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『くまのコールテンくん』
おもちゃ売り場にいるコールテンくんは、いつも迎えてくれる誰かを待っています。
でも、吊り紐のボタンが取れてしまっているコールテンくんを迎えてくれる人は、なかなか現れません。
コールテンくんは、自分に「欠けている」吊り紐のボタンを探しに、夜のデパートの冒険へ出かけます。
大人の目線で読むと、この絵本に描かれているのは「友達の大切さ」や「思いやりの心」などが浮かんできます。
ですがこの絵本の本質は、わたしはそこではないと思っています。
コールテンくんは自分の欠落に果敢に挑戦するものの、結局成長も成功もすることなく、夜の冒険は終わります。
結果だけ見たら、コールテンくんは何一つ変わっていません。
でも、そんなコールテンくんを丸ごと受け入れてくれる人が現れます。
「あたし、あなたのこと このままでも すきだけど、でも、ひもが ずりおちてくるのは、きもちわるいでしょ。」
欠落は欠落のまま。失敗は失敗のまま。
そのままのあなたが好きだと、抱きしめてくれる存在。
成長も得られたものも何もなくとも、ありのままのあなたを愛してくれる。
絵本の最後には、抱きしめられたコールテンくんの充足感がたっぷりと描かれています。
この絵本を開く度、絵本を通して子どもに何かを教えたり、成長を促すことは、ナンセンスなことだと改めて感じさせられます。
大好きな人と絵本の世界を楽しんで、最後は思いっきり満足して閉じる。
「あーよかった。楽しかった。」
それが何よりも大切なことであり、それ以上もそれ以下もきっとない。
決して成長を促す為ではなく、この「よかった。楽しかった。」に寄り添う物語が、この絵本の様な物語だと思います。
ドキドキワクワクしながらも、最後はぎゅーっと抱きしめてもらえる幸せ。
様々な気持ちと共に世界を広げていく子ども達にとって、そんな安心感こそが「よかった。楽しかった。」に繋がるはず。
コールテンくんが冒険の末無事ボタンを見つけ、完璧な姿になったコールテンくんをお迎えしてくれる人が現れる。
もしこの絵本がそんな展開だったら、ここまで子ども達に愛され続けるものにはきっとならなかったと思います。
子どもの視点で描くことの大切さを感じながら、是非読んでみて欲しいと思います。
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ドン=フリーマン 作
松岡享子 訳
偕成社 1975/05
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