短い

瞳に映るときめきは
お皿ごとおいしくする魔法


何度細胞が新しくなっても
必ず浮かべることができる景色
モノに移った記憶


君がくゆらす線の滑らさと
長い指の節の曲がり方
背徳を包み込むくらい眩しい日向の中で見る
少し暖かいだけの恋


その鮮やかさは光の化身
見えない色を吸収し
目に映る色だけを跳ね返して


うすい瞼のような柔らかさ
まるで骨の形まで見える、握れば壊れそうな指
笑うとまあるくなる滲んだように色づく頬


根元が伸びたマニキュア
長さの揃わない毛先
昨夜はいつものストレッチを忘れて
それでも私を完璧にしてくれるもの
それすら愛しさに変えてくれるもの


食べたものそれこそが血肉となるように
吸い込んだ酸素が身体中の血管を巡るように
あの光る公園やひだまりのにおいや、あなたがくれるおはようが
頭の先から指先までいっぱいに満たして
やがて髪の毛になって爪になっていく


喉が震えて揺らす音に
感情も意味も音色も乗せることができる
世界のぜんぶを乗せることができる
写真はどうだろうか


柔らかそうな髪が笑うように揺れる
短い毛はそっと息を潜めるようにして
唇は割れば果汁が飛び出しそうな
それは顕微鏡で集めたパズル


ふたつにすれば大きな方をくれる君に
ひとつにした愛の大きい方をあげるわたし


その瞬間に名前をつければそれは
残るものやこれから残すものになるけれど
名前がなければそれは
残らなくても残さなくても良いもの
消えてしまうから大切にできるもの


花は器
人はその中に世界中の美しいを入れ
美しいと名前をつける

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