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ブレス・ユー

ついに探検隊は目的地に到着した。

こやりの下に隠された洞窟を発見したのだ。
先ほどまで巨大な岩山の頂で舞を踊っていたことが、もはや遠い過去のように感じられる。我々は長く厳しい旅の末、このこやりの下の秘境に足を踏み入れたのである。

伝説では、この洞窟の奥深くには誰もが憧れる安住の地が存在すると言われている。彼らの繁栄のためには是が非でも到達する必要があった。

洞窟の入り口は、周囲の明るい大地とは対照的に、黒く長い草に覆われ、その神秘性を際立たせていた。目の前に広がるのは二つの道。どちらがその地へと続くのか、明確な手がかりはどこにもない。

「こちらか、あちらか。どちらに進む?」隊長が悩んでいた。
一同は静かに彼の決断を待ち続けた。しばらく熟考した末、彼は右の洞窟を選んだ。しかし、その理由は熟考とは裏腹に、先ほど岩山の頂で舞を踊った際、最後の決めのポーズで右手を掲げていたから、という何とも間の抜けたものだった…。

探検隊が洞窟に足を踏み入れると、行く手を阻む密生した草をかき分けて進んだ。内部はじめじめとしており、滑りやすい岩が足元に広がっていた。暗闇の中で、洞窟の壁から水滴がポタポタと音を立てて落ちる。
その音が唯一の生命感を与える一方で、周囲に漂う生暖かい空気がどこか不穏な雰囲気を醸し出していた。探検隊は注意深く、しかし確実に前進を続けた。

探検隊が洞窟の奥へと深く進んだとき、突然轟音と振動が洞窟全体を包み込んだ。その驚愕の中、猛烈な突風が吹き荒れ、ほどなくして鉄砲水が押し寄せてきた。彼らは抵抗する間もなく、強い水流によって洞窟の入口まで押し戻された。泥と水にまみれ、息も絶え絶えに彼らは外へと排出された。

「もう一度、左の洞窟を試してみよう」と隊長が提案した。立ち上がった彼らは、今度は左の洞窟に挑戦する決意を固めた。しかし、左の洞窟でも同じ試練が待っていた。轟音と振動が始まり、突風が吹き荒れ、直後に鉄砲水が襲来した。全く同じパターンに翻弄され、彼らは再び洞窟の外に放り出された。

まるで我々の侵入を拒否するかの如く――

何度も左右の洞窟に挑戦しても、一行は毎回力強く跳ね返され、その度に隊員が一人、また一人と減っていった。
「どうしたらいいんだ…」安住の地を目の前にし、隊長は途方に暮れていた。

幾度目かの挑戦で洞窟の外に吹き飛ばされたある時、一人の隊員が新たな発見をした。「隊長、あの白い岩が並ぶ大きな穴を見ましたか?」と彼は指摘した。この新しい発見が、彼らの窮地を救う糸口となる可能性があった。隊長は希望を新たにして、隊員たちをその新しい道へと導いた。

その穴は洞窟よりも大きく湿気が強かったが、行く手を阻むような黒く長い草はなく、進むには遥かに容易だった。この新たな道を進んだ探検隊は、ついに憧れの安住の地を発見することに成功した。

その後、探検隊は安住の地に根を下ろし、急速に人数を増やして繁栄を遂げた。

ある日、一人の隊員が言った。「最近、ここがどんどん暑くなっている気がするんですが…」

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