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『ちっちゃな ほわほわ かぞく』
ほわほわ かぞくが いたってさ
あったかいんだ こたつみたいに
ちっちゃいんだって だれよりも
ふかふか けがわを きていてね
ぬくぬくの きに すんでいた
谷川俊太郎さんの詩的な言葉から始まるこの絵本。
わたしの中では、この絵本こそが「絵本」だと感じられる至高の一冊です。
ほわほわとうさん、ほわほわかあさん、ほわほわこどもの3人(匹?)家族。
世間に出て仕事をし、家族を守るほわほわとうさん。
いつでもぬくぬくのきで、あたたかく迎えてくれるほわほわかあさん。
ざわざわもりを自由に駆け回るほわほわこども。
そしてそんなこどもを包み込んでくれる、自然や周りの人。
絵本には様々な愛情が描かれています。
その愛情こそが、絵本の最たる魅力でもあると思っています。
身近な人だけではなく、自然や社会、ファンタジーの世界の優しい目線は、子ども達に安心して生きていいんだと伝えてくれる気がします。
この絵本の中には、そんな愛情がたっぷりと描かれています。
家族の愛だけではない、沢山の愛に包まれてのびのびと生きるほわほわこどもの姿は、理想的な子どもの姿そのものです。
そんな愛溢れる素朴なストーリーを、谷川さんの美しい日本語と、ガースウィリアムズの魅力的な絵が彩ってくれます。
絵本に描かれる日本語や絵は「美しい」ものであるべきだとよく言われますが、その「美しさ」に定義を持たせることはなかなか難しい。
ですが、この絵本は最初から最後までちゃんと「美しい」と感じさせてくれる。
決して子どもに媚びることなく、また見下すこともせず、凛とした姿がこの絵本にはあります。
ほわほわかぞくが何者なのか、答えは描かれていません。
ざわざわもりがどこにあるのか、その答えは読者の心の中にのみあります。
目を見張るストーリー展開があるわけでもなく、派手な仕掛けは何もありません。
ですが、この想像の余白こそが、絵本の醍醐味であり、子ども達の心を飽きることなく掴んでくれるのだと思います。
絵本は何かを教え込むものではない。
安心できる愛情と、のびやかな言葉と絵に包まれて、自由に心を解き放てるもの。
この絵本は、いつ開いても、そんな優しさに包まれています。
最後のページの「おしまい」が、限りなく愛しい。
余白も余韻も絶妙なバランスで描かれている、いくつになっても側に在り続けて欲しい絵本。
わたしにとっては、永遠の不動のNo. 1絵本です。
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マーガレット・ワイズ・ブラウン 作
ガース・ウィリアムズ 絵
谷川俊太郎 訳
童話館出版 1994/04
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