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『Spotify』レビュー / 音楽業界の革命は本当か? / 変わらぬ資本家レイヤー

 正月にBOOKOFFが本をSALE(20%〜50%OFF)していていくつか買ったものがあるんですがなんとなく買ったSpotifyの本が面白かったので紹介しておきます。BOOKOFF秋葉原の品揃えやばかったです。こんな良いのかって驚き。

 内容として創業者のひとりであるダニエルエクの成り上がり物語、それは物語として非常に面白いのだがそれとは別として、この話の中でジョブスのアップルや、ジミー・アイオヴィン(や、ジェイZ、レズナーのビーツなど)との戦いの歴史。その中で、昨今のサブスク論争も含め思ったことをいくつかメモ的に上げておきます。本に書いてある内容ではなく、読んだ上で思ったことは全く別のことです。 

Spotifyの本当に凄いところは何?

 アイデアやそれを実現する技術力の改善の繰り返しなどはもちろん凄いこと。それよりも凄いのは結局この事業を絶対諦めないというアイデア/技術とは関係のないところ。つまり、潰さなかったのが凄い。
赤字垂れ流しながら、音楽業界の革命を起こしたことはある意味では事実かなと思う。アップルミュージックなどとバトルして勝った(一時的かもしれないが)のは凄い。
 これ、他の企業でも同じですが、競争が始まるとか他企業の妨害や、日本だと成功者の足を引っ張りあったりしますよね。そういうのをサバイブする能力は、テクノロジーとかじゃなくて胆力とか別の資質だと思う。例えば、ひろゆきの凄いところは2chを作ったことではなく、あれだけの批判や裁判に晒されても2chを潰さなかったこと、に尽きる。それはプログラマーの能力とは全然関係ない。

Spotifyは別にビジネスモデルが優れているわけではない

 赤字事業な上に原価率が高すぎる。事業で儲かっているわけではない。ここがアーティスト側が履き違えているところなのかとわかった。Spotifyはその過程で何度も資金調達を成功させ、株価を爆上げして成長していて、最終的には株を持っている人間が億万長者になっている。彼らは株で儲かっているのであってSpotifyの事業の売上で金持ちになったわけではない。なのでアーティストの売上を搾取している批判は必ずしも正しいわけではない。
メジャー資本のカタログを配信するためにレコード会社ごとに特別な契約を結んでいる。ということは…

音楽業界を救ったかもしれないが音楽家を救ったわけではない

 ダニエルエクは音楽業界を復活させるにはサブスクしかないと信じていて、実際その通りになった。サブスクのおかげで音楽業界は実際に息を吹き返している。ただし、これは「音楽業界」の話であって「音楽家」の話ではない。
 結局のところ資本家レイヤーのプレイヤーはずっと変わっておらず、それは世界でも日本でも同じ。SONYとかワーナーとかのメジャーレコード会社がずっと上のほうでのさばっていてその構図は変わっていない。なので、ダニエルエクの言う「音楽業界の革命」というのは嘘だと思った。変化しない資本家レイヤー。僕の考えとしては、この構造自体を破壊するものでなくては革命ではない。真に搾取しているのは変わらず資本家レイヤー。
 前段の話とつながるがメジャー資本のカタログを配信するためにレコード会社ごとに特別な契約を結んでおり、強いレコード会社に対してはより多くの報酬を支払っている。アーティストがレコード会社から受けとる報酬はレコード会社との契約の話なので、サブスクを批判するのではなくそれは個別のレーベル・レコード会社と話をするべきこと。また、サブスクのシステムは大御所がさらに強くなって、マイナーなアーティストは聴かれない、というデータが既に出ている。これはシステムのせいではなく、リスナーの動向がそうなってしまっているという、悲しい真実。

いつも結論はDIYしかない、ということになる。

もう一つのDIYとして、SpotifyのモデルだとNetflixみたいに自身のコンテンツが必要な気がする。そのひとつはポッドキャストなんだろうけど、そのうち自主レーベルとか作りそう。




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3LA -LongLegsLongArms Records-
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