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Interview: Anüstes 〜GUEVNNA、そして自身の制作におけるバックグラウンド、思想について

GUEVNNAのアートワークを担当するAnüstesは作品のコンセプトに多大に寄与しており、GUEVNNAの音楽に視覚的なイメージを創造していく。このインタビューはアルバムのもう一つの側面であるアートワークに焦点をあてたインタビューであり、Anüstesの作業過程、思考、その背景にあるものに迫るものである。

「一場面のみでは残酷なものに感じても、一連の流れ。一生をみると自然界では無駄がなく、全てに意味がありバランスを保っている。そういった事が脳内から離れず日々過ごしている」

Q: 前回の1stアルバム"Heart Of Evil"でもアートワークを担当して頂きましたが、今回もAnüstesさんだと事前に聴いていたので楽しみにしていました。前作制作時には楽曲のテーマだけは共有したけど、音は聴かせなかったとバンドから聞いていましたが、それは今回も同様ですか?

Anüstes: 楽しみにして頂き有難うございます。1stアルバムと同様に曲は聞かず、RYO君から各楽曲のタイトルと歌詞、大まかなイメージを貰い自分なりの解釈で表現しました。

Q: 今回もジャケットアートワークだけでなく、各楽曲に対応してそれぞれアートワークが描き下ろしになっているのですが、苦労したポイントはありますか?
あとVex Machineのロボットが予想外にかわいくて、これはグッズ化したいと思ってます。

Anüstes: 前回と同様に限られた時間内で結構な枚数を表現しなければいけなかった事がやはり一番の苦労でしたね。自分は一枚あたりの作成時間をあまりかけないのですが、その分の集中力を費やさなければいけないので ハイなテンションを保ちつつ続ける事はなかなか精神上くるものがあります。

 あとは今回のアルバムコンセプトと曲調を想像し、若干いつもとは違った作風で表現した事です。その代わりに得た達成感などは大きすぎです。Vex Machineロボは自分も気に入っているのでグッズ化を期待しております。良い意味で期待を裏切っていきたいと常に思っているのでそれは本当に嬉しいご感想です。

Q: 今回Anüstesさんの中で、前作の1stアルバムと本作『Buring Skyline』との間で作画するにあたって大きく変化した部分はなんでしょうか?

Anüstes: GUEVNNA側から今回のアルバムコンセプトはロック色が強く暗黒なニュアンスは後退させていると聞かされていたので、そこを強く意識し、できる限りポップ寄りと言うか見る人が感じる受け取りやすさを表現しました。点描もあまり使わず、絵のラインを強調させたりと他からの依頼で形にする時とは違う感じで。それと皆んながGUEVNNAへ抱いているであろうイメージと離れ過ぎないように気を付けました。

Q: 使っている道具について具体的に教えてください。コンピューターは一切使わないですか?

Anüstes: ほぼ全ての絵がPentel社の水性ボールペンハイブリット0.5mmです。ベタ塗りはZEBRA社の油性マジックマッキーですが、気分によってはベタ塗り部分も水性ボールペンで仕上げる場合があります。
原画として形にしたいので、着色もPCは使用しません。

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Q:そもそもGUEVNNAとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?

Anüstes: 別バンドを目的で行った企画、2013年の二万電圧での彼等のステージ姿を見て惚れました。あの時も本当に痺れたな。その4ヶ月後に前ギター担当のRAIZO君がSNS上からDMをくれて、MOMENTARY PSYCHO ARTのTシャツをいくつか購入してくれていた事を知り、これは関われる絶好の機会だなと思い何かしらの形で絵を描かせてもらいたいとラブコール返信しました。その後、イタリアのBLACK TEMPLE BELOWとGUEVNNAのスプリット音源を出すタイミングでシャツの依頼を3種させてもらいました。

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Q: Anüstesさんのプロフィールについて教えてください。

