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それがない夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

彼はキスが好きな人でした。部屋に入って、私にベッドを促すと、横になったまま息ができないほどのキスを何度も何度も繰り返しました。殺したいのかと思うほどに。力強い抱擁と一緒に。

彼とはマッチングアプリで出会いました。ふわふわとなんとなく、仕事の内容も近くて、気が合うような気がしたのです。

その日は一緒にドーナツを食べて、ベッドに横になりました。「牛になっちゃう」とふざけながら、ゴロゴロしていたら、キスと抱擁の嵐が来たのです。私は息ができないけど、彼は全然平気なようで、何度も何度もそれを繰り返していました。

裸になってもキスは止みません。触れられるところに、お互いにあらゆるキスを繰り返しました。その時間はずっとキスで埋められました。彼は、スキンを手にすると全てがダメになる人でした。キスだけで、彼はそれを出しました。

彼と会った時からなんとなく分かっていましたが、彼には奥さんがいました。彼は自分の口でそれを言いました。きっと奥さんとの間にはスキンは必要ないのでしょう。

「また会えるよね?」

彼は繰り返しましたが、私は笑って手を振りました。

「奥さんとお幸せに」

彼らの夜は、肌と肌がぶつかり合います。そこに彼を止めるものは必要ないのです。それでも、彼はキスをする相手か、奥さんと同じように肌だけをぶつけられる誰かを探し「またね」と囁くのでしょうか?おやすみなさい。


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