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卑屈な彼と連絡した夜
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
彼とはマッチングアプリの中で出会いました。目的が一緒で、近くに住んでいるというのです。彼のプロフィールに顔は写っていませんでした。スーツ姿のレンタルポジのような精悍な男性の写真でした。
彼は、自分のメリットを連ねます。
「イケメンって言われるよ」「スタイルいいって言われる」「身長が高い」「うまい」「検査も全て終わっているよ」「ケチじゃないよ」
まるで、今までそう言われていたかのように、ひたすらに。基本昼間にしか会えない私と時間の合う会社員の方はごく稀です。彼と会う時間の調整をしていてもそうでした。彼はとうとう「朝7時」を提示してきました。仕事に行く1時間にも満たない時間で会おうと言うのです。
私は乗り気になれませんでした。綺麗な見た目の男性は好きですが、彼の卑屈とも思われる姿勢になぜか引っかかるものがあったのです。私は、グズグズと駄々をこねました。
「でも」「だって」「また」
それでも彼は食い下がってきます。この1回がなくなれば、彼は消えてしまうとでもいう勢いでした。
朝6時。私が連絡します。
「あなたが思っている私より、本当は違うかもしれないよ」
彼は私とのマッチを解消しました。それは、目が覚めたのか、そこまでぐずる私が嫌になったのか、アプリの不具合かそれは分かりません。
朝7時。出勤の為に、約束していた駅へ向かいました。でも、平日の出勤タイムに待ち合わせをしているような人は誰もいませんでした。きっと、会わないことにしたのでしょう。彼は私の顔を知っているので、怒りのままどなられる事も頭によぎりましたが、誰も声をかけてくれることはありませんでした。
彼は消えてしまったのでしょうか?それとも、彼は今日も同じように、ずっと優しく誰かを誘っているのでしょうか?彼のあの卑屈の正体を少し見てみたかった気がします。彼を咥えればそれが見えたのでしょうか?全ては謎のまま、今夜も誰かを探しながら思い出すのです。おやすみなさい。
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