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掌編小説にチャレンジです。

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思いつきで気ままに不定期で、書いてまいります。お暇な時にでもお立ち寄りください。
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恋愛成就のチケット

恋愛成就のチケット

いきつけの喫茶店に吉岡隆子が訪れるのは決まってウイークデーの昼休みである。リーズナブルなうえに食後のコーヒーまでついたその店の日替わりランチは、隆子にとってのささやかな平日の楽しみであり、午後からの仕事の活力源であるとも言えた。

空いていればいつも指定席にしている窓際の二人掛けの席は、表を行きかう人々のざわめきや、季節の移り変わりを肌で感じ取れるお気に入りの席でもあった。

彼女はその日も正午を

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恋愛成就のチケット  第二章

恋愛成就のチケット 第二章

入社5年目の自分の事を早くもお局呼ばわりをする後輩達の噂話を小耳に挟んだ時、吉岡隆子は少なからぬ動揺を隠せない自分に気づいた。

新商品の研究開発室への転属が叶ってから早二年、まだまだ大きな成果を挙げるまでの新商品を世に送り出せてはいないのだが、彼女には今の部署が水に合っていた。

それゆえ日々の研究の中で出くわす幾多の困難も、決して苦痛ではないと自ら言い切れるほど、この仕事にやりがいを感じてもい

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