本当に愛することを知った瞬間でした

「先輩。怒ることと叱ることの違いってなんですか?」と問われたことがあります。

パッと見では簡単そうな問い、しかし、教育者たちにとって、そして大人たちに取って正解が分かっていたとしても選択を間違えてしまうのがこの問いなのではないかと考えています。


こんにちワっ😊

Inad.brvgです。

寒くなって来ましたね〜。今日は先週から楽しみにしてた、「小さい頃よく遊んでいた公園の芝生に寝っ転がって本を読む午後」を過ごす日だったのに、寒くて断念しそうです。

しかもこういう日に限って愛用のマフラーが見つからず、首元めっちゃ寒、、、

さて、叱ることと怒ることの違い。なんだと思いますか?ひいてはホントに可愛いのは自分ですか?相手ですか?って言う話に落ちそうなんですけど、少しうちのNPOで実際にあったお話をしたためたので、下に転載しておきます。読んでみてください😊


私は学習スペースでボランティアをしていました。その日も大学から学習スペースに 向かうところ。気が乗らないなぁと思っていました。
というのはこの日はR君と真剣な面談をしなくてはいけない日だったからです。
R君というのはここの利用者です。中学三年生の男の子。非常に頭がいい子なんで す。勉強は嫌いだけど。学校にも行けないことが多く、夜間学校のような場所に通って いたこともありました。私は彼が一年生の時からよく知っていました。いつも4時に来て は何かしら遊んだり、話したりしていたからです。プライドが高く、褒めると大体否定か ら入る子です。素直な面もあるのですが、どちらかというとちょっと小生意気なところが ありました。「帰りはまっすぐ帰るんだよ」「嫌だ。ゲーセン寄って帰る。」と言うのが毎回 のやりとりです。
彼が小生意気なのには理由があったのです。物心ついた時からおばあちゃんの手 で育てられてきました。両親に会ったことは一度もないのです。だから、人に甘えること を知らないのでした。わざと悪ぶって、かまってほしい。と言うのが私たちスタッフの共 通認識でした。その証拠に、それはやってはいけないことだよ。と言うと、大体は憎まれ 口を叩いたり、私たちの言葉尻をつかんで揚げ足を取ってくるのですが、ちゃんと行動 は改まっているのです。R君は実は素直な可愛らしい子だったのです。
そんなR君と面談をしなくてはいけない経緯はこうです。勉強スペースには【みんな が気持ちよく使える場であるために】という幾つかのルールがあります。勉強している人 には話しかけない。自分や他人を傷つける言葉や行動はしない。という簡単なもので す。しかし、R君はたびたびこれを破っていました。帰り道に寄り道したり、私たちの知 らないところでこっそりとルールを破るようにしていたのです。非常に悪知恵が働くので 何度も言い訳や嘘を重ねて逃れていましたが、ついに「R君。次破ってしまったら、悪 いけれどしばらくここが出入禁止になるよ。」と伝えなくてはいけない状況でした。
残念ながら、その数日後、R君が他の利用者たちも巻き込んでルールを破ろうとして いることがわかりました。すぐに全員に個別で詳しい話を聞きました。R君以外の全員 が「R君に誘われた」といっていましたが、R君本人は嘘をついてしまったのです。それ は私たちにとって苦渋の決断でした。これ以上ルールを守ってもらえないと他の利用 者も危険に巻き込まれるかも知れない。だからR君を1週間出入禁止にする事を話さな くてはいけなかったのです。
「気が乗らないなぁ。」私の本心はそれだけでした。スタッフと打ち合わせをして、どん なことを話すか決めました。「まず、友達を巻き込むのが良くなかったよね。危険な目に 遭わせていたかも知れないんだよ。そして、何よりもいけないのは、嘘をつくことだよ。」

