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食べ塾89:焼肉ライクがいきなりステーキと同じ道を歩んでいると危惧する点は

  今1年間で80店舗まで店舗数を増やしたと話題の焼肉ライクさんですが、長年焼肉事業の応援をしてきた飲食コンサルの私から見ると、そのビジネスモデルの良さにもかかわらず、多くの危険性を孕んでいる事業展開をされていると思うのです。なぜかを以下その考えをご披露します。
あなたの考えはいかがでしょうか?

念のためにお断りしておきますが、私はいきなりステーキさんも焼肉ライクさんも店舗での飲食体験はありません。(*行く気がない+店舗がない)
コンサルという仕事柄、体験がなくても「把握できる」「理解できている」ということが必要であり、この投稿そのものが私にとって訓練です。

■焼肉ライクさんの良い点

  20数店舗から1年間で80店舗台の出店を行い、関東圏から他の地域への広域店舗展開をし始めたという感じでとらえています。

<ライクさんの店舗コンセプト的なこと>

●1人焼肉 (*2人席もある)
●若年層をメイン
 サラリーマン、学生、そして女性層も取り込めると考えた。
●低価格焼肉
●ランチタイムに強い業態、短時間利用

1,1人~2人客層をメイン客層とした点

  焼肉業界が長期に渡り無視してきた「一人客」をメインの客層として
新しい視点でビジネスモデルを作り上げた。当然ながら2人客も含めて1人客、2人客主体という「客層のすき間」をメイン客層とした点は評価大。
これからの「個」の時代の外食の先取りともいえる点です。

,1人用焼肉ロースターの開発

  1人で利用できる小型の焼肉ロースター(ガス火でセラミック炭仕様?*未確認)の機器の開発は、いかに本気で投資しているかがうかがえます。
これがないと、業態開発の要といえるものが実現しませんから。
私の素朴なあてずっぽうな勘で考えると、数百店舗分のロースターを設置しないと開発費は回収できないのではと思います。(*それくらい本気)

3,ホールサービスを大幅に軽減して人件費の削減をした

  写真で見る限りですが、メニュー・たれ皿・給水・グラス・タッチパネルなどが完備されて人件費の削減を行うことで、FLコストを下げた分だけ
リーズナブルな価格で焼肉を提供できる仕組みを作り上げたことです。
また、店内にカメラを設置してモニターによる利用客の動きをチェックできる仕組みも備えており、ホールスタッフ1~2名の稼働でできるようにしていると把握しています。これもこれからの飲食店が学ぶべき点です。

ホールスタッフは、AIが知らせてくれる来店客を客席にご案内し、インカムで料理の上りを知り、客席に提供し、バッシングを行うことと思います。
確か?レジもセルフレジを導入していたかと思います。

  平均客単価が一般の焼肉店の1/3程度なので人件費を多く使えないし、これから先、多くの人を集めることが難しくなる時代を考慮したビジネスモデル開発であると理解しています。
ランチの1人の食事時間が30分以内という点で考えれば、平均客単価が半分以下でも、1席1時間当たりの売上高は、開業当初に比べて1,000円台のメニュの出現で、ほぼ一般焼肉店と変わらなくなってきていると思います。

4,焼肉店が弱いランチタイムを強化した業態

  焼肉店のランチ売上高は、平均日商の15%~20%位しかありません。
要するに、商品価格が高めであるためにランチの売上に弱いのです。

そこを999円以下の価格で多くの人を集客できていることは素晴らしいと
思います。ランチ売上高が40%~50%行けば画期的な焼肉業態といえます。

しかし、
今後100店舗、200店舗、300店舗と増えるにつれて”東京で生まれたビジネスモデル”の齟齬の問題が起こると予測しています。

同じように高い話題性(ある程度マスコミに仕掛けた)を基に、全国展開や海外展開を行った”いきなりステーキさん”と同じ運命を辿るのではないかという懸念を強く抱いていますので、この投稿となりました。

そのいくつかの理由を個別にご説明します。


■危惧する点1:東京モデルすぎてローカルとの
 差異を考慮していないのでは?と思えること

 東京で話題になり全国に直営やFC展開する方向も考えられる焼肉ライクさんですが、
「東京都内基準」で作り上げた最新のコンセプトほど、ローカルでは違和感が出てつまずいてしまうことを危惧してしまいます。

