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掌編小説にチャレンジです。

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思いつきで気ままに不定期で、書いてまいります。お暇な時にでもお立ち寄りください。
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2020年7月の記事一覧

怒壺

怒壺

「はい、注目、みんなこの作品何に見えますか?ご本人曰く壺をイメージして作ったとのことですが、はたしてこれでも壺って言えるのでしょうか」

 美術講師の本山が、クラス全員の前で高山正雄の作品をあからさまに非難するのは今日に始まった事ではなかった。正雄が二か月もかけて作り上げた自信作を、さも汚いものにでも触れるかのように、教壇の上の自分の顔の前でみんなに見せつけるようにひらひらさせた時には、本山に対し

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通り雨

通り雨

梅雨明け間近の夕暮れ時、山間の道を車で行くと、しばしば通り雨に遭遇することがある。一転俄かに掻き曇り、辺り一面が闇に閉ざされたかと思うとバケツをひっくり返したかのような大雨に見舞われる。そんな経験誰にも一度や二度はあるだろう。これは私が、忘れもしないある夏の日、偶然に体験した出来事である。

真っ黒な雲に向かって車を進めることを余儀なくされた私は、半分高を括っていた。この時分に降る雨はどうせ、一時

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