して生きていると思う。それは音楽の周りに肉付けされているハードコアの思想とかポリティクスとか、時代の流れの中にあるトレンドだったりそういうものを全て無視して、やるべきことをやるという宇宙の中に孤独に突き進み続けているロケットのような存在。もはや地上の人間にも理解されないかもしれないが、そこには理想的な何かがある。すべてがインスタントに消費される現代において、バンドという形態が生み出すフリクションは人間の最後の芸術の1つになる可能性はあります。アルバムの流れも完璧だし、最後のクライマックス、そしてそこからのもう一歩の踏み出し(踏み外し)さえも芸術的。


ということで3LAの上半期売上 BEST20でした!
補足と解説は次回のyoutube配信で行います!

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Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)

cahier / lang (12inch: Blue Ltd200/White Ltd200)
http://longlegslongarms.jp/music/products/detail.php?product_id=2206

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