多くの企業や政党までもが見誤るのは、意思決定は東京で行っても、
全国展開をする過程では、東京と地方の差異をどう埋めてゆくかを当初に
予測しておかなければなりません。

  元もと多くの地方で焼肉が隆盛となったのは、豪華で高いビーフステーキがなかなか食べられない庶民にとって、細かくカットされた赤身やホルモンなどの安価な焼肉だったら自分でも手の届く贅沢ということで、30年前~40年前から人気を博してきた業態です。

●大豆ミートの焼肉を出した・・・まだ未完成の食材 先進的を狙い?
●豚肉の焼肉を出した・・・・・・若者の男性用?牛肉が本命と思う!
●安さを売り物にした・・・・・・素材も量も無理しすぎ?
●話題性を最大重視・・・・・・・今どきは大切 でも先例はどうなったか

SNS販促で話題性を強化しすぎだと思う1例
●キャンペーンで290円で販売したようです。

■危惧する点2:食肉と食材の高騰が大誤算に
 なった~新たな食材&メニュー開発の必要性

   多くの焼肉業態との差別化をするために「おてがる短時間焼肉」を作り上げた焼肉ライクさんですが、食材原価率30%台前半を狙っていると思える食材と価格設定で、当初は1000円未満の価格帯をメインにアピールしておりましたが、最近は上記のメニューのように1,000円台のメニューをリトマス試験紙のようにいろいろ試してきているように思います。

私も過去に数百店舗のチェーン店の仕事を一時期しましたが、食材ひとつが年間必要とする量が、何10トン、何百トンになりますから、食材の確保と価格の安定がなければ、どんな食材もメニュー化できないのです。
それを知っていますから、
ハード面で良さを実現できたライクさんは、今改めて「売れる儲かるメニュー開発」に苦慮されていると思います。

●客単価の引上げが課題?
●リピート客の比率が定まらないまま、新規客で売上が伸びている?

 

■危惧する点3:ローカルの焼肉はやはり
「牛肉」がごちそう~差別化が可能か?

  関東圏は豚肉が主体の商圏ですが、それ以外の地域は牛肉が主体です。
私の住む九州においても牛肉の商圏であり、そして鶏肉の強い商圏です。
『焼肉=牛肉』なのです!

  好みがあったり、食事予算を抑えたいときには、豚肉や鶏肉を焼肉時にオーダーしたりもしますが、基本的にはカルビや塩タンやマクミなど
ごちそう感のある牛肉部位のオーダーと思います。

ローカルにある多くの個人焼肉店は1店舗づつでは大した力はありませんが、地域の焼肉人口のハートをしっかりつかんでいると思います。
ローカルにおいては、豚鶏の焼肉部位のオーダーは「10%」もないのではないかと思います。

  鹿児島牛のかみちく牧場さんのメニューを見ても、焼肉キングさんの模倣と思える追い方をしていますので、まだ独自路線が築けていないと見たほうが良いと思います。
ライクさんが前項展開を成功させるためには、生産・流通・販売(ライク)の仕組みを作る以外には牛肉メインの方法はないと思います。
日本でも食材高騰はもっと続きますし、円安では海外のものも厳しいと思います。
かといって、牛豚鶏以外のものがメインの焼肉で全国制覇できるということは決してないと思います。

●今後のメニュー作りの方向と価格設定に注目したい


■危惧する点4:出店する商圏の条件が限られる

  いきなりステーキさんでも、
〇持続経営できる商圏
〇当初は良くても数回リピートして客数が減少して撤退する商圏
〇出店できない、してはいけない商圏
があったように思います。

焼肉ライクさんでも全く同じことがいえると思います。
私の考える出店できる商圏の条件は、

●人口50万人以上  →10万人~40万人では減少する可能性がある
●飲食文化度が高い →シティホテルの数が多いほど高いといわれています
           *食事の価格が高くても売れるエリア
●若者が多い    →肉をがっつり食べたい男性・女性が多い

当初の計画では海外も含めて300店舗という構想と記憶していますが、
これほど食材の高騰の連打と物流の遅延などがあれば、
国内市場をしっかり固めることが先決かと思います。

また、恐らく焼肉の店内加工でなく、CK加工をされていますから、
配送コストや配送エリアの問題も浮上してくると思います。

是非成功していただきたいライクさんですが、強さを持つためには
今ひとつ試練の関門があると思います。

多くの飲食縁様も同様なことに悩まれているかもしれません。
どこかの投稿内容が参考になれば幸いです。
(了)




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