Anüstes: 北海道生まれ。2003年に東京で自主プロジェクトのMOMENTARY PSYCHO ARTを立ち上げ、国内での原画の展示個展、国内外での合同展への出品参加。手刷りプリントと手作業での着色による衣料品や額装物で表現。
また、ハードコアパンク、デスメタル、ストーナーロックなど国内外のバンドへアートワークを提供。スケートブランド、ギャラリー、アパレルブランド、変わったところでは近所の公園や野外フェスで出店したり、沖縄の民宿のオフィシャルTシャツを描いたりとか。今は東京から北海道に移住し活動しています。

 こちらの方が知っている方いますかね?2003年頃から数年アパレルブランドHEX ANTISTYLEとの幾つかのデザインリリース。2006年から今もgamy(神戸ハードコア)の音源、フライヤー、シャツなどアートワーク全て担当。スケートブランドviolent grindでの25周年コラボ。元SEPTIC DEATHのポールとONJが在籍だったLittle Miss and the No Names(US/アイダホ・パンク)絡みの絵型など。

Q:絵を志したきっかけというものはありますか?また、独学ですか?それとも師匠や体系的に絵を学ぶ機会はありましたか?

Anüstes: 絵は物心がついた頃から好きで描いていました。独学です。幼少時代の当時、悪魔、妖怪や幽霊、怪獣のTV番組特番。それらを題材にした子供向けには感じないリアルな挿絵の児童書。デビルマンや悪魔くんなどの漫画へ衝撃を受けました。それと母親がよく好んで見ていた、ホラーやスプラッター系の映画、、。今はほとんど見なくなりましたが、脳内侵食ですよね完全に。後にスケートボードカルチャーに興味が湧いてMICHAEL SEIFFやRxCxの作品を知り虜に。 中高生になり、ハードロックやパンクやヒップホップを聞き始め、借りた音源やラジオから録った曲をカセットテープへ録音し、勝手な解釈でジャケットのアートワークを描いていました。興味を示していなかった友達を洗脳目的でカセットを渡し、翌日にはラジカセやギターに絵を描いて欲しいと依頼をもらったり。スケボーのカタログや雑誌掲載の小さな絵型写真を見ながらスケートデッキにアレンジを加えて模写してみたり。魔物と音楽とスケートカルチャーに学んだと言って良いかもしれません。ただデジタル配信は勿論、ネット環境が無い時代だったので、そこは良くも悪くも自己解釈で吸収し、今の作風になりました。

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Q: ということは、もうかなり初期の段階でアートワークと音楽が結びついていたんですね。バンドのアートワーク等を手がけるようになってからの発見などはありますか?また、同じように音楽系のアートワークをしている方で、今気になっている人はいますか?

Anüstes: 正式な形で絵をはじめる前も友人のバンドへ向け絵を描いていたんですが、その時代よりも依頼主とその周りに好まれそうなニュアンスを深く考えるようになりました。好き勝手に描いていた時代とは違い、責任の重さが全く違うので当然といえば当然ですが。我ながら心構えが変わったとは感じています。自分の色とバンド側が求めている色。全て受け入れてくれる場合ばかりではないですが、その中でどうオリジナリティーを出すべきなのかの難しさはあります。しかしお互いが求めていた理想の形が一致した際の喜びは何事にも代え難いです。表現をした形を世に出すには独りの力では広まりませんからね。所詮は独り善がりに終わってしまう。バンド界隈のアートワークに限らず、人同士の思いやり、繋がりは大切ですね。特に原画展などの開催時に色々な土地や趣味の方達が来てくれて会話をする度にそう再認識させられます。

