青い二人の夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

「かわいい」とは便利な言葉です。彼はいつも「かわいい」を連呼します。彼のパートナーとは違う反応を私がした時、戸惑いの目を彼に向ける時、甘えようと思って上目づかいを向ける時、彼はいつも「かわいい」とキスをくれます。

思えば、彼とはじめて会った時、変な人だと思いました。

どんなデートがしたいかをマッチングアプリの中で交換し合い、渋谷に行くことになりました。

駅前で待ち合わせをして、会えた時、彼は第一声「普通にかわいいじゃん」と言ったのです。今まで不純な目的の人ですら、そんな事を言った人はいませんでした。それは、マッチングアプリで、私が自分の頬の吹き出物が気になって、隠す為に変なスタンプを貼っていたからなのですが、彼は刺青か何かが入っていると思っていたようでした。彼はトントン拍子に話が進むので、何かワケ有りだと勘繰っていたのです。

彼の話は全て理路整然として、ロジカルなものでした。ロジカルだけど子どものような不満、ロジカルで分かりやすいけど、甘い響きの少ない言葉。

彼の中で一番甘い響きが「かわいい」でした。小説やプレイボーイが使うような色っぽい言葉は彼の口からは出てきません。

「愛してる」はきっと愛するパートナーだけが貰える言葉なのでしょう。たまに「好き」をくれるけど、「愛してる」はくれません。だから。私も彼にそれは言いません。彼に合わせて「あなたはカッコいいわね」とも言いません。

代わりにキスをねだります。「あなたと一緒にいた時間を何度も思い出したいから、印をつけて」

他のボーイフレンドに聞いたところ、そんなことは青い二人しかしないそうです。私たちは青い青い時間を中年の今叶えているのです。世の中で青い時間と言われていた時、それをサボった私の為に。彼の「かわいい」を、今では、夜も体の奥から求めています。おやすみなさい。

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