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夜が来る前に帰って
こんばんは。今日もお疲れさまでした。
その人とはマッチングアプリで出会いました。家が近くてお互い在宅勤務だったので、会うことになったのです。
彼の家には必要なものしか置いてありませんでした。大きなローベッド、ソファ、ローテーブル、仕事机、TVとそのボード。ただっぴろいその大きな部屋のソファに二人で座り、私たちは缶に入ったお酒を飲みました。1本開けるころに、時間を持て余した私たちは体を探ることにしました。
彼は、触られるのが好きな人でした。私は彼の体を触りました。触れて欲しいというところは全て。手と、口と、足と、私の服から出ているところ全てで、彼の体を探しました。
「エロ女」
当たり前のように、彼が言いました。それは、私の気持ちを壊すには十分な言葉でした。
全てが終わって、私たちはまたソファに戻りました。服を正して、普通の恋人のように、彼の体に触れました。彼は、もう私を見ませんでした。ずっとスマホを見ながら、何の感情もない顔でただ体を差し出していました。
夜にはまだまだ程遠い時間でした。でも、私は帰ることにしました。その空気に耐えることができなくなったからです。彼は、夕飯の外食の話をはじめました。彼の友人の店に一人で行く話です。彼が全身で「帰って」という空気を漂わせていました。
玄関のドアを開けて、私を部屋から出して、私たちはさようならをしました。私は彼のマンションのエレベーターに一人で乗って、そのまま家に帰りました。
私たちはその後一度だけ連絡を取りました。彼が私を家に呼びつけたのです。でも、その日、私の体は菌に侵されていました。彼にも病院に行くように伝えました。それで終わりました。
「終わったからすぐに帰って」なんて言わないよと彼は言いました。彼は知らなかったのでしょうか?自分がどうなるかを。言葉よりそれは辛いという事を。彼の体は、今日も誰かの手の中にあるのかもしれません。でもそれは私の手だけではない事だけは確かです。自分のために、ハンドクリームを綺麗に塗って今日は眠りにつきます。おやすみなさい。
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