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飲食店未来学40:売価原則を逸脱するしかない焼肉きんぐは5年以内に倒壊する~その理由とは

 全国で270店舗を有する焼肉きんぐさんは、まさに「焼肉食べ放題業態の帝王」です。一位の牛角の真下の業績です。

 なぜ5年以内に焼肉きんぐのビジネスモデルが倒壊するのか?
それは以下の理由によるものと考えています。
食べ放題は「お得感のある価格帯を維持できなくなったら、衰退消滅する」ということを知っておいてください。(今は熟成期、今後衰退し始める)

🍓1:業種が高額食材の牛肉を売る焼肉
   だから

 焼肉業種は、「客単価が高く」、「ステーキよりも気軽な肉業態」です。だからこそ、定額で食べ放題ができるきんぐさんがここ10年ほどで急速に
伸びてきました。

 かっての成長段階の食べ放題の価格は3コース。
2,480円(税別)、2,980円(税別)、3,480円(税別)です。

この絶妙な価格感と価格バランスが多くの人を魅了する魅力でした。
この上を設定するならば、
2,980円(税別)、3,480円(税別)、3,980円(税別)に、飲み放題税込1,580円だと判断しています。

この範囲で商品を開発し、必要であれば、サイゼリアさんのように、1回の加熱で出せる原価の低い料理を持つべきだと思います。

 焼肉業種であって、焼肉レストランをめざす方が良いと考えました。

現状は、本堂の焼肉にこだわり、(判断が間違っているとは思わないが価格戦略がだんだんまずくなっていることが心配)、使用する牛肉も輸入牛が中心にならざるを得ず、使用できても、輸入牛と同レベルに感じる国産の乳牛の安い部位を使っています。
(通常店で使う1kg価格の牛肉の半額仕入肉でないと、食べ放題店では
使えません)
しかも、
今年も来年もこの仕入価格が高い牛肉食材を使う限り、
価格は上がり続けます


成長時代のコース間の価格差は「500円」。原価率が36%と見た時に、
コースがワンランク上がれば、食材原価が180円加算して使うことが
できていました。

現状は、
3,180円コース(税別)
  ↑
 価格差は500円➡800円に拡大(コストアップの影響、原価率の抑制)
  ↓
3,980円コース(税別)
4,780円コース(同条件で推定した設定価格)は実行していません。
 (*コース単品で4,000円を超えたくないという判断をしている)
  

🍓2:業態が「食べ放題」だから

 私が焼肉店の食べ放題を契約店で調べた時のデータは、
・男性の焼肉食べ放題1人平均値/550g~600g(20代がピーク)
・女性・高齢者   〃    /400g
・食べ放題全体の1人当たりの平均値 /450g 
 でした。
 ある程度のオーダー比率データがあれば、一定のメニューリストで、
現行メニューの食べ放題原価と原価率が出せます。

 食べ放題業態に関わらず、回転寿しのスシローさんでも、
全店舗の単品メニューを365日充足させる食材量を確保することは至難の技です。
 買いたい商品は、物量の絶対数が必要です。しかも、買いたくない高額
食材でも必要数を揃えるために買わざるを得ません。
食べ放題で「品切れ」=オーダーストップは致命傷になるためです。

🍓3:コストの高騰で、成長期の価格設定
 が、もはや壊れているから

  下の図をご覧ください。
先ほども説明しましたが、急成長時にあった絶妙な3コース価格は、
今は2コースになっています。
 そして、2,780円という魅力の乏しい価格づくりのための、来店客のためではない売価を作るために、メニュー数を制限した58品コースを生み出しました。
(*かっての2,480円コースよりも半数近くの少ない商品数)


🍓4:コース売価3,990円以下を維持するため
 コースの満足度を下げ、自ら魅力破壊する
 しかないから

  これはきんぐさんのビジネスモデルが食材コストの高騰が繰り返されて、成長時のコース価格設定バランスが破壊されてきたからです。

 このプレミアムコースの3,980円(税別)は、
今年か来年に4,000円台のコースに価格アップするのでしょうか?
それとも廃版にして、新たに品数の少ない任意のコースに切り替える
野でしょうか?
 いずれにしても、お得感のある価格の上限価格になっており、コスト
アップのプレッシャーがどんどん迫ってくる見通しです。

 回転寿し業態が今苦しんでいるように、この業態もきしみだしています。
飲み放題をコースに加えてもらうことで、生きのびている側面も持っています。

🍓5:苦し紛れで豚鶏メニューを多く出して
   いる

 焼肉ライクさんもそうですが、広く集客できる「とっておきの食肉」は
ないのです。
マトンでもダメですし、カンガルーや兎、ワニ、鯨を出すわけにはゆかないでしょう。
(業種や業態が成り立たなくなる食材の値上がりが背景にあります)
(もうひとつは日本の売価が欧米より50%低いため、店側が大幅値上げを
 避けるしかないためです)

 牛肉メニューを増やすことができずに、豚の焼肉メニューや鶏の焼肉
メニューが増えれば増えるほど、牛肉にかえってオーダーが集中します

 

🍓6,原価率の高いメニューや手間のかかるメニューには、おすすめのきんぐマーク
をつけられない苦しさがある

 注意深くメニューを見てみると、魅力的なメニューで、原価もかかり手間もかかるメニューには「おすすめマーク」がつけられない。
つけたくても、自分の首が絞まることはしたくないからだ。

 創業以来の成功業態だけに、経営側のメリットを貫く意志は強い。

🍓7:食べ放題58品コース+飲み放題で
 合計4,587円(税込)もかかる

 恐らく今後は、コース内の商品数を調整しながら、2000円台1コース、
3000円台2コースは残すと思われます。

 しかし、食材の入手困難、数量困難は価格の上昇につながり、やがては、業態破壊に向かうと見ています。
やや、成長するビジネスモデルのコンセプトから外れてきている感あり。

食べ放題で通用する限られた価格条件の中で、どこまで魅力的な商品を提供できるかが今後の課題です。

みなさんはどう思いますか?
食べ放題業態は、今後1年1年を生き残りをかけて戦うことになります。

私の真意は、きんぐさんは胸を張って最上コース4,500円レベルを
堂々と出していただきたいと思っています。
また、その価格を妥当だと感じさせる商品力を発揮して欲しいと思います。

価格を抑えるために、コースの商品内容をみすぼらしくすることは、
未来の伸びる力を削ぐ行為です。

(了)

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