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肌より大事なものを持つ彼の夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

彼の連絡に返事をしなくなったのは、いつからでしょう?最初、彼は私がたまたま返事を忘れたと思った事でしょう。しかし、私は彼にもう会わないと決めていました。その意思表示のつもりでした。

彼とはマッチングアプリで出会いました。何人もの女性と会っている事を隠さない方で、他の女性と会った話を聞くと沢山のエピソードを話してくれました。深夜にあったあるカッコいい妙齢の女性、マグロの女性、記憶にないけど会ったはずの女性…。

その話に私は夢中になりました。会う度にもっともっととお願いしていました。彼は、プレイも色々と考える方でした。色んなおもちゃやシチュエーションを毎回持参していました。そして、没頭すると必ずこう言いました。

「俺だけの女になってよ」

彼は複数の女性と関係を持つ男性で、私も複数の男性と関係を持つ女性でした。私たちはその距離感が心地よかったのです。会う度に、会った相手の事を楽しみながら共有するその時間が好きでした。

彼のその言葉はいつもスルーしました。その言葉には何の意味もない事を知っていたからです。

彼は終わると、すぐに私から離れ、シャワーを浴びてタバコを吸いに行くのです。そんな人のその言葉には、「私もよ」と戯れに返す事も厭いたくなりました。

彼はあるビジネスに明るいというので、気まぐれにその話を振ってみました。彼は熱く語り始め、自分の成功話を沢山し始めました。正直、彼はこの話をしている方が、私と会った人の事を話すより楽しそうでした。

「次にあったら、このビジネスのはじめ方講座にしようか?」

私は首を振りました。そして、言葉をグッと飲み込みました。もう、何も話したくありませんでした。彼にとって、この時間は肌を合わせる時間より優先するべきものがあると知ったからです。彼は私と違う人だと知りました。

外に出ると、いつものように、自分の好きなところで彼は私から離れて行きます。きっといつもそうなのでしょう。彼はそれを何も疑わず、明るく離れて行きました。

彼は今夜もあのビジネスに夢中になっている事でしょう。それをしていない隙間に女性に会って、明るく今日も言うのです。「俺だけの女になってよ」誰かは本気にするかもしれません。彼だけの女になって、彼女はどんな幸せを手にするのでしょうか?おやすみなさい。


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