生活とそれ以外

「どうしよう眠たくないよ」と午前1時、慌てて就寝する前の君に言うと「無理して寝なくてもいいんじゃない」と言う
午後5時こんな時間から湯を張って「また3時間も入ってしまうかもしれない」と言うと「全然へいき」と言って私が上がるまでゲームをしている
最初に決めたのに最近あんまり家事をしないことを少しだけ指摘したら、ある午前、朝ごはんを食べる前に山積みのシンクを2秒ほど見つめた私に君は「洗うよ、今面倒くさいって思ったでしょ」と言って、私をソファに座らせてお皿を洗う
手を洗ったあと「タオルがない」と気づいた私に湯上がりの君は横から、首にかけたタオルの端を無言で差し出す

ときどき横で眠る君をただじっと見つめると、みのむしみたいに毛布でぐるぐるまきになって、顔と足先だけがはみ出していて、大きな動物みたいに思えて
睫毛が長くて髪の毛がふさふさで
においを嗅ぐと毛布の柔軟剤に混じって、君のどこを嗅いだら同じにおいを見つけられるのかわからないような他ではどこでも嗅げないようなにおいがする

ただシングルベットをふたつ繋げて、隣同士で寝ているだけなのに、どうしてこんなに丸くて温かくてふわふわの安心に包まれることができるのか

朝起きて服を着てご飯を食べて風呂に入り夜眠る、それ以外のもの
衣食住という生活そのものの周りにある、砂浜に散り散りに落ちている貝殻の欠片
本当はそういうカロリーとして生命に循環しないものが永遠に残っていくのだろうな

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