髪だけは自信のある私が、31cm以上髪を切った話
私は自分に自信がありません。見た目も中身も。
もっとこんな自分だったらいいのに、という理想ばかり思い浮かぶけれど、現実はあまりにも程遠く、そのくせ大した努力もせずに生きている自分が大嫌いです。
そんな私ですが、髪の毛だけには自信を持っています。
少しだけ茶色がかっているけれど、強くて芯のある髪の毛。唯一生まれながらのままが気に入っているので、カラーもパーマもしたことがありません。
周りの人も褒めてくれますが、やっぱり嬉しいのは、はじめましての美容師さんに「髪の毛キレイですね!」と褒められること。これが私にとって揺るぎのない自信につながっています。
しかし、今年の8月に髪の毛を31cm以上切りました。2年以上伸ばし続けたロングヘアとばっさりお別れして、すっきりとしたショートヘアに。
髪の毛に自信があるなら、わざわざそんなに一気に切らなくてもよかったのではないか、と思われるかもしれません。
だけど、31cm以上であることが重要だったのです。
それでは、なぜ「31cm以上」なのか。実は、ヘアドネーションをするためでした。
髪を寄付するヘアドネーション
『ヘアドネーション』とは何か、ご存じでしょうか?
簡単に言えば、髪の毛を寄付することです。寄付した髪の毛は、主に医療用ウィッグのために使われます。規定は「31cm以上の髪の毛であること」。パーマをかけていたり、染めていたりしても大丈夫です。
私は2018年までショートヘアだったのですが、そこから少しずつ時間をかけて、ロングヘアにしました。31cm以上の髪の毛を提供するためには、結んだ位置から31cm以上でないといけなくて、しかも、極力梳かずに、同じ長さの毛束を作っていく必要があります。
髪の毛の量が多い私は、これが結構大変でした。ヘアドネーションすると決めるまで、必ず美容室で「量を減らしてください」と言っていたので、梳かないと重くて仕方がない。そして、長い髪の毛を扱うのも四苦八苦。最終的に首や肩の凝りがひどくなり、本当は秋まで伸ばしておくつもりでしたが、前倒しで切ることにしました。
うっかりビフォーアフターの写真を撮ることを忘れていましたが、充分に31cmより長い毛束を一気に切り落とされるのは、かなり爽快感がありました。物理的にも精神的にもスッキリ。今後はシャンプーなどの消費も少なくなるし、何より乾かす時間が短縮されるので、もっと楽になりそうです。
では、なぜそんなにも大変な思いをしてまで、ヘアドネーションをすることにしたのか。大きな理由はふたつあります。
医療用ウィッグの重要性を感じた2つの理由
ひとつめは、父をがんで亡くしたことです。父は、抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜けることをとても嫌がっていました。元々、髪の毛が多くて丈夫で、白髪もほとんどない、年齢よりも若く見られるような父だったので、髪の毛が抜けていくことは耐えられなかったのだと思います。母は「髪の毛と自分の身体どっちが大切と思ってるの!」と言っていましたが、やっぱり見ているこちらとしても、苦しいものがありました。
還暦を迎えた父でさえそうだったので、もし若い女性だったとしたら、もっとつらいと思うんです。自分だったら、と想像するとやはり、治療のためと言えども嫌だと思います。そのつらさを軽減するための手段として、医療用ウィッグの重要性を感じたのがひとつめの理由でした。
ふたつめは、以前NHKで放送されていた元SKE48のメンバーで現在はタレントや声優として活動している矢方美紀さんのドキュメンタリーを見たことです。同い年で同じ九州出身ということで、気になるアイドルのひとりだった矢方さんですが、アイドルを卒業した後については全く知らない状態でした。
ある日、たまたまテレビを付けた際に前述の番組が映り、矢方さんが乳がんの治療をしながら芸能活動を続けていることを知りました。最初はショックを受けましたが、これは決して他人事ではなく、誰にでも起こり得る話だと思い、そのまま番組を見ることにしました。彼女の闘病生活に密着している中で、なかなかウィッグと相性が合わず、いくつも試着している場面がありました。そこで初めて医療用ウィッグにも相性があるのだと知り、選択肢がもっと増えるべきだと考えたのが、ふたつめの理由でした。
このふたつの理由がきっかけとなり、私はヘアドネーションをすることに決めました。
さらにその後、実際にヘアドネーションをした日本テレビの岩本乃蒼アナウンサーの取材記事を読みました。そこには「31cmの髪の毛ではショート、ボブスタイルのウィッグになるが、医療用ウィッグを必要としている子どもたちの多くはロングヘアのウィッグを求めており、より長いほうがいい(要約)」といったことが書かれており、私もできればそうしたいと思うようになりました。
実際に、一番長い毛束は40cm近くまで伸ばせていたので、少しでも長めに提供できてよかったと思いました。
選択肢を増やせるならまたやりたい
最後に、私がヘアドネーションをするにあたって参考にしたサイトを紹介します。
「ヘアドネーション」と検索すれば、髪の毛の寄付を受け付けている団体のホームページがいくつか出てきますが、私は『NPO法人 JHD&C(ジャーダック)』さんに寄付しました。
団体と提携している美容室でカットしてもらう場合は、その場で髪の毛を引き取ってもらえますが、私は普段利用している美容室でカットしたので、持ち帰って自分で発送しました。
その際の手順や注意点が詳しく書かれているので、初めてでも簡単に寄付することができました。
私は今までずっと、せっかく髪の毛だけには自信があるのに、切ってしまうとゴミになるのはもったいないと思っていたので、ヘアドネーションを知ることができてよかったと思っています。
私が提供した髪の毛がどんなウィッグになって、どこに行くのかは分かりません。だけど、同じ空の下で暮らしている誰かが、私の提供した髪の毛を使って作られたウィッグを手に取り、少しでも気持ちが明るくなれていたら、それは嬉しいことだと思います。そして、ウィッグを必要としている人が、自分がなりたい髪型で相性の良いウィッグと出会えるよう、選択肢を増やせるお手伝いができるなら、私はまた髪の毛を伸ばしてヘアドネーションしたいと思います。
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