と言うことを伝えたい。しかし、難しいことにR君はまだその嘘がばれていないと思って いたのです。私たちが「嘘だよね?」と問い詰めても意味がないため、本人の口から正 直に話してくれることを祈るより他ありませんでした。
面談室に入り、私と主任のスタッフ、その向かいにはR君が座っています。 「R君。この前の話の件だけど、前から話していたとおり、これから一週間。君を出禁に しなきゃいけないんだ。」主任の言葉をまとめるとこうです。
それに対してR君は
「わかりました。1つ聞いても良いですか。一週間というのは来週の今日ですか?そ れとも来週の明日でしょうか?」と、返していたのです。 それがR君にとって大事なことだったのでしょう。しかし、その言葉を聞いたときに、私 の中で抑えていた言葉がこみ上げ、静かに、何かが動いたのを感じました。 「来週の,,,」と返答しようとした主任の言葉を遮って、私は話していました。
「それを聞いてどうするの?」 突然私から出た言葉はあまりにも静かに響き、その場の空気が一瞬で変わりました。
「いや、気になっちゃって,,,間違えて来ちゃったら良くないし,,,」 「そっか」
そう呟く私の言葉はどこか芯のこもった言葉であると同時に少し震えていました。これ から私はこの子を叱るんだ。その事実が私には少し重かったのです。
「その質問には、答えられないよ。R君。さっきから聞いていれば、本当に悪いと思って いる?申し訳ないけど、君のそれは反省している態度じゃないよね。」
「いや、反省しています。」 「本当?じゃあどうして真っ先に『ごめんなさい』が出てこなかったの?」
「あっ,,,」 「やめよ。出禁になんなくて良いよ。明日からまた普通に来れば?そんな態度だったら 出禁になったって何の意味もない。こういう言い方良くないけど、1週間お休みだから ゲーセンに行ける。ぐらいにしか思ってないんじゃないかな?馬鹿馬鹿しいよ。」 私の言葉はゆっくりと、重みを持って、R君に向かっていきます。
「正直ね。私はすごく悲しいんだ。それはね。R君がルールを破ったことじゃない。嘘を ついて、私たちを騙したことでもないよ。」

「君から反省している態度が見えないこと。それがすっごく悲しい。そうやっていい加減 な態度で悪ぶって、いつまでも成長できなくて良いの?成長してほしいから,,,R君に 良くなってほしいから、この時間を持っているんだよ。大人になろうよ。」
そうとう厳しい言葉だったと思います。R君の目は真っ赤になって、泣き出すのを必死 に堪えてました。私はあんまり怒る方じゃないので相当怖かったんじゃないかと思いま す。だけど、誰かがしっかりこれを伝えないと彼は気づけないなって思ったんですね。 親からもしっかり育ててもらえなかった。ああいう性格だから、学校でものけ者にされ、 先生も手を焼いてそこまでは忠告しなかった。だから、近くで成長を見てきた「私」がこ れを伝える必要があったんだと、今になって思います。
「私からの話は終わりだよ。」 感情的に怒鳴ったり、彼の人格を傷つけることなく、慎重に、しかし真剣に言葉を選ん だ私の「説教」は終わりました。 「R君。もう一度、なんのルールを破っちゃったか、そのとき、君はどうしたのか、教えて くれないかな?前に話してくれたと思うけど、もう一回聞かせて?」 主任が彼に正直に話す機会をくれました。 R君は、真っ赤な瞳に、涙をいっぱいためて、ゆっくり、ゆっくり、話し始めます。
「,,,ごめんなさい,,,」
「,,,ごめんなさい,,,あのときは,,,嘘をついてしまったんです。怒られるのが怖くて,,, 悪いと思っていたけど、咄嗟に,,,今日も,,,謝らなきゃって,,,思っていたのに,,,本当 に,,,本当にごめんなさい,,,」
その言葉を聞いた私も泣きそうでした。
「R君、よく言えたね。偉いぞ。」 幼い子どもを褒めるような言葉でしたが、今の彼に1番響いた言葉でした。 しばらく、彼が泣くのを黙って見守っていました。人前でちゃんと謝ったことも、人前で 涙を流したことも、生まれて初めての経験だったのでしょう。 本当に、叱って良かったと思います。 この日私は、ただ居場所を提供するだけでなく、その人のために本気でぶつかること。 それが愛することなんだと知りました。「人が、その人のために命を捨てるという、これよ りも大きな愛は誰も持っていません」という有名な言葉が少し、わかった気がします。あ の場で、自分が嫌われることを恐れていたら彼が変わる機会を奪ってしまったかも知れ ない。本当に愛するというのは、自分の保身に走らず、真剣にその人のことを思うこと なんだ。それは時に、優しいだけじゃだめなんだ。って教えられました。

R君は2020年に卒業して今は立派に高校に通っています。この前、遊びに来てくれま した。

ー前よりも素直な、素敵な笑顔を見せてくれましたよ。ー



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