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ディスクレビュー: Neon Collage / Torsotree (CD)

かつて「インディ・ロック」と呼ばれていた音楽が、現代のような巨大な音楽産業の1部門に組み込まれる前、たしかにカウンターカルチャーとして機能していたことを思い出す

2020年、弊社ディストロを困惑させた2大バンドはtorsotreeと帯化であったと回想している。トライバルミュージックを引用しながらも現代日本に巣喰う虚無と向き合っている帯化の音源は、通称"ゴミ"と呼ばれるパッケージや、そもそも音源とは言い難い"石"というフォーマットで僕を困惑させた。そしてtorsotreeもまた、ダンボールに現代資本主義の生みだしたゴミクズなどをランダムに貼り付けた謎フォーマットに加え、つかみどころのない音の進化によって僕を困惑させている。ただ、両者のサウンドとフォーマットの間には強力なつながりがあり、それ自体が表現になっているのは確かなので、「困惑する」という気持ちは「理解できない」とイコールなのではなく、そこに何か自分が新しい場所へ踏み込むチャンスになっていると捉えよう。
そんな前置きをついつい長くしてしまいたくなるtorsotree、すでに2枚の作品をリリースしており、ここまでの活動を追ってきた方にはまた困惑させてくれる音源を完成させている。今回CDRではなくプレスCDとなり、Portia FadingとスプリットをリリースしていたBeat Castingのベーシストが参加、前作よりも圧倒的に音数が減り、シンプルなドラムのビートと、ベースのリズムがサウンドのほぼ大部分を担い、もはやサウンド、メロディ云々ではなく、収録されている全8曲はまるで1つの楽曲の断片のよう。ボーカルも単純に歌うだけのボーカルという役割は放棄している。この音はかつて「インディ・ロック」と呼ばれていた音楽が、現代のような巨大な音楽産業の1部門に組み込まれる前、たしかにカウンターカルチャーとして機能していたことを思い出す。それらが何を抗い、何を解体しようとしていたのか。そんなことを思いながらtorsotreeを聴いてたんだけど、初期作の90's UK感とはまた変わってきていて、それらはPortisheadと同軸にありそう。そして楽曲のもつ境界線がさらにボヤけている本作は、当時とはまた違った"解体"が行なわれているのかも。いや、もはや"曲"というより"演奏"、もっというと生活のBGMとして自ら入り込んでいくくらい希薄された何か。

tracklist:
1. Dark Dessin
2. Nocturnes
3. Cardiogram
4. Old Walls
5. Halcion
6. Rough Night
7. Ahuizotl
8. Quiet Place

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Text by Akihito Mizutani (3LA -LongLegsLongArms Records-)
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