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『スイミー』

普段絵本を読まない方でも、このお話は知っているという方も多いのではないのでしょうか。
教科書にも長年採用され続けているロングセラー絵本です。

からすがいよりも真っ黒な色をしたスイミーは、他の兄弟とは色が違います。
誰よりも泳ぐのが速いスイミーは、他の兄弟達が大きなまぐろに食べられてしまった時も逃げることに成功します。

ひとりぼっちになってしまったスイミー。
とても悲しく寂しい思いをしますが、1人になったことで見えてきた海の美しさがありました。

1人になったからこそ見えてくるもの。
1人になったからこそ向き合える自分自身。
大人になる過程の中で、そんな経験をすることがあると思います。
孤独を怖がるだけではなく、孤独の中にもちゃんと美しいものは存在する。だから安心して大丈夫だよ。
スイミーの見る海の世界は、そんなことを伝えてくれている気がします。

この絵本の伝えたいメッセージとして、「力を合わせたら何でもできる」というラストのシーンが言われることもあります。
教科書に採用されていることからも、何かしらの教訓を求める大人も少なくありません。

でもこの絵本の伝えたいことは、そこではないと思うのです。

孤独を見つめ、克服したスイミー。
自ら仲間を見つけることができたスイミー。
そんな仲間と、困難を克服するために自分自身でできることを考え抜いたスイミー。

スイミーは かんがえた。いろいろかんがえた。うんとかんがえた。
『スイミー』好学社

世界が広がっていく子ども達は、自分自身の小ささや、世の中の広さを知るでしょう。
そこで挫けるのではなく、自分なんてと卑下するだけでなく、自分には何ができるのかを見つめ、考えて、自分だからこそできることを見つける。

力はなくとも、どんなに小さな存在であっても、考えることはできる。
考え抜いた先に生まれた知恵は、間違いなく生きる力に繋がっていく。

そんな強さを、この絵本からは感じることができるのです。

とは言え、この絵本はこんな風に感じて欲しいと押し付けるのもまたお門違い。
レオレオニの描く美しい海の世界と、谷川俊太郎さんの力強く優しい言葉達を、ただ堪能する。
それもまた、絵本の楽しみ方のひとつだと思います。

絵本の中にはこの絵本の様に教科書に採用されているものも少なくありません。
授業で触れたことをきっかけに、是非原作の絵本にも触れてみて欲しいと思います。
言葉や絵が少し違うこともあるので、そんな違いもみつけて楽しんでみてください。

『スイミー』
レオ・レオニ 作
谷川俊太郎 訳
好学社 1969

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