 気になっている絵描きは数年前から変わっていないんですが、長年お世話になっているギャラリー兼ショップオーナーで、TREMATODA zineの編集長、グループ展の主催者でもあるMARONASTYさん。パンクでポップな表現が楽しいです。GUEVNNAのファーストEPやマーチも手掛けているdevriちゃん。自身のブランドMINCHも運営し精力的に個展も行なっているPARANOIDさん。二人は国内外の多くのデスメタルバンドへ関わっていて、個人の色がハッキリとあり魅かれます。あとはNY在住のDIEjAでヴォーカルを担当し国内外のハードコアパンクからグランドコアバンドなどに関わっているMASATO君。大胆なタッチと表現のスケールの大きさも圧巻です。それと最近CRUNKというレイジングスラッシュ寄りのバンドでヴォーカルをやっているYUKAちゃん、自分のバンドやオリジナルブランドTOOLATEでのセルフデザインもしていて、トラッドなタトゥーデザインテーストからオールドなクロスオーバーパンク調まで上手く表現し始めているので今後の進化を楽しみにしています。

Q: Anüstesさんが絵を通して、それはGUEVNNAのアートワークというプロジェクト単位ではなく絵そのものとしての全体的なテーマみたいなものはあるのでしょうか?

Anüstes: 初期は人としての闇を表現していましたが、数年前からは輪廻転生的ニュアンスへ。今は圧倒的な刹那を感じ取れるような作品を目指し表現しています。

Q: "輪廻転生"へ興味が向いたきっかけというのはありますか?
そして今”刹那"へ向かう意味とは。

Anüstes: 今の名義で活動をはじめる前に趣味でトライバル柄や仏など、オリエンタルな題材を描いていた時期がありました。きっかけは単純にカッコ良いと思ったからです。その時期にアイヌやケルト思想、チベット仏教についての本を幾つか読み、そこで共通しているものは輪廻転生では。と肝銘を受けました。それと一番影響が大きい事は北海道の自然環境内での生活が意思に反映されています。休日は森に入ったりするんですが、そこで目にする朽ちていった屍を色々な生物達が己に取り込んでいたり、そのさらに残骸から数日後にはキノコの菌類や植物が生え花を咲かせたり。

 一場面のみでは残酷なものに感じても、一連の流れ。一生をみると自然界では無駄がなく、全てに意味がありバランスを保っている。そういった事が脳内から離れず日々過ごしているからでしょうか。初期が闇を中心に表現していたので、光を意識し表現するのも良いかとここ数年は思っていて、両極を表現する事で自分自身の精神バランスを保とうとしているのかもしれません。Anüstesという名義自体が刹那(SETSUNA)を元にした造語なので必然なんだとも思います。

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Q: 自身の作風について、社会情勢からの影響はありますか? お話を聞いていると、自然やもっと深いところの精神的なものが大きそうですが。

Anüstes: 現在も夢中であるパンクロックやグラインドコアの音とアートワーク、メッセージも込みでの影響で、政治や経済、宗教などへの不満と不安を以前は主にテーマとして描いていました。
自分の作品タイトル”UNREST”や”ignorance”、”HUMAN COLLAPSE”、”GO MAD”などがそうです。それとピカソの作風も好きなんですが、戦争の悲惨さを訴えた政治的作品ゲルニカにも影響を受けました。
非現実的作風とは真逆の強い意思を感じる社会風刺画。魅かれます。
今は自分の思想面や感情を自然界の造形美など脳内でミックスし表現する事が多くはなりました。住んでいる環境が一番大きいのかもしれません。

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Q: 自身にとってのアートとはどのようなものですか?

Anüstes: 一言でいうと、掛け替えのないもの。行き過ぎた個人への偶像視や宗教観ではなく、心を寄せるなら限りなく自由な発想へ心踊らせたいですね。
こんな状況だからこそできる限りは絵描きとしての活動を自分も続けて行こうと思っています。

正方形SNS

Anüstes:
https://momentarypsychoart-news.tumblr.com/
https://www.instagram.com/_anustes_/
https://twitter.com/ANUSTES1

Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)
>> GUEVNNA『Burning Skyline』特設URLはこちら

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