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[Nights at NAHA Town]そして打ち込み、てぃんさぐぬ花

最初の作品である"Night Beat"は、Appleの無料音楽制作ソフトであるGarageBandのループに合わせて僕がトランペットで吹いた曲だが、出来上がりを聴いてみると、パッと作った割には(手前味噌だけれど)ちゃんとしていて完成度は高いように感じた。GarageBandとトランペットによるこの制作スタイルは僕に合っているように思った。

一方、このスタイルはそもそもGarageBandを引っ張り出してきた理由である灼熱の音楽室で汗だくになりながらトランペットを吹くことを夏の間は避けたい、という点においては解決していないのも確かだ。音楽室の温度計を見ると夜中でも30度を切ることはなく、暑い日は音楽室に篭らずに音楽を楽しみたい。そうなるとトランペットで吹き込むことなく、GarageBandだけで制作するのが手っ取り早い。いわゆる打ち込みという制作方法だ。

何か打ち込んでみようと思った時、ふと前作Night Beatで那覇の夜の街を喚起したことが頭をよぎった。僕が少年時代を過ごした沖縄、その沖縄の曲を打ち込んでみるのは面白いんじゃないか?と。

そこで「てぃんさぐぬ花」のメロディラインを、Macのキーボードを鍵盤がわりに演奏してみた。無理やりキーボードを各音階に合わせて弾くというもので、例えば、キーボードのASDFGはドレミファソに対応している。これでメロディを弾いてみた。

てぃんさぐぬ花や
爪先に染みてぃ
親ぬゆしぐとぅや
肝に染みり

「てぃんさぐぬ花」原曲

ホウセンカの花は
指先に染める
親の言うことは
心に染めなさい

「てぃんさぐぬ花」現代語訳

一般に広く知られる沖縄の歌で、僕が那覇の小学校で先生から教わった歌でもある。歌としてというだけでなく、曲のタイトルにもなっている歌詞の1番だけでなく2番以降に続く親の教えや道徳観、ひたむきな素直さ、その意味やそこから学ぶことなどの観点が強かったように思う。この時習ったことは40年近く過ぎた今でも覚えている。

さて、この「てぃんさぐぬ花」を普通にアレンジしても面白くないので、ビートを効かせたコンテンポラリーな感じにしようと思った。それでまずメロディラインを打ち込み系らしいピコピコ音にしてビートを効かせたループを背景に、人の掛け声を載せてみた。

なるほど、意図どおり、王道の演奏とは違うピコピコ感が出ている。
この演奏ではテーマが3回繰り返されるが、中盤はコーラスを効かせてメロディラインもハーモナイズな雰囲気で構成している。スペーシャスな感じとでも言おうか。

ちょっとチキチキとややクセのあるリズムを挟んで、終盤は三線ぽい雰囲気の音が天から降ってくるような音を意識した。そしてリズムの音量を上げて短くリズムセクションのソロをいれ、こだまのような音で演奏は終わる。
こうして「てぃんさぐぬ花」が完成した。

僕にとっては初めての打ち込みだけで作った曲だ。元の「てぃんさぐぬ花」の雰囲気からはずいぶん離れたところにあって、モダンな家具や調度品に囲まれたコンテンポラリーなリビングでかかっているようなイメージで仕上がったんじゃないかと思う。

沖縄の音楽を聴くと言うのではなく、そう言うことを意識せずとも日常の中で流せるような曲になってくれると嬉しい。


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